プロローグ
「そのお菓子、食べないのなら下さいなの~」
シルバーランドの王宮パーティーで公爵令嬢と取り巻きの談笑を幼児言葉が遮った。
しかし、その声を発したのは幼児ではない。
15歳の王女、シャロンである。
顔は可愛いが、幼児言葉を話し。その長い金髪を左右でまとめ。両肩まで伸している。
更に子供のように見える。
「まあ、シャロン殿下、どうぞ、こんな焼き菓子が欲しいのなら差し上げますわ」
「ありがとうなの~」
彼女らは最新のドレスの話題に夢中でテーブルの上にあるお菓子に手をつけなかった。
シャロンは、ヒラヒラのドレスに不釣り合いな袋を出し広げ。『ちょーだい』をした。
「はい、どうぞ、あら、落としてしまいましたわ。申し訳ないですわ。リーベルク公爵家の娘としてお菓子を渡すマナーを学んでいなかったので・・」
シャロンの袋に入れようとしたら、手が滑り、皿ごと床に落としてしまった。
しかし、公爵令嬢たちの口元はクスクスと口角が上がっている。
しかし、落ちた焼き菓子をシャロンは、
「大丈夫なの~3秒ルールなの~」
とシャロンは軽くホコリを払い。
拾って、袋に入れた。
「「「ヒィ」」」
と思わずリーベルク公爵令嬢と取り巻きたちは悲鳴を上げた。
侮る次元を越えている。
この欲深さは異常だ。
「まあ、食べられるのかしら・・・」
「売れるの~、王宮のパーティーで手のつけなかったお料理を扱う商会があるの~、買い取ってもらうの~」
「お、落とした物ですよ」
「ちゃんと落としたと言うから大丈夫なの~、貧民はこれでもごちそうなの~」
その時、シャロンから見たら義姉になるグレディ王女殿下が側近をつれて、この騒動を治めるべく動き出した。
「リーベル公爵令嬢ミサリア様、これは何の騒ぎですか?」
「そ、それが、シャロン殿下がお菓子を拾って・・・いますわ」
「皆様、本来、社交界とは親交を深めるためにあります。領地の話や、何気ない会話から国を良くするヒントを得るべきですわ。
ご覧なさい。シャロンは貧民のことを考えています。民は落ちたお菓子でも喜んで食べる方々もいらっしゃるそうですわ。それをシャロンは自ら教えているのですわ。私も倣いますわ」
グレディはしゃがみシャロンのお菓子拾いを手伝った。
「グレディ殿下!」
「お止め下さい。ドレスが汚れます」
「ドレスが汚れれば洗えばいいですわ」
「フフフフ、こうやって、フーフーするのですね。シャロン、食べ物を無駄にしないなんて偉いわね」
しかし、シャロンはジィとグレディを見つめて。
「その銀の髪飾り欲しいの~、ちょーだいなの~」
おねだりを始めた。
何だ。やっぱりただ欲深いだけなのか?と皆は思った。
しかし、グレディ殿下は慈愛の姫だ。このような義妹にも親切にする。
「まあ、いいわ。これは、市井の職人の物よ。我が王国産の物が欲しいなんて目が高いわ。王国は銀の産出だけではなく、職人にも力を入れるべきだと思っていますの。シャロンが身につけて宣伝して下さいませね」
「有難うなの~」
まるで、コジキではないか。
「コジキ姫・・・」
「「「プゥ~クスクスクスクス~~」」」
シャロンのいない所、いや、聞こえるように侮る声が聞こえるようになった。
最後までお読み頂き有難うございました。