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【連載版】追放聖女は隣国の魔貴族に拾われる〜聖女の私がいなくなると王国が滅びるそうですがよろしいのですか?〜  作者: ギッシー


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36.アルスside③

 ショコラの生み出した禍々しい瘴気を浴びた精鋭兵士数人が白骨にされて殺されてしまった。

 あの美しく優しい心を持ったショコラがなぜこんなことを……!


「何ということだ……これは伝説の邪龍の力……。では、ショコラは本当に邪龍の巫女になってしまったのか……!?」

「陛下、アルス殿下、ここは危険ですこちらへ!」


 大元帥が私と国王を守るように盾になり誘導する。

 私を逃してくれるのか? ナイスだ大元帥!


「あはははははっ!」


 ショコラは私たちに目もくれず狂ったように笑い続けている。

 邪龍に魂を売って気が触れたのか? もうあの女はダメだな。すっかり化け物になってしまった。


 何とか部屋から脱出した私たちだが、城の中には人の気配がしない。警備の兵士も、使用人の姿も見当たらなかった。

 これはどういう事だ? なぜ誰もいない?

 その疑問に答えるかのように、行く先々で白骨が散らばっていた。


「これは……ショコラの仕業なのか?」

「この城にいては危険です。脱出しましょう」

「しかし、王として民を残して逃げるわけには……!」


 大元帥の提案に国王は難色を示す。

 何を言っているのだこいつは? 早く逃げなければ死んでしまうぞ。


「陛下が倒れればそれは王国の滅亡を意味します! ここは一度引き周辺貴族を纏め上げ、邪龍に対抗する戦力を整えるべきです」

「むっ……そうだな。大元帥の言う通りだな。動揺していたようだ」

「無理もありません陛下。こんな状況は誰にも予想できませんから」


 撤退に難色を示す国王を大元帥が上手く説得する。国王と大元帥で話を進め、どうやら王都からの撤退を決めたようだ。

 そうだぞ。こんな所にいたら命がいくつあっても足りんではないか。


「よ、よし。では大元帥よ。早く脱出するぞ。案内してくれ」

「では脱出用の隠し通路を使いましょう。こちらへ!」


 大元帥はそう言うと私たちを先導する。後ろは生き残った精鋭兵士が守りを固める。

 隠し通路は玉座の間にあった。玉座を後ろから前に倒す。すると、後ろの壁がせり上がり古い作りの通路が現れた。鼻を刺すカビの臭いが、この通路が長らく使われていないことを裏付けていた。


「この通路は一部の限られた人間しか知らない隠し通路です。貴族令嬢でしかないショコラは知らぬはず」

「うむ。だが、安心はできぬ。先を急ごう」


 こうして私たちは隠し通路を抜けて王都の城壁を越えた先、王都が見渡せる丘の上に出た。

 王都の様子を見ると町全体から禍々しい瘴気が立ち上り、ショコラの力が王都全域に達していることが窺える。

 そして、瘴気の立ち上る上空に、竜に乗った一人の少女が浮かんでいた。


「あれは、もしかしてショコラなのか……?」

「そのようだな。竜に乗った少女など他におらんだろう」


 遠くからではわかりづらいが、竜に乗ったショコラがこちらを見ているように思えた。

 吐き気を催すような視線を感じるのだ。


「恐らくあの様子ではショコラ嬢は狂ってはいない。理由はわかりませんが、もしかしたら我々は見逃されたのかもしれませんな」

「うむ、そうかもしれん。して、これからどうする大元帥?」


 国王は大元帥と同意見のようだ。頷きつつ続きを促す。


「……そうですな。あの邪龍の力には王国内全貴族を纏め上げるだけでは足りないと思われます」

「私も同じ意見だ。やはり本物の聖女を連れ戻すしかないか」

「というと、スフレ嬢を?」


 思いがけない人物の名前が出てきた。

 スフレだと? なぜ今さらあいつが?

 私は話について行けず呆然としてしまう。


「その通りだ。王族に伝わる伝説では邪龍ヨルムンガンドを封印したのは初代聖女なのだ。邪龍に対抗するには聖女の力が必要になるはず。魔族領は危険な地域だが、歴代でも格段に強い力を持つスフレならば生きているはずだ」

「なんとっ! では、さっそくスフレ嬢が追放された魔族領に使者を送りましょう」


 大元帥はそう宣言し、何やら国王と兵士に耳打ちする。

 そして、国王は悲痛な顔をして沈黙し、指示を受けた大半の兵士は魔族領方面に走り、残りの数人が私の前にやってきた。


「な、何の用だお前たち? や、止めろ無礼者っ!」


 なぜか私はやってきた兵士に取り押さえられてしまった。

 い、痛いっ……。私が何をしたと言うのだ!


「何のまねだ大元帥! 早く兵を止めるのだ!」

「それはできぬ相談ですなアルス殿下。貴方は聖女を貶めた罪、ショコラによる国家転覆の共犯の罪で捕らえさせてもらう!」

「……はっ? 私が罪人? そんなのおかしいだろっ! 私はショコラの話に乗っただけだぞ!!」


 大元帥は頭の切れる男、きっと話せばわかってくれるはずだ!


「申し開きは取り調べで聞きましょう。連れていけ」

「はっ!」

「何でだ! 俺は悪くないんだぁぁあああ!」


 願いも空しく、私は兵士に拘束されながら国王たちと一緒に近隣貴族の領地に向かうことになった。

 一体どこから私の計画は狂ってしまったのだ? なぜショコラは私を裏切ってしまったのだ? なぜ国王も大元帥も私を信じてくれないのだ?

 私は悪くないはずなのに……こんなのおかしいだろぉぉおおお!!

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