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五芒星の狂輝  作者: 直斗
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奈落

 奈落


 時々大きく跳ねる車体に揺られて、二人と一人は山の頂上から洞窟内へと侵入する。一際大きく飛び跳ねた時、鳳も川端も別れた二人がやぶの中に隠れている事に気が付いた。一方のドライバーである草加は、隠れていた二人には気が付かなかったようで、正面だけを見ていた。

「ここからトンネルです」

 カチカチと、それなりのスピードを保ったままライトが付き、洞窟の壁を映し出す。重機が通るには若干狭さを感じるが、彼は慣れた手つきで一層スピードを上げていた。急なカーブを傷一つ付ける事なく曲がり切り、明るい空間へと躍り出る。その空間は巨大な縦穴となっており、円形の広い金属の格子上で停止した。

「到着です。ここからは徒歩でお願いします」

 彼は安全第一と書かれた黄色いヘルメットをかぶり、一度降りるよう促す。

「足元に気を付けてください。あ、高い所が苦手でしたら、足元を見ない事をお勧めしますよ」

 円形の壁沿いには大量の灯りが取り付けられており、下の方まで見る事ができる。

「うっわ、高いですね……」

「そうですね。まぁ、高いと言いますより、低い、が正解ですが」

 軽く笑いながら、しばらく周囲を見て回る。下は深いが上はすぐそこにあり、背の高い重機でもぶつからないほどの高さはある物の、比較的近くに天井が見えていた。

 下から徐々に近づいてくる機械の駆動音に、唐突に鳴り響く警告音。そして警告音と同時に黄色いパトライトが、入口の反対側で点灯していた。

「お二人とも、エレベータが来ました。車内にお戻りください」

 三人が重機の中へと戻り扉を閉めた瞬間、正面奥にあった黄色と黒のストライプのバーが左右に持ち上がる。上部に取り付けられていた赤信号は、青へと切り替わり、四角く巨大なエレベータへ進むよう促す。四隅に備え付けられた黄色いパトライトは相も変わらず回転しており、この先が何か分からないが極めて危険だということを感じさせる。草加はゆっくりと前進させ、エレベータへと重機ごと乗り込む。そして車外へと降りると、エレベータにあるコントロールパネルを操作した。

 再び周囲は警告音に包まれて、エレベータはゆっくりと下降を始める。今度は鉄板の床である物の、再び降りた二人には先ほどの格子よりも恐怖感を感じていた。

「これ、どのくらい地下までいくのです?」

 鳳は草加に尋ねる。骨組みだけで外も、下も見える簡素なエレベータからは、数えきれないほどの灯りが通り過ぎていた。

「地下523メートルまで下降します。体長不良などありましたらすぐに言ってください」

 エレベータに並行して、すぐ隣には非常用階段が接続されている。川端が見上げると、先ほどまで自分達が立っていた場所が見えなくなっている。彼女はそれほど深く潜った事に、軽く眩暈を感じていた。

「所々、壁に穴が開いていますね」

 あまりにも大きな縦穴の為、その穴がなんなのかまでは分からない。ただそれが窓のような形になっている事だけは、見て取れていた。

「ここはかつて鉱山だったようです。突然の災害などが起きないよう、ああして神に祈る場が設けられていたようですね」

 言われてから改めてみてみると確かに、窓のような形の中に供物でも置くのかのような台座が見える。先ほどから一言も発しない川端はどうした物かと見てみると、彼女は親指と人差し指とで額を抑え、ギュッと目を閉じていた。

「大丈夫か?」

 鳳は心配そうに、問いかける。そんな彼に片手を軽く振りながら、

「大丈夫、今になって高い所が苦手だったみたいね」

 と、声を震わせていた。

「もうすぐたどり着きます」

 十数分物長い間エレベータにゆられ、退屈しかけていた時。ようやく地面が見えてきた。エレベータは大きく揺れ、巨大な警報と共に停止した。バーが上がり、二人は地に足をつける。上から見た時は、深く、暗い、奈落の底のように思われていた場所に、ようやく二人は降り立ったのだった。


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