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第2話 赤薔薇嬢 ――美しさは罪。


──セレスティア──


美しさは罪。

一度でいいから、そんなセリフを言ってみたかった。

まさか本当に、そんな日が来るなんて。


美しい。


綺麗とか、かわいいじゃないの。美しいの。

鏡を見て、ため息をつく。


私が、私の“推し”になった。


◇ ◇ ◇


──アルノー・クラフトの手記──


お嬢様の体調が回復し、先延ばしにしていた社交界デビューが近づくある日のことでした。

鏡を見てため息をつくお嬢様に、メイドたちは口々に言いました。

直近に迫るマーガレット様主催のお茶会のことをご心配されているのだと。

もちろん、私もそう思っていたのです。

──しかし、それが大きな勘違いであることに、皆すぐ気づくことになるのです。


◇ ◇ ◇


──セレスティア──


お茶会。

お茶会──主役は、あたし。

病弱だったセレスティアが、人生の輝きを取り戻す第一歩。

そして、あたし自身が“推す側”から“推される側”に生まれ変わる時。

例え誰が来ても、堂々たるあたしでいよう。

メイドの一人が、身支度のために部屋に入ってくる。


「ねぇ、ちょっと聞いてほしいの……」


◇ ◇ ◇


──アルノー・クラフトの手記──


お茶会当日は春風が吹き、当家の庭師が手塩にかけて育てたバラが美しく咲き乱れておりました。

私も、給仕の準備をメイドたちと進めながら、お嬢様の未来に思いを馳せておりました。

──お嬢様付きのメイドが、こちらへ駆け寄ってくるまでは。


「お嬢様が……夜会用のドレスをお召しになっております!」


耳を疑うような報告に呆然としていると、

パステルカラーのバラの中を、深紅のベルベットを身にまとったお嬢様が歩いてくるのです。

陽光を吸い込んだその色は、花々よりも強く風を受け、燃えるように揺れておりました。

それは夜会用──しかも既婚者向けの、マーガレット様のドレス。

我が目を疑いました。あの深紅は、昼に許されぬ花の色。

その日から、お嬢様は社交界で「赤薔薇嬢」と呼ばれるようになったのです。

何よりも私が危惧したのは、その名を聞くたびにお嬢様が胸を張り、誇らしげに微笑まれることでした。

しかしながら、それは地獄の門が口を開けた──

ただ、それだけのことだったのです。

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