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【連載版】追放聖女は隣国の魔貴族に拾われる〜聖女の私がいなくなると王国が滅びるそうですがよろしいのですか?〜  作者: ギッシー


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25.天狗族の領地へ

 スモウ大会の翌日、私たちは天狗族の領地に向けて出発した。

 メンバーは私、ブールドネージュ様、オランジェット様、シャルロット、チマキの五人。あまり大人数で押しかけても天狗たちに警戒されるため、このメンバーで向かうことになった。


 天狗族の領地はイバラキの沢の奥に位置する標高の高い山にある。その山はクラマの山と呼ばれ、神の住む魔族領の霊峰とされているそうだ。

 そんな険しい山道を進んでいるのだが、体力お化けの他メンバーと違って、私はか弱い女の子である。道半ばで力尽き、今はブールドネージュ様におんぶされて運ばれている。どうしてこうなった!


「ううぅ……。ブールドネージュ様のお手を煩わせてしまい申し訳ございません」

「気にするな。クラマの山は魔族領が誇る霊峰だ。人間には辛いだろう」


 ブールドネージュ様の気遣いが心に沁みるわ……。

 こうして少しお荷物になりながらもクラマの山を登って行くと、度々空に黒い翼を持った人型生物が飛んでいるのを見るようになった。


「ブールドネージュ様、あの空を飛んでいるのが天狗族なのでしょうか?」

「そうだな。あれは哨戒を任されている木の葉天狗だ。領地に近づく私たちを遠巻きに警戒しているのだろう」


 なるほど、私たちはすでに発見されているってことか、噂通り警戒心が強い種族ね。


「私は天狗族についてあまり知らないのですが、どういった方たちなのですか?」

「そうか、スフレだけは詳しく知らないのだったな。天狗族は日々武の修業をして過ごす武勇に秀でた勇敢な種族だ。斥候を務める木の葉天狗に戦闘を担う烏天狗からすてんぐの二種類がいる。特に天狗魔貴族アタゴ・ペリーは古代魔族大天狗の息子であり、魔族の中でもトップクラスの実力者だ」


 天狗族について知識のない私に、ブールドネージュ様は丁寧に説明してくれる。

 天狗族は鬼族や竜族と同様に、高い戦闘力を持つ種族のようだ。


「そんな修行僧のような種族が、なぜブールドネージュ様を敵視しているのですか?」

「それは……」

「過去にネージュが天狗魔貴族アタゴ・ペリーに勝負を挑まれたことがあってな。返り討ちにしてやったら逆恨みされちまったんだよ」


 言い淀むブールドネージュ様の代わりにオランジェット様が質問に答える。

 以前私が力ずくは止めるよう言ったのを気にしてくれてるのかな? そんな気遣いを感じる。


 その後、私たちは上空の木の葉天狗に監視されながらも順調に山を登り、大きな門に閉ざされた里にたどり着いた。


「着いたぞ。ここが天狗族の里だ」

「ここが天狗の里。立派な防壁に守られていますね……」


 たどり着いた天狗族の里は高く分厚い防壁に守られており、まるで砦のような様相だった。


「奴ら外敵もいないってのに、相変わらずこんなでっけえ壁に隠れて暮らしてんのか? そんなんだから閉鎖的になっちまうんだよ」

「おいおい竜魔貴族様、防壁はかっこいいだろ?」

「ああ、あれは河童族が作ったのか、悪い悪い」


 そういえば魔族領の建築は河童族が担っているのよね。こんな大きな防壁を作るだなんて、本当に河童の技術は凄いわ。


「門が開くぞ!」


 私が巨大な防壁を見上げていると、突然大きな音を立てて大扉が開き始める。開かれた大扉の奥には天狗族が列をなし待ち構えていた。

 そして、出迎えた天狗族の中からひと際大きな黒い翼を持つ天狗が前に出る。他の天狗より身体も大きいし、私たちより一回りは年齢も上に見える。その表情は気難しさを表すように眉間に皺を寄せていた。

 貫禄があるところを見るに、この人が天狗魔貴族なのかな?


「久しぶりだなブールドネージュよ。我が天狗魔族領にぞろぞろと仲間を引き連れ何用だ? 俺と決着を付けにきたのか?」


 前に出た天狗の言葉にオランジェット様が「何が決着だ。お前はネージュに負けてんだろが」と小声で呟く。すると、それが聞こえたのか、前に出てきた天狗はピクッと顔を引きつらせた。


「あんっ? 貴様は竜魔貴族の小僧だったな。何か言ったか?」

「……小僧だと? 舐めるなよ天狗のじじい


 オランジェット様の煽りに天狗は煽りで返す。

 ちょっとオランジェット様、話し合いにきたんだから喧嘩は止めてよ。

 しかし、竜魔貴族であるオランジェット様を小僧扱いするなんて……。やっぱりこの人が天狗魔貴族アタゴ・ペリーで間違いなさそうだわ。


「落ち着けジェット、私たちは話し合いにきたんだぞ」

「とっ、すまねえネージュ。ついカッとなっちまった」


 ブールドネージュに諭されてオランジェット様も冷静になれたみたい。

 良かった。ブールドネージュ様はしっかりと話し合う意思があるようだ。


「クラマの山の天狗魔貴族アタゴ・ペリーよ。魔族領全体に関わる重要な話があってきた」

「重要な話だぁ? 聞くだけは聞いてやろう。話してみろ」


 アタゴは訝しげな表情を見せるが、ふんっと大きな鼻息を一つ吐くと話を促す。

 あっ、これは聞く気がないやつだ。多分話しても無駄だよブールドネージュ様。


「邪龍ヨルムンガンドの復活が近い。魔族大結界を発動させるために手を貸してほしい」

「邪龍ヨルムンガンドに魔族大結界だぁ? ふんっ! 断る!」


 ほらね!

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