足のない人魚の話
ふたりの性別は特に決めてなかったりする
恋愛かもしれないし執着かも知れない
「足のない人魚の話<1>」
あのこを始めてみたとき、とても綺麗だとおもった。夏休みのプールの狭い水のなかで泳ぐあのこは、とても自由に泳いでいて、人魚みたいだと思った。あのこは、本当は海で泳いでみたいんだと言った、でも水のに触れられるだけでも嬉しいと言った。あのこは、笑っていた。
夏休みが開けた後、あのこは俺と同じ学校の子だったことを知った。
初めは見間違えかと思った。
けれど、そうじゃなかった。
‥……見間違えであって欲しかった。
夏休みが開けた後に再会したあのこは、太股の付け根から下が無くなってしまっていた。
「足のない人魚の話<2>」
夏休みが開ける1週間前に、酷い交通事故にあったそうだ。親は即死してしまったし、あのこは足を切断しないと助からない程だったらしい。あのこ‥……光希は車いすで生活していた。
「‥……大丈夫なの?」
「なにが?」
「だって、泳げなくな‥……」
そこまで言いかけて、その話題が不謹慎であることを思いだし、口をつぐんだ。
「‥……ごめん」
「謝らなくていいよ、第一、泳げなくても、水には触れるしね。」
眉を下げて笑いながら、光希は言った。
俺は、光希を海に連れていこうと思った。
理由はごく単純だ、光希は海にいくのが夢だから。
浮き輪でもなんでもつけて、俺が補助しながらでも泳がせてやりたいんだ。
‥……これは俺のエゴだ、今の光希には俺しかいないという独占欲という名のほの暗い下心がひっそりと佇んでいる。
でも、それでも、光希の喜ぶ顔がみたい。
「足のない人魚の話<3>」
俺は、光希をつれて海に来た。
最初は光希は遠慮していた。
「そんな、透に迷惑かけれないよ」
「いいんだよ、これは俺がしたくてすることだし、まず、光希の介護してんの俺だよ?迷惑もなにもないよ。」
「‥……じゃあ‥……」
という具合だ。
「透、海凄いね。」
「ああ、俺も久しぶりに来た。」
海は昔両親と来たきりだ。
「‥……なんか、夢みたいだよ。透、ありがとう」
光希は笑った。
「別にいいんだ、さ、海に入ろうよ。」
俺も笑った。
光希に浮き輪をつけて海に入った。
光希と俺はシュノーケルをつけていた。
「凄いね、水がすんでる」
「まあ、ここは穴場で有名だしな」
「‥……本当にすごい」
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『ジジッ‥……本日‥…急激な台風の発達で‥……ジッ‥…』
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ポツ、ポツ‥……
光希と浮き輪で少し沖から離れたときだった。
「‥……雨‥……?」
「みたいだね‥……今日は快晴だっていってたんだけどな‥…」
「‥……もう少し泳ごうよ透。」
「え、光希?でも‥……」
「きっと通り雨だと思うから大丈夫!ね?」
「‥……うん」
そのあとまもなく、雨は本降りになった。
「光希、帰ろう」
「‥……うん」
そう光希から返事をもらうと、急いで俺は沖を目指した。
沖について、光希を海から引き上げようとすると、
パシッ‥……
「光希!?」
「ん?なに?」
光希は俺の手を払うと器用に手で水をかいて、おきから離れる。
「なんで、早く上がろうよ!ほらっ!」
「‥……ごめんね、×××だよ」
「光希!?」
おきから離れていく光希を俺は必死で追いかけようとする。どんどん海が荒れていく。
「光希!光希!」
「だめだよ学生さん!!?」
すると通りかかったらしいおじさんに止められる。
「離してください!!連れがまだ海に!!」
「もう、この嵐じゃ無理だよ!!救急隊かなんかを呼ぼう!?」
その後、光希が見つかることはなかった。
光希、なんで最後に、あんなことを‥……
光希‥……いま、行くから、待って‥……
『今日未明、海岸で、足がない学生二人の死体が見つかっており‥……片方は、行方不明になっていた、桐山 光希さんと見られ、もう一人の身元を調べています。なお…足は見つかっておらず‥未だ調査を行っています。繰り返します。今日未明‥……』
『足をなくした人魚姫』
足をなくした人魚姫。
あのこは泳ぎたかった、歩きたかった。
ただそれだけなのに、人魚姫がいったい何をしたというのだろうか。
人魚姫は悲しんだ、もう泳げないのかと、歩けないのかと、あの人のそばにいれないのかと。
王子はそれでもいいといった。
あのこは三つの選択肢を与えられた。
1つ目は自ら海に沈むこと。
2つ目は王子を道連れに沈むこと
3つ目は王子の言葉に甘えて一緒に暮らすこと。
人魚姫はどれを選んだのだろうか。
それぞれどんな結末を迎えたのだろうか。
一体、どうしてそんなことになったというのか。
さてはて、それを知るのは一部の観客とあのこら自身しかいない。
HappyとBad考えてて、友人に聞いたらBadがいいと言われてBadの方を書いたもの。
ちなみに透のフルネームは杉原 透