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13.ワイバーン

 河童族の少年チマキ・イグサを追って、三匹のワイバーンが現れた。

 チマキは助けを求めると、素早く私たちの後ろに隠れた。この子可愛い見た目して、案外良い性格してるわね。

 でも、イバラキの沢の危険な魔物って、魚形って言ってたじゃん! こんな凶悪そうな魔物だなんて聞いてないよ!

 チマキを追ってきたワイバーンは、私たちを見つけると一斉に襲いかかってきた。


「きたぞシャルちゃんっ! そっちは任せる!」

「ええっ! 任されましたわ!」


 左右から襲ってくるワイバーンに対してシャルロットとオランジェット様が前に出る。一匹をシャルロットが、二匹をオランジェット様が迎え撃った。


「おらあああっ!」


 オランジェット様は背負った槍を抜き放ち、二匹を一撃で両断した。

 おおっ! さすがは魔貴族! めちゃくちゃ強い! 

 シャルロットの方はどうかしら?


「くっ、やりますわね。でも、一対一なら私の方が強い!」


 シャルロットの様子を見ると、ワイバーンの吐き出す毒液を躱しつつ的確に攻撃を与えている。オランジェット様のように圧倒的とはいかないが、有利に戦闘を進めていた。

 でも、ワイバーンって毒液なんて吐いたっけ?


「こっちは片付いたな。後はシャルちゃんだが……あの分なら大丈夫そうだな。戦士の戦いを邪魔しちゃ悪い。俺たちは観戦するとしよう」


 どうやらオランジェット様は観戦モードに入ったようだ。素人の私にはわからないが、それだけシャルロットが優勢に戦闘を進めているのだろう。

 その予想通り、危なげなくシャルロットが勝利を収めた。


「さっすがシャルに竜魔貴族の旦那だ! あのクソ強いワイバーンどもを簡単に倒しちまったぜ!」

「まったく、私たちに押しつけて貴方は隠れていたくせに、相変わらず調子のいい子ですわ」


 チマキは戦闘が終わると大喜びではしゃぐと軽口を叩く。そんなチマキを戒める様にシャルロットはその頭を小突いた。

 へー、ほんとに仲良しなんだ。


「しっかし、何でイバラキの沢にこんな魔物がいるんだ。ワイバーンがこの辺りで出るなんて聞いたことねえが」

「あいつらは最近よく出るようになった魔物なんだ。奴らの吐く毒で川は汚染されるし、おかげで河童族も困ってるのさ」


 毒で汚染か、それで水が少し濁っていたのね。自生する水草の種類を見るに、おそらく元は綺麗な水が流れる川だったのだろう。このままではいずれ枯れてしまう。

 私の薬草採取を邪魔するなんて許せないわ。


「あんな魔物が出るなんて大問題じゃない。私が成人の儀式で倒した魔獣王の子供くらいの実力があったわよ」

「そいつを危なげなく倒したんだから、強くなったなシャルちゃん」

「成人の儀式では助けられましたが、いつまでもスフレのポーションに頼ってはいられませんもの」


 へー、あのワイバーンはそんなに強かったのか。あの儀式の後、頑張って修行してたもんね。シャルロットが日々努力してるのは私も知っているよ。


「シャルを助けたポーション? するってえと、あんたが噂の聖女さんかい? おいらはしがない河童のチマキ・イグサと申しやす。以後お見知りおきを」

「こちらこそよろしくお願いします。シャルロットの友達なら大歓迎よ」


 変わった喋り方だけど気持ちのいい子だな。仲良くなれそう。

 そう思っていたら、チマキは倒したワイバーンを背中の甲羅から取り出した袋で回収しだした。


「何をしておりますのチマキ?」

「何って、獲物を回収してるのさ。シャルも知ってるだろ、強力な魔物は良い素材になる。河童族は建築と物作りを生業とする種族だ。良質な素材を使って、より良い物を作りたいのさ」


 おおっ! この子、若い見た目とは裏腹に職人気質でかっこいい考えを持ってるんだな。

 私が感心していると、シャルロットが呆れたように嘆息して話し出した。


「かっこいいこと言ってますけど、それだけではないのでしょう?」

「へへへっ、やっぱシャルは騙せねえか。強い魔物の素材は高く売れるんだよ」


 チマキは指で輪っかを作ると悪い笑みを浮かべて言い放った。

 あ、この子銭ゲバだ。やっぱり仲良くなれないかも……。


「助けてもらったお礼をしたい。ぜひ河童族の里にきておくれよ」


 魔物の回収を終えたチマキに河童の里へ招待された。

 王国に伝わる河童が住む里か、正直めっちゃ見たい。薬草採取は急ぎでもないし、行ってみたいな。でも、私は良くてもシャルロットとオランジェット様はどうかな?

 そう思い二人の方を見ると、


「聖女さんが行きたいなら俺はかまわないぜ」

「私も久しぶりに河童の里に行きたいですわ」


 シャルロットとオランジェット様も、河童族の里へ行くことに同意してくれた。

 こうして私たちはチマキの誘いを受け、河童族の里に行くことになった。

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