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戦場の皇帝と呼ばれた少年 ~500年後に転生して学園に通う~  作者: 今汝
第一章 始まりは終わりと共に
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第一章11 『最初の試験』

 入学して一週間が経った頃、試験が始まった。

 通常の筆記試験8科目と科学魔法実技の計9科目が行われる。


 「始め。」の先生の合図と同時に生徒たちは一斉に問題を解き始めた。従来の紙のような薄型の電子ペーパーに一斉にペンを走らせる。

 試験官は担任の堀北先生。鋭い目つきと我の強さで入学早々生徒たちに恐れられている。しかしながら足と腕を組みながら目をつむっている様子はなかなか映えるものがある。空いた窓から時々なびく風が彼女の束ねられた髪に触れて囁く。


 筆記試験中は能力の使用は禁止されており、もし見つかった場合は退学もあり得る。


 俺の目標はただ一つ。平均を目指すことだ。成績は全生徒に開示されるため下手に目立つわけにはいかない。今の時間は数学―――


 (この問題なら平均は50点といったところか―――)


 内容は入学試験とあまり変わらない。しかし、普通の高校生であったら問題文すら理解できないような難題が混ざっていたりもした。さすがは東亜連合随一の高校といったところだろう。配点が高かったためこの問題は正解を書いておいた。あとは配点の低い基本的な問題で50点になるように調節する。


 そんな感じで残りの科目の試験も無事終了した。


 さて次は―――



 「これより実技試験を開始する。試験は一対一の模擬戦とする」


 移動した練習場で堀北先生が色々と指示を飛ばす。事前に収集したデータから実力の近いもの同士を戦わせて能力をはかるという。


 この時代では主に剣を持ち、もう片方の手で魔法を発動させるという戦闘形態が主流となっている。生徒一人一人に学校側が用意した練習用の剣が配布された。


 「今回はあえて銃の使用を禁止する。銃撃戦を得意とする生徒もいるだろうが、近接戦闘を想定してここでは剣のみ使用可とする。対戦相手は今からモニターに映す」


 堀北先生がモニターを操作して画面が切り替わる。


 「俺の相手は――― ヒビキか」


 「よろしくね、帝一君」


 近くにいたヒビキが俺に近づき話しかけてきた。


 「ああ、お手柔らかに頼む」


 

 真波と四葉はそれぞれクラスの男子生徒と対戦するようだった。


 (まあ、あの二人なら負けることはないだろう―――)



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 「勝者、有栖川四葉!」


 審判の大きな声が練習場に響き渡る。


 「は、速ええ!」


 「まるで相手の考えてること全部お見通しって感じだったよね」


 そんな賞賛の言葉が会場を覆う。


 四葉と対戦したのは屈強な男子生徒。力だけなら四葉が絶対に勝てない相手だが、彼女はそれをスピードと技量によってカバーした。加えて彼女の能力『伝心(サイコメトリー)』が遺憾なく発揮されたようだ。


 「強いな、四葉」


 「...それほどでも、キミも頑張ってね」


 俺はすれ違いざまに、「ああ」とだけ返事をすると、俺の対戦相手ヒビキと対峙した。



 「いっくん、ヒビキっ!頑張って!」


 後方から真波の声援が聞こえる。


 ほかにもヒビキを応援する声が多い。彼、というか彼女は誰とでも仲良くし、その交流の輪を広げてきた。そのためヒビキの友人は沢山いるのだ。


 「では、始め!」


 審判の声と同時に一対一の戦いが始まる。俺とヒビキにはもう外野の声など聞こえない。二人だけの空間――― 剣を介した二人きりの対話が始まった。


 俺はこの戦いには()()()()()()()()()

 しかし、いくら負けるとは言っても接戦の末の敗北というのが理想だろう。


 おそらくだが、俺の目に狂いがなければヒビキはこの時代では強い部類に入る。剣の構え方、重心の位置からして一般人のそれではない。



 最初に仕掛けたのはヒビキの方だった。

 左脚を後ろに踏み込んだかと思うと一瞬で俺との距離を詰める。


 (意外と速いな、能力無使用状態の俺の三十分の一ほどは出ている)


 俺は上から振り落とされた剣を横に受け流した。


 「ッ?! まだまだぁ!」


 ヒビキの連続的な攻撃が続く。それをひたすら受け止める俺。

 模擬用の剣とは言え高速で撃ち合っている最中には火花が飛び散り、戦いを彩る。


 真っ赤な火花がヒビキの顔をちらちらと照らしている。


 金属と金属がぶつかり合う甲高い音が練習場に響き渡っていた。その様子を生徒たちは深々と見つめている。


 「ヒビキのやつすげーな、きれいな剣だ」

 

 「相手の...帝一くん、だっけ? 手も足も出ないみたいだね、交わすのに精いっぱいって感じ」


 そんな声を聞いて真波がムッとした顔になっている。四葉はというと、ただ淡々と俺たちの戦いを眺めているようだった。


 (そろそろいいか)


 今の攻撃は足元。それを受け止めて俺は自身の上半身に隙を作る。


 (そうだ、喉元を狙え)


 直後、俺の首筋に向かってヒビキの剣が直線を描いた。

 

 刃は俺の喉元から数ミリのところで止まり、ピタリと動かない。


 一瞬の沈黙ののち、審判がヒビキの勝利を宣告した―――

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