第一章 『雨の日Ⅳ ~防衛戦~』
「アレクシアか、覚えておこう。そっちの小さいほうは?」
「ち、小さいって言うな!アタシはこれでも大人なレディーなんだぞ!」
顔を真っ赤にして前のめりになりながら怒っているその少女は、アレクシアに背中をさすられると少しおとなしくなった。
「まあいいわ、教えてあげる。アタシは遷移帝『システマ=ニコール=メイデン』。名前に処女って付いてるけどアタシは処女じゃないわ!これでアタシがオトナってことが少しは分かったかしら?」
どうやら俺のことを嘲笑しているようだが、そんなことは別にどうでもいい。
「メイデン、恥ずかしいわ。それくらいにしてちょうだい。それとあなたの名前も聞いてもいいかしら?見たところニホンジンの血を引いているみたいですし、あなたにも武士道の精神というものがあるのでしょう?こちらが名乗ったのだから貴方も名乗るのが筋よ」
「わかった、名乗っておくとしよう。俺は東亜連合国軍特別部隊首席、『皇帝一』だ。悪いがここから先へは通すわけにはいかない」
俺は落ちてきた爆撃機の破片から剣を創造してそれを構えた。後方には数百人の部下たちと、それに小鳥遊もいる。こいつらを通せば厄介なことになる。
「げ、あのスメラギかよ、これはヤバいよアレクシア!」
「ええそうね、でも私たちも引くわけにはいかないわ」
アレクシアは腰につけていた剣を鞘から抜くと、両手で構えた。システマと名乗った少女は後方へと後ずさりした。どうやら前衛がアレクシア、後衛をシステマが担当するようだ。
「では、―――いくぞ!」
掛け声とともにアレクシアが正面から切ってかかる。一瞬で間合いを詰められたが、横からの斬撃を後ろにのけぞり回避した。
彼女の剣はリーチが短いものではあるものの、それによって素早い連撃が可能となる。縦横無尽に目にも止まらぬ速さでの攻撃が続く。
彼女の能力を知りたいところだか簡単に隙は見せてくれそうにない。
(最初は剣術でお手並み拝見というわけか―――)
動きを見るに彼女の剣筋は玄人、いや達人の域をはるかに超えている。一瞬でも瞬きをしようものなら胴体が切断されているだろう。それほどに早い斬撃―――
俺とこの二人は両者、対魔法スーツを装着している。よって体への直接魔法攻撃はできない。しかしそれは相手も同じこと。
そろそろ俺も反撃に出るとするか。
(脳のニューロンの速度を300倍、血流速度を10倍に)
いったん後方へと飛び体制を立てなおし、一気に間合いを詰める。その速度は先ほどのアレクシアの動きの比ではない。
思考加速と身体強化によって人間の域を超えた速度と攻撃力と実現できる。
「―――っ!?」
俺は剣をまっすぐ彼女の心臓へと突き刺した。
「終わりだ―――」




