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【連載版】追放聖女は隣国の魔貴族に拾われる〜聖女の私がいなくなると王国が滅びるそうですがよろしいのですか?〜  作者: ギッシー


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27.私の戦い

「吐いた唾は吞めねぇぞ嬢ちゃん。覚悟はできてんだろうな?」


 勢いよく啖呵を切った私を天狗魔貴族アタゴ・ペリーが睨み付けてくる。

 うぅぅ……怖い。あのギョロッとした瞳の目力が凄すぎて、一睨みされただけで足がガクガク震えてきたわ……!


「どうした嬢ちゃん、足が震えてるぞ。威勢がいいのは口だけでビビってんのか?」

「え……ええ、正直言うと怖くて仕方ありません。ですが、魔族全体のためにも、引くことはできないのです」


 あまりの恐ろしさに全身から冷や汗を流しながらも、私は瞳に曲げられない意思を宿し、恐怖の原因であるアタゴを見据えて言い放つ。

 すると、徐々に怖かったアタゴの表情が緩んでいく。


「ふっ……はっはっはっ! 俺の殺気を込めた視線を正面から真っすぐ受け止められちゃあ認めるしかねえ。いいぜわかった。お前らが俺の頼みを聞いてくれたら魔族大結界に協力してやる!」


 突然笑い出したアタゴから私に向けられた殺気が霧散した。

 なぜかはわかんないけど、認められたってことでいいのかな?


「それでアタゴ様、頼みというのは?」

「ああ、実はこのクラマの山に毒をばら撒く狼どもが現れやがってな。俺らは武勇に優れた天狗族だ。狼なんぞ怖かねえが、奴らは倒せば毒を撒き散らしやがる。クラマの山を穢すわけにいかねえし、少しばかり困っている」

「毒をばら撒いて倒すと毒を撒き散らす? それってもしかして……!」

「そいつぁイバラキの沢で暴れてた奴と同じじゃねえか!」


 アタゴの頼みを聞いて私が思ったことをチマキが代弁してくれた。

 そう、毒を撒き散らすといえばイバラキの沢で暴れていた魔物と同じ特徴なのよ。


「何でぇ河童のチマキじゃねえか、お前もきてたんだな」

「へへっ、久しぶりだなアタゴの旦那」


 アタゴは今までの敵対的な態度と打って変わって親し気に話し出す。


「チマキ、貴方はアタゴ様と親しかったの?」

「ああ、親しいっていうかお得意様だな。天狗の里の建物も城壁も、おいらたち河童が作ったんだぜ。ってか鬼族の里も竜族の里もそうだ。魔族領の建築は全部河童族が担当してるのさ」


 そういえばシャルロットからそんな話を聞いたことがある。

 河童族の可愛い姿を見ると忘れがちだけど、河童の技術は凄いんだったわ。


「しかし、イバラキの沢に現れたのは竜でしたが、クラマの山では狼が出るのですか?」

「ああ、イバラキの沢の話は俺にも届いている。だが、クラマの山に現れたのは竜じゃねえ。銀色の狼だ」

「銀色の狼だと?」


 銀色の狼が出ると聞いたブールドネージュ様が割って入る。

 心当たりがあるのかもしれない。


「それはヨルムンガンドの眷族だ。奴の手はこのクラマの山にも及んでいるようだな」


 ブールドネージュ様は過去の戦いを生き残った戦士だ。断言するってことは以前の戦いにも銀色の狼の魔物が出てきたんだろう。


「でもブールドネージュ様。イバラキの沢では浄化装置と聖女の力を合わせることで黒竜の毒を無効化できましたが、正面からの戦いになったらこのクラマの山は毒で汚染されてしまいます。過去の戦いではどのような対策をなさっていたのですか?」

「対策か……」


 ブールドネージュ様はそう呟くと顎に手を当て考え込み「スフレならできるかもしれんな」と話し出す。


「過去の戦いでは人魚族の英雄の力で私たちの武器に聖属性の加護が与えられていたのだ。加護を得た武器による攻撃なら毒を撒き散らす前に滅ぼすことができた。黒竜と戦った時はヨルムンガンドの眷族がいるとは思わなかったため準備できなかったが……。スフレ、人魚族の末裔である君ならばそれができるはずだ」

「わ、私がですか」


 ブールドネージュ様の話す内容に驚きを禁じ得ない。なぜならば、私が作戦の鍵になるってことだからだ。

 でも、それはブールドネージュ様が私を信頼して頼ってくれているってことだよね?

 それならば私はその期待に応えたい。


「わかりました。過去の人魚族にできたことであれば、歴代最強の魔力を持つと謳われた私にもできるはずです。皆の力を合わせて魔族領を守りましょう」


 アタゴも私たちも目的達成への道が見えたことで表情が明るくなった。

 後は私がみんなに聖属性の加護を与えることができるかどうかだ。

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