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【連載版】追放聖女は隣国の魔貴族に拾われる〜聖女の私がいなくなると王国が滅びるそうですがよろしいのですか?〜  作者: ギッシー


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61.魔族大結界

 ブールドネージュ様が魔族大結界を発動すると、私たちを結ぶ線が光り輝き五芒星を描く。そこで各種族固有の魔力をヨルムンガンドに向かって一斉に放った。

 絶滅してしまった人魚族の代わりは私が務める。人魚族の血を受け継ぎ、同じ聖属性の魔力を持つ私にならできるはずだ。

 私たち五種族の魔力が繋がり鎖となってヨルムンガンドに絡まっていく。


「くそっ! 発動させてしまった……だが、以前と同じと思うなよ!」

「何っ……まだ動けるのか! だが、魔族大結界は動けば動くほど拘束が強力になる。もはや時間の問題だ」

「まだだ……まだ負けておらぬぞ! 我が全生命力をもってすれば、この程度の結界など……ぐぅぅおお」


 ヨルムンガンドは魔族大結界に捕らわれながらも拘束を解こうとするが、もがけばもがくほど苦しそうにしている。


「強大すぎる存在のお前は今まで命を賭けた事などなかっただろう? そんなお前がこの戦いに命を賭ける事ができるか?」

「ブールドネージュよ。其方はできるというのか……?」

「仲間たちを、スフレを守るためならば……私はできるぞ?」


 ブールドネージュ様の気迫を込めた言葉にヨルムンガンドが怯んだように見える。

 私を守るため……か、ありがとうブールドネージュ様。それは私が聖女だからかもしれないけど、気持ちは凄く嬉しい。


「くっ……ショコラ! ショコラは何をやっているのだ……!」


 ピンチを切り抜けようとヨルムンガンドはショコラを探す。

 私も様子が気になり周囲を見回すと、ちょうど霧から抜け出したショコラの姿を発見した。


「あら、ピンチのようねヨル。大丈夫かしら?」

「そこにいたかショコラ! 我のもとにきて力を貸すのだ!」

「本当にピンチのようね。今行くわ」


 状況を把握したショコラは素早くヨルムンガンドのもとまで飛び、顔の近くで止まる。

 私にはそれを確認したヨルムンガンドが薄く嗤ったように見えた。


「今まで良くやったショコラ。邪龍の巫女の役目を果たしてもらうぞ!」


 そう言った瞬間、ヨルムンガンドは首を伸ばし、傍にやってきたショコラを食らった。

 えっ……食べた? ショコラを? あの子、死んじゃったの……?

 嵌められた恨みはある。だけど、知り合いが目の前で殺された事に私はショック受けていた。


「不味いな。過去の戦いでは邪龍の巫女を捕食することでヨルムンガンドは大幅にパワーアップしたのだ」

「そう、昔はこれで結界を破った。そのために用意したショコラだ。使わせてもらったぞ――むっ、は……腹が……おおぉぉおおおお!!」


 邪龍の巫女を食べる事で過去の戦いではパワーアップしたらしいが、ヨルムンガンドは苦しそうに唸る。そして、徐々にヨルムンガンドの腹が裂け始めた。


「なんだっ……ヨルムンガンドが……! パワーアップどころか奴の魔力が消えていく? 一体どうなって――グハッ……!」

「えっ……ブールドネージュ様……? ブールドネージュ様ぁぁあああぁぁあああ!!」


 ヨルムンガンドの裂けた腹から突如放たれた光線が私に飛んできた。光線に反応することもできない私を庇ったブールドネージュ様が胸を貫かれ、大量の血を吐き出す。

 私の祈るような叫びも虚しく、ブールドネージュ様は糸の切れたマリオネットのように地面に沈んだ。そして、ブールドネージュが倒れた事で魔族大結界の鎖も解けた。

 私はブールドネージュ様に駆け寄り容態を見る。

 さっきの光線が胸を貫いて肺と心臓が抉られている! 呼吸もしてない……! ダメッ! 私が絶対に死なせない!

 私は残っていた聖女の霊薬をありったけ使いブールドネージュ様の治療を開始した。


「あら? スフレではなく男の方に当たったわ。ヨルの宿敵で、スフレの想い人でもあるブールドネージュ。大した事なかったわね」


 その声はヨルムンガンドの腹から聞こえる。

 声の方を見ると、ヨルムンガンドの裂けた腹から血肉に塗れたショコラが現れた。血肉を滴らせるその顔は、悪戯が成功した子供の用な無邪気な笑みを湛えていた。


「ショコラ貴様……何をした……? 我が巫女にしてやられるなど、あり得るはずがない……!」

「どうしたのヨル? そんなに焦ってらしくないわね。相手の力を吸収する。貴方が私にやった事を真似ただけよ。神の龍なんでしょう? もっと威厳を持ちなさいよ」


 焦るヨルムンガンドを嘲笑うショコラは、顔から性格の悪さが滲み出る悪役令嬢の笑みを浮かべていた。

 ショコラはさっきの戦いで急に年老いた事があると言っていた。それがヨルムンガンドの仕業だとしたら、同じように生命力を吸収したって事かもしれない。


「意趣返しという事か……だが、我も神の龍とまで呼ばれる身。ただでは終わらぬぞ!」

「いいえ、もう終わりです。貴方の力は全て貰い受けましたから」

「我が……神の龍とまで呼ばれたこの我が小娘にしてやられるとは……! よかろう。我に代わってブールドネージュを仕留めた其方に殺られるなら悪くない……」


 ショコラに襲いかかろうとするヨルムンガンドだったが、次の言葉に動きを止め、満足そうな笑みを浮かべたように見えた。


「短い間でしたが、復讐の機会をくれた貴方には感謝しているわ。さようならヨル」

「我もだ。其方のような巫女は初めてだった。見事復讐を果たすのだぞ。さらばだ……」


 そう言い残し、ヨルムンガンドの身体は灰となって消えていった。

 ショコラとヨルムンガンド。非常にいびつゆがんだ物だが、この二人の間には確かな絆があったのかもしれない。

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