降下
降下
先ほど鳳と川端が立っていたその場所に、今度は内海と川田が立っている。てっきりあるとしても天然にできた物しかないと思っていたために、この人の手が入った空間は衝撃的だったようだった。
「これ、どっからどうすればいいんだ? てか、重機がねえ……」
正面にある巨大な機械、と言っても鳳らを乗せ下がっているエレベータなのだが、それへと近づく。ぽっかりと巨大な長方形の穴が開いており、それを覆うような骨組みは遥か下まで続いている。
「川田君、こっちに階段があるよ」
エレベータのすぐ右隣に、接するように螺旋階段が下へと伸びている。エレベータに接している所に遮る物は無く、エレベータから階段へといつでも移れるようになっていた。
「こ、この高さをかぁ……」
誰が見ても足がすくむほどの高さを、簡素な階段を下って行こうとするのは気が引ける。とはいえ、他に下っていく方法は無いようで川田は渋々、その階段を下り始めた。
片手は手すりを優しく握り、足を滑らすように下っていく。ほんの二、三十メートルほど下ったとき、内海は自分たちが下っている階段とは別の階段の存在に気が付いた。それは巨大な縦穴の壁を周回し、沿うようになっており。壁を削って造られたことが分かる。どうもかなり昔に作られたらしく、所々その階段は崩れ落ち、足場としては極めて不安定であることを伺わせていた。
「川田君、いざとなったらこっちの階段を使わないといけないかもね……」
古いその階段は、今二人のいる場所が最も近く。次にもっとも近くなるのは、かなり下の方だろう。丸出しのベルトは低いうなりを上げて稼働しており、それ以外の音は何もしていない。ふと、川田は思い出したのかのように携帯を取り出した。その画面を見たとたん、川田は思わず顔をしかめていた。
「連絡しようかと思ったけど、これじゃ無理だな」
本来なら五本の棒が並んでいるはずの位置に、圏外の二文字が表示されている。いつからか、通信は完全に行われてはいないようで誰からの連絡も携帯には来ていなかった。
「私のも圏外だった。はぐれないように気を付けないとね」
「そうだな」
そう言うと二人は勢いよく階段を下りて行った。