積み木酒
「つみきざけ」
お酒、飲まないんですけどねえ。
満ちきるを待つまでもない
かたちを定めない月の無常を愛でながら
切り揃えられた木片を積みあげる
鎹を寄越そうとする無粋者を
五月蠅そうに払い除けつつ
いまにも音を立てて崩れそうな木片を
もう暫く堪えてくれよと積みあげる
崩れ落ちるからいいんじゃないか
積みあげた木片も
酌み重ねた盃も
崩れることを知らなくちゃ
夜明けの訪れを怨めしく思うまで
宴は終わらないだろう
また欠けるからいいんじゃないか
満ちていくばかりじゃ あの月だって
ようやく結べた円を張ち切れさせ
やがて夜空を呑みこんじまおうと
その身を肥らせ続けるとことだろうさ
崩れ落ちるからいいんじゃないか
また欠けるからいいんじゃないか
夜明けの訪れを怨めしく思うことなく
ほどほどできりあげればいい
積みあげた木片が崩れるまで
酌み重ねた盃が崩れるまで
定まらぬかたちをした 無常の月の
今宵の顔を愛でながら
もう暫く堪えてくれよと
木片を積みあげては
盃を汲み重ねる
積み木も最近、しないなあ。