なにもない
現実をちょっといじった作品です。
箸休め程度に読んでやってください。
失うことが、怖かった。
信じて、手にして、そして失った時の喪失感。
怖い。怖い。怖い。
一度目の失敗を引きずる私は、『欲しい』と手を伸ばすことを恐れてて、心を誤魔化し、想いを偽り、嘘で嘘を塗り潰して、外面で『私』を殺した。
悪いのは自分だ。弱くて、脆くて、自分勝手で、ひねくれていて、なのにどこか単純で、気持ち悪いくらい純粋で、吐き気がするほど偽善者ぶってて、救いようがない程歪んでて。
無知故の無邪気。無邪気故の悪意。悪意故の孤独。孤独故の歪み。そして、歪み故の……歪な、愛。
『好き』を遠ざけ、『想い』を封じて、『恋愛』を忘れた私は繰り返す。
誰かの傍に在るということ。その想いに応えるということ。
私はまた、過ちを犯した。許されざる、過ちを。
二度目の失敗は心に刻んだ。この私が、誰かの想いに応えることの罪深さが身に染みた。
「私は誰も幸せになんてできないのか」
作り物の言葉が虚しく響く。私の周りのわずかな空気だけを揺らして消える。吐息のように。跡形もなく。
誰の耳にも届かない言葉は、まるで初めからなかったかのように、残滓さえ残らず消え失せた。
読んでいただき、ありがとうございました(^ω^*