恐喝
恐喝
先ほどまでの喧騒が嘘のように、ひっそりと静まり返ったホテルの廊下に、鳳は内海と共に川田にそこにいた。他の誰も通ることもない、完全に人目を憚る場所で、川田は二人に向かい合うようにもたれている。
「鳳、内海、こんなことを頼めるのはお前たちしかいないと思っている」
タイムカプセルの発表の後、川田が何か無理をしていると見抜いた鳳は、何か隠しているのではないかと詰め寄ったのだった。以外にも彼はあっさりと承諾し、二人の側にいた内海も一緒に相談をしたいと連れ出されたのだった。
「お前たちには、はっきり言って関係ない話なんだけどな。俺が親父と一緒に紅梅山へ、よく行ってたのは知っているだろう? それは親父自身がその山の管理人で、親父の経営する会社が市から直々に依頼されて管理をしていたらしいんだ。んで、そんなわけで俺も一緒に山へと入って行くことが多かったわけ。中学を卒業と同時に作ったタイムカプセルは俺の親父があずかって、紅梅山に埋めたのだけども。それと同時に俺は親父の会社に入って、林業をずっとやっていた。って訳」
「弘樹、林業やってたのか……」
初めて聞く川田の中学卒業後の話に、進学したと思っていた鳳は驚きを隠せないでいた。
「まぁ、確かにあの時は進学するつもりだったけどさ。いろいろあったわけよ、いろいろね。まぁ、いいや。こっからが本題で、ちょうど今から大体一年くらい前の話。俺が山の管理を親父から正式に引き継いだんだけど、その時山の管理を担当している市の職員に会ったんだよ。そいつがなかなかあれな奴でさ。市の決定で山の権利は全て譲る、とか言っちゃう訳。だれにとかは言わなかったけど、半年後には権利を全て相手に渡すから契約は今日で終わりだ、とか言っててよ。それからだよ、親父は急に老けて寝込み。小さな会社は、市と言う取引先を失い倒産寸前。逆に俺が今日までこうしていられるのも軌跡、なのよ。本当は」
大きくため息をつき、もたれ掛ったまましゃがみ込む。曲げた両膝に腕を置き、その腕は肘から先が床に向かって垂れている。俯く川田の顔を覗き込むように、鳳はしゃがむと口を開いた。
「分かった。一緒に行こう。タイムカプセルの発掘を。当然、内海も来てもらわないとね」
「はぁ? 私もなの?」
差し出された手を川田はつかみ、立ち上がる。彼の手を引き、冒険にでも出るのかのようなテンションの鳳に、内海は呆れたように追いかける。
そんな三人の様子を角から見ている者が居たのだったが、彼らは気づくことが無かった。