第一章 『番外編』
以前この世界の地図が見たいという方がいらっしゃったので概要と共に公開します。この作品はフィクションです、かつ作者の妄想です(笑)
2200年代の大規模な戦争ののち、東亜連合国と西欧連合国の国境線は東経45度となった。東亜連合国は大勝利といっても過言ではない成果を成し遂げ、広大な領土と中東の石油資源を獲得した。
当時の東亜連合国の軍事力は西欧連合国を圧倒しており、一時は西欧の首都ゲルマニアに迫る勢いであった。そのため近年の歴史研究において、「東亜は西欧を滅ぼすことも可能であった。そうしなかったのには何らかの理由があったのではないか。」との見方も根強い。しかし、それはあくまでも想像の範疇でしかなく、実際どうだったのかは不明である。
現在の東亜史の教科書においては、かの大戦のことを以下のように叙述している。
『東亜連合国軍は、破竹の勢いで西欧の首都まで迫ったが「皇帝一中将」の殉職によって兵士たちの士気が低下したため、あえなく撤退を余儀なくされた。』
彼の殉職に際する士気の低下というのは、撤退理由としてかなり脆く、今まで士気に関係なく軍を動かしてきた東亜連合国軍が兵を引いた理由にはなりえないというのが学者たちの見解である。
大戦から500年がたった2700年代、各国間で特に大きな争いは起こらず、人々は『平和と進歩の500年』と、この時代のことをはやし立てた。実際まったくもってその通りで、三か国とも順調な経済発展を見せ、人口増加も著しい。
各国の概要は以下の通りである。
『西欧連合国』
・人口 76億3000万人
・首都 ゲルマニア(人口:1億6000万人)
・公用語 エスペラント語
東亜連合国との戦争で多大なる犠牲を払い、領土を死守したものの、その力は未だ健在である。魔法研究においてはほかの二か国よりも一歩先を行っているが、かの大戦期においては仲間同士の結束が薄く連帯が取れなかった。西欧連合国が成立する以前の国同士のいざこざが尾を引き、仲間内での争いも少なくなかったのだ。2500年代に入り、ようやく国としてのまとまりを見せ始めたころ、それに伴った急速な経済発展や人口爆発が見られ、現在は真に東亜連合国と肩を並べる存在である。
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『東亜連合国』
・人口 112億6000万人
・首都 新東京(人口:3億8000万人)
・公用語 日中複合語、ヒンディスタン語、アラビスタン語
東亜連合国が西欧連合国に勝利した理由の一つとして、アジアとしての連帯が挙げられる。はるか昔、西欧諸国の植民地に転落したアジア各国はその歴史を繰り返さぬようとする結びつきが強かった。連帯が取れていなかった西欧連合国とは対照的に、その強固な理念と連携がかの大戦に大きく貢献したのではないかというのが現在の一般的な見方である。
現在は三か国の中で最も人口が多くなっており、経済の発展が顕著である。特に魔法研究によって生み出された新たな産業で世界をリードしており、例として量子通信関連のデバイスの世界シェアは90%にまで迫っている。量子通信は「量子もつれ」を基底として考え出された通信システムであり、ラグが限りなく0に近く、安定したネットワークを構築できるため、現在はなくてはならない存在になっている。
一方急速な人口増加に伴う社会問題は深刻である。首都である新東京の人口は4億人に迫ろうとしており、インフラの設備や住居の建設が遅れている。居住スペースを確保するため、街中に巨大なビルが立ち並び、地下には深さ10キロにまでなる区画が整備されている。しかしながら、地下深くの区画は政府の目があまり行き届いておらず、犯罪の温床となりつつある。現在は違法掘削によってさらに地下へと区画が掘り進められており、深さ10キロ以下の区画も存在している。そこは「地下世界」という名で知られ、まったくの無法地帯となっているらしい。
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『新アメリカ連合国』
・人口 45億1000万人
・首都 セントラルニューヨークD.C.(人口:2億2000万人)
・公用語 簡略英語
旧アメリカ合衆国を中心として建国された、南北アメリカ大陸を主な領土とする国家である。高い技術力を持っていたものの、既存の科学への絶対的な信頼から生まれた魔法への猜疑心が、魔法の発展を遅らせてしまった。そのため現在魔法の分野においては他の二か国に大きな後れを取っている。
人口が三か国の中で最も少ないものの、世界に名だたる有名企業が多く存在しているため、経済活動が活発であり、国内総生産では他の二か国に引けを取らない。
かの大戦においては徹底的な不干渉政策をとり、軍事、経済といった面で全く介入しなかった。軍事物資を輸出しなかったことによって、戦争の長期化を防いだと賞賛の声がある一方、二か国に対して停戦の提案をしなかったことによる国内外から批判の声も上がっている。




