砂の城
幼き日の
お話
小さくて傾いた
いびつな形をした
砂の城
さっきまでここにいた
子供達の作った
砂の城
指でなぞる
通り過ぎた所が
サラサラと
夕日に照らされて
キラキラと
小さな雪崩の様に
落ちていく
指先に僕は
砂の感触を感じながら
フフフと
少し笑った
少し手を止め
跡を見て
また指でなぞる
とても脆弱で
とてもいびつな
砂の城
埋れたくなるような
底抜けの優しさ
後ろから僕の名前を呼ぶ
母の声
柔らかく
温かい
柔和な
僕は
包み込まれる様な
世界の夢を見る
北欧の少年が
走り回る夢を
南米の少女が
笑い転げる夢を
東洋の少女が
恋をする夢を
本当の世界は
砂の城のように
脆弱な
いびつなものなのに
母の胸の中で
僕は
子供騙しの、
温かい夢を見る