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【連載版】追放聖女は隣国の魔貴族に拾われる〜聖女の私がいなくなると王国が滅びるそうですがよろしいのですか?〜  作者: ギッシー


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21.明かされる真実

「チマキさんたちが帰ってきたぞ!」

「うぉぉおおお! おかげでイバラキの沢が元の美しい沢に戻ったぜ! ありがとな!」


 イバラキの沢を解放した私たちが河童の里に戻ると大歓声が巻き起こった。沢の水が浄化されたことで事件の解決を知った河童たちが、凱旋を盛大に出迎えてくれたのだ。

 大歓声を受けながら河童族領主の館に戻ってきた私たちは応接室に集まった。新たな脅威、ヨルムンガンドについて話し合うためだ。


「それで、ヨルムンガンドってのは何なんだ? ネージュは何か知ってるようだったが」


 まずはオランジェット様が話を切り出す。イバラキの沢で見せたあの冷たい瞳も今はなくなっている。


「ヨルムンガンドは昔、古代魔貴族の英雄たちと私が封印した存在だ。その経緯は今も伝承に残っている」

「それは知ってるが、ネージュがその伝承に残っている鬼魔貴族だなんて初耳だぞ」

「すまない、私が伝承の鬼魔貴族なのは隠していたのだ。だが、ヨルムンガンドが復活するとなれば話は別だ」

「……そうだな。お前は英雄として生きるより、身近な存在として民と共に生きることを望むような男だもんな」


 ブールドネージュ様とオランジェット様の二人は互いに分かり合ったように笑い合う。

 この二人は昔からの友人で長い付き合いがある。人間の私では理解ないほど長い時を共に生きてきた二人にしかわからない絆があるのだろう。

 チマキは普通に驚き、シャルロットはさすがお兄様といった感じでうんうんと頷いている。

 私だってビックリだよ! まさか私が初めて出会った魔族で、今まで散々お世話になったブールドネージュ様が伝説の大魔族だったなんて……。


「では私が知る限りのヨルムンガンド対策の話をしよう。まず、奴を倒すのはまず不可能だ」

「じゃあ昔はどうやって倒したんだい?」


 ブールドネージュ様の話にチマキが質問する。


「私たちはヨルムンガンドを倒したのではない。あくまでも封印しただけだ。かつての私と古代魔貴族の英雄が力を合わせてもだ」

「古代魔貴族ってぇと、河伯や大天狗や人魚のことか? そんな英雄たちが束になっても倒せないのかよ。マジモンの化け物じゃねぇか……」

「案ずるなチマキよ。確かに私たちは奴を倒すことはできなかった。だが、封印することはできたのだ」


 なるほど、以前は倒せなかったから封印という方法を取ったのね。


「封印か、そんな強大な邪龍をどうやって封印したんだい?」

「以前の戦いではヨルムンガンドの封印には各種族、魔族の英雄五人の力を合わせた大魔法、魔族大結界を使用したのだ」


 魔族大結界、ヨルムンガンドは王国の伝承にも残っていたけど、結界で封じたなんて初めて聞いたわ。


「魔族大結界か、伝承通りだな。けど、昔は鬼族、竜族、河童族、天狗族、人魚族の五種族がいたけどよ、人魚族が絶滅した今は四種族しかいないぜ」

「人魚族ですか、伝承では美しい種族だったと聞いております。ですが人魚族がいなくなった今、魔族大結界は発動できないのではないかしら?」


 チマキとシャルロットが人魚族はもういなくなったと話す。それにブールドネージュ様は一つ頷くと、真っすぐな瞳で私を見ると口を開いた。


「確かに人魚族は滅びたが、その力を受け継ぐ存在がいる。それはスフレ、君のことだ」

「えっ!? 私ですか!!」

「うむ、正確には王国の聖女が人魚族の血を受け継いでいる。初代聖女とは人魚族の英雄なのだ」


 今明かされる衝撃の事実、私は人魚族の末裔だった。

 考えてみれば生物を癒す力は他に使える人間はいない、私たち聖女だけの力だ。それに、私が以上に泳ぎが得意だったことにも納得できる。

 人間離れしているとは思っていたけど、元々純粋な人間じゃなかったってことか。でも、


「しかし、なぜ魔族領ではなく王国に住む私たち聖女が人魚族の末裔なのですか?」

「それは魔族大結界でヨルムンガンドを封印した地が現王国が存在する地だからだ。唯一の人魚族だった当時の人魚族の英雄は人族を愛していた。ヨルムンガンドを封印した魔族大結界を維持する目的もあり、その後人族と共に暮らす道を選んだのだ」


 私が気になっていたことを聞いてみると、ブールドネージュ様は伝承の真実を話してくれた。

 聖女と王国にそんな真実が存在したなんてまったく知らなかったわ。


「つまり人魚族に関してはスフレがいるから問題ないはずだ。後は最後の一人天狗族だ。ヨルムンガンド復活に備え、天狗族と協力関係を結ばなければならん」

「だが天狗族か……奴らは同種族間の繋がりが強い分、警戒心の強い閉鎖的な種族だ。俺たちに協力してくれる可能性は低いと思うぞ」

「これは魔族領だけでなく、世界全体の危機だ。力ずくでも協力してもらうさ」

「おぉ怖っ! いにしえの古代鬼族様が言うと凄みがあるぜ」


 閉鎖的な種族の天狗族がブールドネージュ様は世界のためなら力ずくでも天狗族の協力を取り付けようとしているようだ。


「天狗族とは平和的に話し合えないような種族なのですか?」

「もちろん初めは話し合うつもりさ。だが、天狗族は閉鎖的なだけでなく、なぜか私を敵視しているのだ」


 天狗族に敵視されているというブールドネージュ様は、やる前から話し合いでの解決を諦めているように見える。

 でも、私はそんなブールドネージュ様を見たくはない。


「力ずくなんてブールドネージュ様らしくありません。どうか諦めず平和的な解決をめざしましょう」

「ふっ、スフレには敵わんな。だが、人魚族の血筋だけではなく、その精神性こそが聖女たる所以なのかもしれん……。了解した。できうる限り話し合いに徹することを誓おう。それに、力ずくで協力させたところで魔族大結界を発動することはできないかもしれんしな」

「はいっ! ありがとうございますブールドネージュ様!」


 ブールドネージュ様の返事を受けた私は喜びが込み上げ深く、深く頭を下げてお辞儀した。

 良かった。本当に良かった……。ブールドネージュ様が私の気持ちを汲んでくれたことが嬉しい。


「話も纏まったようだな。それじゃあ今回のお礼を渡すぜ」


 私が感慨にふけっていると、チマキが今回の報酬を渡すと割って入ってきた。

 もぅチマキったら、もうちょっと空気を呼んでほしいわ。


「こいつが河童の妙薬だ。だが、貴重な物だから量は用意できないよ。少量だがみんなの分を小分けしといたぜ。受け取っておくれよ」


 チマキからお礼の品である河童の妙薬を渡された。私も事件解決の協力者ということで、その一部を分けてもらったのだ。王国に伝わる伝説の……河童の妙薬ゲットー!!


「因みに明日はイバラキの沢解放記念河童の里スモウ大会が開催されるからよ。天狗族の領地に行くのはその後にしておくれよ」


 へぇ、河童の里でイベントが開かれるのね。楽しそうじゃない。伝説の邪竜の登場とかシリアス展開が続いたし、天狗族の領地に行く前のいい気分転換になりそう。

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