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【連載版】追放聖女は隣国の魔貴族に拾われる〜聖女の私がいなくなると王国が滅びるそうですがよろしいのですか?〜  作者: ギッシー


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37.突然のキス

 天狗の里を守り切った私たちは会議室に案内された。これからの話し合いをするためだ。

 部屋の中央の大きな四角いテーブルに全員が着席して話し合いが始まった。


「それで、俺たち天狗族はお前らに協力することにしたが、具体的に何をすりゃあいいんだよ?」

「まずは戦の準備を整えてほしい。邪龍ヨルムンガンドは必ず攻めてくる」

「ふんっ、以前大天狗様から聞いたことがある。お前、昔ヨルムンガンドと戦ったことがあるらしいな? 古代鬼魔族のお前なら、奴の行動も読めるってことか」


 へー、アタゴはブールドネージュ様が古代魔族の生き残りって知ってるんだ。

 よく知ってて喧嘩売れるなぁ。アタゴはチャレンジャーだね。


「それで、その古代魔族のお前は魔族領の結界管理を任されていたはずだ。何でヨルムンガンドの手先が入り込んでやがるんだ?」


 ブールドネージュ様はアタゴの発言にピクッと顔を引きつらせる。

 えっ、ブールドネージュ様が魔族領の結界管理者? それって私がブールドネージュ様と出会った森の濃い霧の結界のことだよね? あの結界はブールドネージュ様が管理していたのか。

 確かにそれならヨルムンガンドの手先が入り込んでいるのはおかしい。アタゴの言い分もわかるわ。


「すまない。それは私の落ち度だ。恐らく我々が戦った幹部は、ヨルムンガンドが封印される前から魔族領に潜んでいた眷族が力をつけた存在だ。その闇に潜み力をつけた眷族が、ヨルムンガンド復活に合わせて動き出したのだろう」

「はんっ、古代鬼魔族様でも隠れた眷族は見つけられなかったってことか、古代魔族も大したことねぇんだな」


 自分の非を認めて謝罪するブールドネージュ様をアタゴがここぞとばかりに煽る。

 でも、それは言葉が過ぎるわ。


「アタゴ、貴方自分から協力するって言ったのに、その態度はどうなの? その発言は男を下げるわよ」

「うっ……すまねぇスフレの嬢ちゃん。ちっとばかし言い過ぎちまった」

「いいのだスフレ。これは過去の私たちの失態、甘んじて受けよう」


 ブールドネージュ様はそこまでだと言わんばかりに、アタゴに詰め寄る私の肩に手を置いて止める。私はそれに従い歩みを止めた。

 まあ、アタゴも反省しているようだし、この辺りで許してあげるわ。優しいブールドネージュ様に感謝しなさい。


「すまないスフレ。私は初代聖女に魔族領の結界を任された。これは、あの日託された約束を守れなかった私の落ち度なのだ。だが、反省するのもここまでだ。戦力を整え次第ヨルムンガンド討伐に打って出るぞ。ジェット、チマキ、アタゴの魔貴族は各種族を纏め上げてくれ」

「ああ」

「任せろ」

「しょうがねぇ。やってやるよ」


 ブールドネージュ様の言葉に各種族の魔貴族である三人が答える。口では文句を言うが、アタゴもやる気に満ちた表情をしている。

 こうして私たちは天狗魔族を仲間に加え、魔族領全種族の協力体制を整えることに成功したのだ。




 目的を達成した私たちは一度鬼魔貴族領に戻ってきた。チマキが戦の準備あるため河童の里に戻ったので、帰ってきたのは私、ブールドネージュ様、オランジェット様、シャルロットの四人だ。

 河童の里から始まり天狗の里と、最近は外出が多かったからブールドネージュ様のお屋敷も久しぶりな気がするな。


「ネージュ様、皆様お帰りなさいませ。どうやら良い結果を得られたようですね」

「ああ、これから忙しくなるぞ。ガレットにはこの屋敷を任せることが増える。よろしく頼むぞ」

「はい。お任せください」


 ブールドネージュ様の頼みに執事頭のガレットさんは朗らかに答える。主に頼られることが嬉しそうだ。


「チマキは準備のため帰ったが、ジェットは領地に帰らなくて大丈夫なのか?」

「ああ、俺はここで少しやる事があってな。それが済んだら帰るさ」

「そうか、竜族のことは竜魔貴族のお前に任せるさ。では、せっかく帰ってきたのだ。皆応接室に集まってくれ。お茶にしよう」


 ブールドネージュ様は「先に部屋に行ってくれ」と私たちと別れて自室に向かう。シャルロットも準備があると自室に入って行った。

 二人とも自分の家だから荷物とか身支度を整えたりとあるんだろうな。

 でも、その間はオランジェット様と二人きりか……あの氷のような冷たい瞳を見た後だと、ちょっと緊張しちゃうな。


 二人で応接室に入ると突然背筋に悪寒が走る。

 振り返りオランジェット様を見ると、イバラキの沢で見た背筋も凍るような冷たい瞳をしていた。


「ど……どうされたのですかオランジェット様? 

「スフレちゃん、君が悪いんだよ……」


 オランジェット様は素早く間合いを詰めると強引に私を抱き寄せる。

 くっ……凄い力、抜け出せない……!

 オランジェット様は胸の中でもがく私をさらに引き寄せ口付けした。

 それは予想もしなかった突然のキスであり、私のファーストキスだった。

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