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17.河童族の遺跡

「さすがはチマキ、河童の里スモウチャンピオンは伊達ではありませんね。力だけなら私よりも上ですわ」

「へへっ、ざっとこんなもんよ!」


 シャルロットの称賛に、岩を放り投げたチマキは自慢げに薄い胸を張った。

 だからスモウって何よ? 魔族領では常識なの? 私聞いたことないんですけど!


「あの〜、スモウって何かしら? 初めて聞くのだけれど」

「あらスフレ、貴方魔族領に数ヶ月も住んでるのにスモウも知らないの? まあ、魔族領ではあまりおこなわれないから無理もないかしら」

「スフレ、スモウとは河童の間で盛んにおこなわれている力比べだ。スモウの強い者は河童の間で一目置かれ尊敬されるのだ。しかし凄い怪力だな、あれが河伯の力なのか?」

「それはたぶん違うぜネージュ」


 オランジェット様がブールドネージュ様の発言を否定した。何か知ってるのかな。


「河伯ってのは白き亀、竜、川の神とも言われる。なんでも水に関係する力を使える存在らしいぜ。竜と言われる説もあるから、俺たち竜魔族の伝承で伝わってるのさ」

「なるほど、もしかすると河伯は現在では絶滅した古代魔族なのかもしれんな。鬼魔族の間で伝わっていないことを考えると、お前たち竜魔族に近い種族だったのかもな」


 さすがは物知りブールドネージュ様、鋭い考察だわ。

 チマキも河童の主になるだけの実力があるのね。たんなる銭ゲバ河童じゃなかったわ。


 こうしてイバラキの沢上流への道中は仲間の実力を見せてもらいつつ順調に進み、河童の聖地とされる遺跡にたどり着いた。

 河童族の遺跡は川の上に建てられた巨大な石造りの遺跡で、所々が崩れており古い歴史を感じさせるものだった。


「あれが河童の聖地とされる遺跡だ。くそっ、ワイバーンどもが我が物顔してやがるぜ」


 遺跡に到着した私たちは少し離れた所で隠れながら観察する。

 チマキの言葉通り遺跡にはワイバーンがそこかしこにいて、まるで遺跡を警備しているかのようだった。


「あの遺跡の奥にある浄化装置を作動させれば川の毒を消せる。川が浄化されれば聖属性に弱い奴らを弱体化することができるはずだ」

「安心しろチマキよ。すぐに我らが遺跡を取り戻してみせる」

「……ありがとう鬼魔貴族様。ご尽力感謝する」


 ブールドネージュ様の言葉にチマキは大きく頭を下げた。私たちの協力に深く感謝している気持ちが伝わってくる。

 銭ゲバな一面はあるけど、やっぱり河童族の主なんだな。遺跡を大切に思っているようだ。


「ジェット、シャルロット。私たちで遺跡への道を切り開くぞ。スフレとチマキは後をついてくるのだ」

「任せときな!」

「かしこまりましたわお兄様!」


 ブールドネージュ様の号令でワイバーンに攻撃を開始した。


「前に出すぎるなシャルロット! 無理せずサポートに回れ!」


 ブールドネージュ様とオランジェット様の二人はワイバーンを難なく倒していくが、シャルロットはそうはいかず苦戦していた。

 やっぱりあのワイバーンは強い、シャルロットも強いけど複数相手では分が悪いようだ。


「甘く見ないでくださるお兄様? 回復は頼みましたよスフレ!」

「えっ、私? わ、わかったわ!」


 シャルロットに支持された私は懐からポーションを取り出し、シャルロット目がけて投げつけた。

 投げられたポーションは放物線を描きシャルロットの頭に命中すると、ガシャアアンッと音を立てて割れて傷を回復した。


「ごめんシャルロット。手元が狂っちゃった」

「いたっ! ちょっと! 痛いじゃないのスフレ! ちゃんと私の後ろについて振りかけてもらえないかしら!」


 シャルロットの後ろにってことは前線に出るってことじゃない。聖女だから死なないとはいえ、私の戦闘力は一般人レベルなんだから無茶言わないでよ。

 頭に当たっちゃったけど、ちゃんと回復はしてるからそれで許してほしい。


 かくして私たちは遺跡の入口を突破して内部に侵入した。

 遺跡内部は川に沿って作られており、細長い道が続いていた。


「浄化装置はこの奥だ。ついてきてくれ」


 チマキの案内に従い後をついていくと、広い部屋に出た。そこには部屋の中央に川とつながる大きな装置、そして大量のワイバーンが待ち構えていた。


「やはりきたか鬼魔貴族ブールドネージュよ。我が主の命によりここで死んでもらう」


 ワイバーンの中に一匹だけいる黒い竜が前に出て話し出した。

 この親玉っぽい黒竜、ブールドネージュ様のことを知っているの?

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