第一章13 『魔法の概念』
試験が終わり数日が経った頃、この間の試験の結果が張り出された。
「ボクは総合5位、まあそんなところかな。有栖川さんは?」
「私は...どこだろう...」
「ああ、ここだね、ってええ!3位?!」
そんなように、ヒビキと四葉は試験結果の張り紙と睨めっこしている。
真波はというと、当然のように一位のところに名前があった。確かに頭脳、実力ともに秀でた彼女なら当たり前といっていいだろう。少し大人げないとは思うが。
そして何やらヒビキは俺の名前が書かれたところをちらちらと見ている。俺の順位は120位。白い目で見たいのならそうすればいいさ。240人生徒がいる中でちょうど真ん中、俺としてはとても満足のいく結果だ。
意外なのは四葉が高い順位だったことだ。まあ、彼女に関してはまだなどが多い。後々探りを入れていきたいところではあるが―――
「さて、それでは授業を始める。試験結果が出て皆一喜一憂しているだろうが、授業は真剣に聞くように。」
担任の堀北先生が生徒に向かってそう話を切り出した。
「これから先、お前たちは魔法を使った戦闘を基礎から行ってもらう。この間の試験、一対一では魔法行使を許可したが、ほとんどの生徒が魔法の使い方がまるでなっていない。ここでは、魔法の原理や特性を根本から理解してもらう。」
確かに、上位に入った生徒以外ほとんどが稚拙な魔法しか使えていなかった。今の時代戦闘なんてまず起こりえない。これも平和がもたらした弊害なのかもしれない。
「まず初めに、魔法とは科学である。魔法は万能な力ではなく、あくまで科学の域を出ない。しかし我々は便宜的にその科学を魔法と呼称している。ただ、科学=魔法というわけでは決してない。二つの違いは前者が人の手によって改良されていくのに対して、後者は自己的に進化する。つまり、我々の知る科学の知識を凌駕してその事象を体現できるということだ。」
少し話がややこしくなってきて多くの生徒が各々に考えを巡らせる。
「具体的に話そう。私の能力は『投影』、入学初日に私がお前たちにちょっかいをかけたアレだ。」
ヒビキをはじめ、ぽつぽつと生徒が苦笑いを浮かべる。
「私はあの能力を自在に使えるが原理までは知らない。今の科学の知識をもってしても空中にどのように映像を投影しているのかは不明だ。この能力の先祖は、空気中の電子を振動させる能力だと考えられているが、そこからこの魔法は進化して私の使っている能力になったというわけだ。」
実際その通りである。当初魔法を生み出した科学者たちは、その魔法たちに自己進化するようなプログラムを施した。その初期の魔法は自己を進化させながら、且つ枝分かれのように分岐させて他の能力を生み出し、今日にまで至っている。
「ここまで聞くと魔法は概念なのかと思うかもしれない。」
堀北先生は話を続ける。
「しかしだ、魔法は使用者の遺伝子の中に組み込まれている。通常のDNAのATGCに加え、Mと略されるマグナジルコンという物質を結合させることによって、魔法の行使が可能になっている。これは遺伝子操作によっても得られ、それによって生まれた者もこの中にいるかもしれない。しかし、人工的に組み合わせられるのはA-M、G-Mに限られており、より強力な魔法を発動できるT-M、C-Mといった組み合わせは自然にしか生まれないというのが現状だ。」
『マグナジルコン』――― 古の科学者たちが英知を結集させて作り上げた奇跡の物質。ラテン語で『偉大な』を表すマグナ、石言葉で『平和』と表すジルコンを組み合わせて命名された。これは、魔法が平和利用されることを願った人々の総意だ。
『平和と進歩の500年』、今の時代は、その人々の願いに応えられていると言っていいのだろう―――




