ユタ
転移地点から一時間ほど歩いたとき
明らかに人間が整備したであろう道を発見した
「なかなか広い道だな…」
見ると道の先はどちらも、
建造物らしきものはまだ見当たらないが
大きめの馬車が3台分ほど並べるこの道は
今まで自分が生きてきた中では
大きな街の周辺でしか見られなかった
つまりこの道のどちらかを行けば
そこそこの距離に大きな街があるということだ
「どっちに行くかな~」
これは本気で悩む…
これで道を間違えれば、途中で引き返すにしても
間違えに気づくのは恐らく一時間ほど歩いてなお
遠目にも街が見えない場合だ
そこかは此処に引き返して一時間
さらに歩いて街までどれ程歩くかわからない
確実に到着は夜になり
身分証明のできない自分は
門兵に捕まるかもしれない
最悪また奴隷になることもあるだろう
そんなことは絶対避けたい
ならば道を間違えれば、離れたところで野宿
するしかないか…
道の端で考え込んでいると
右手から馬車がやって来た
「おっ!ついてるな!」
馬車がこちらまで近づいてくる
「あれは…荷を運んでいるだけか」
周りには数人の武装した人たちがいる
恐らく冒険者と呼ばれる魔物の討伐から薬草の採取
など様々な依頼をこなす者達だろう
「すみません!」
一言声をかけると
「なんだ!」
馬車と俺の間に冒険者の男が立って
対応してきた
「申し訳ありません。私は旅をしておりまして
道中草原にでると、道がわからなくってしまいまして
良ければどちらに行けば街があるか教えていただけませんか?」
男は綺麗な言葉遣いをする俺に驚き
「あ、あぁ。こちらの道をまっすぐ行けば『モンドーラ』という
街に出ます…。私たちが来た街はすぐ後ろの道を一時間ほど歩けば
『ユタ』という街に出ます」
丁寧に説明してくれた
恐らく貴族だと勘違いしたのだろう
「本当にありがとうございます」
俺は馬車からさっさと離れてユタへと続く道を歩く
余り顔を覚えられたく無いし
何より話しかけてきた男の後ろにいた
冒険者の1人のゴツい男が…
ずーっとウインクをしてきたからだ
投げキスをしようとした瞬間後ろに歩いたので
見ていない
一時間ほどで実際にユタには到着した
かなり大きい街だ
街を、高さ10メル(約十メートル)の壁が囲っている
これたてるの苦労したんだろうな…
主に奴隷が
検問を見ると1人1人武装していなかをチェックや
馬車を持つと荷台の確認
最後に身分証明を確認している
「どうするか…」
太陽も沈みかけ
そろそろ門も閉まるとあって、多くの人が並んでいる
怪しまれないように他の人の様子をみよう
「では、荷台を見せてもらう」
門番の男が馬車に近づく
そして中を確認した
「よしっ!ようこそユタへ」
そこで中へ通した
明らかに商人とかは武装チェックしないんだな
次は武装した四人組だ
「おぉ!ごくろうさん!」
四人組の1人が門番に話しかける
「あ~パウロか。どうだ今日の成果は」
門番も男のことを知っているようだ
まぁこのまちの冒険者だろうな
「バッチリよ!グレイウルフの番だってな!
そりゃあつ…」
男の話を遮るように
男の1人が
「おいおい。さっさとしてくれよ…疲れてんだ」
と苛つきながら言う
「わりぃな、てことでほれ」
冒険者は冒険者証?ガードのようなものを見せて
さっさとなかに入っていった
そして何組か過ぎたところで
旅の道具一式をもった若い男の順番となった
「申し訳ない…旅の途中で魔物の襲撃にあってな…
身分証明を無くしたのだ」
お!これは参考になるな
門番の男は
「そうか。まず武装を確認する
そのあと詰所まで来てもらおう」
と言い
簡単に体を調べると
奥に消えていった
これは上手い言い訳を考えないとな…
言い訳を考えている間に
俺の番となった
「すみません。モンドーラから来たのですが
途中で荷物持ちを名乗る男に騙されまして持ち物を
全て盗まれてしまいました…」
門番は特に怪しんだ様子はない
「そうか、それは災難だったな
武装を確認し、詰所で詳しく聞こう」
よし
上手くいったな
明らかにズボンとローブしか身に纏っていないので
軽くローブをさわられたところで確認は終わった
「では奥まで行こう」
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詰所の中の通された部屋は質素な机と椅子があるだけ
だった
「では、名前を教えてくれ」
「アランです」
わざわざ偽名を使うこもないな
「出身は?」
「パムアです」
パムアは本当に俺が生まれた土地だ
男もとくに怪しんでいないな
「荷物取りの特徴を聞こうか」
「20代ぐらいで痩せた男でした。身長は1.7メル位
だったと思います」
あらかじめ用意しておいた答をする
「災難だったな。
新しい仮身分証明は役所で作ってもらうといい
パムアの身分証明はそこでしか作れないが
仮なら住職などで発行できる」
「ありがとうございます」
「では、もういっていいぞ」
上手くいった
俺は足早に詰所から出た
「次は冒険者になって身分証明だな…」