She's Story
重ねられた小さな嘘。それは心に刺さる細かいガラスの破片。
取り除くことはできても、私の心に傷は残る。あなたの心にも―――
彼女が現実を見たことなど一度もなかった。彼女はいつでも物語に生きる。
緩やかな小川の流れのように静かに語られ始め、その流れはいつしか大河となって激しを増し読み手を惹きつける。
彼女の物語は巧みだった。男女問わず読者を魅了する。
だってそれは誰もが夢見る理想の物語なのだから。夢中になって読まずにはいられない。
彼女には死の化身である闇夜を纏った悪魔が憑いていた。
孤独と悲しみと疑いと恐怖を操るその死神は彼女の命を狙っている。
でも、心配はご無用。彼女は物語のヒロイン。童話のお姫さま。
彼女を救うヒーローも騎士も必ず登場する。
王子さまによって恐ろしい怪物の魔の手から救われた彼女は愛しき人と長く甘いキスを交わす。
それが彼女の人生の夢物語。
彼女はおとぎ話に生きる。彼女の空想。彼女の夢。
僕は本を閉じて現実の世界に帰る。
読み終えてしまったストーリは僕の記憶に刻まれ、物語を評価する。
この本を再び開くことはないだろう。彼女が新しい物語をその上に書き連ねるまでは。現実という傑作が書かれるまでは。
―――私の嘘は私の弱さ。私は人生という名のゲームに卑怯な手で勝とうとしたの。
それが負けを意味していることも十分に知っていたわ。
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Who said that reality is not a tale? Can you be distinguished?
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