2 容疑者?
Side:アルスト
僕達は師匠の所から1番近い街トルジア、辺境都市ハールドの西に位置する貿易都市にやってきた。
僕達は依頼達成の報告、エルさん達は冒険者登録をする為に、ギルドへやって来た。
大きなギルドへ入ると、何人かの冒険者が挨拶をしてくる。
2年程前から基本、この街を拠点に活動していたので、知り合いは多い。
受付へ行くと受付嬢に話しかける。
「依頼達成の報告です」
「あっ、アルストさん! 直ぐにギルドマスターの部屋へお願いします!」
「ん? 何かあった?」
「詳しくはマスターから」
「分かった」
エルさん達に一言行ってから、ギルマスの部屋へ行く。
ギルマスの部屋に入ると、母さんと僕がソファに座るのを待って、ギルマスが話始める。
「冒険者アルスト、現在君に、殺人の嫌疑が掛かっている」
殺人? と、アルは首を傾げる。
シェリアも一緒だ。
どういう事か聞くと、説明を始める。
「先週、リドマス・コート閣下の娘さんの護衛依頼を受けた時、帝国三王の1人、グランシェルト・ガリデールの息子、第二王子を君が殺したと報告が来ているんだが、何か言う事はあるかね?」
「確かに、リドマス・コート閣下の娘さん、リディアちゃんの護衛はしました……ですが、そのような男は、あっ……」
「何か心当たりがあるのか?」
「護衛をしていた時に、リディアちゃんに絡んで来た若い男が居たので、軽く捻って追っ払った事はありましたね」
「殺してはいない?」
「街中でそんな事はしませんよ、相手が武器を持って襲って来るならまだしも、若い男が武器も持たずに絡んで来ただけなんで、少し痛い思いをしてもらったら、さっさと去って行きましたよ」
あの男が第二王子?
そんな感じはしなかったけどなぁ。
「アルの言っている事に間違いはありませんよ、私も居ましたが、ただのチンピラに見えましたね」
そうそう、全然王子って感じが無かった。
「で? その男が殺されたって、いつ何処で殺されたんですか?」
「それが、死体を見た者は居ないらしいんだよな……こりゃただの言いがかりかぁ?」
「私が追い払った後、誰かに殺されたって事なんじゃないんですか?」
「それも有りえるが、王都のギルドからは、護衛依頼が終わった後、追いかけて殺したのではと、疑っている者も居るみたいんだよ……私は君がそんな事はしないと分かっているんだがね、王都のギルドマスターも分かっているとは思うんだが……」
「貴族ですか」
俺の言葉にギルマスは渋々頷く。
此処でギルマスが、爆弾を落とした。
「既に帝国兵の侵攻を受けて、村をいくつか滅ぼされている」
「なっ!?」
「既に……」
これは、僕のせいなのか?
あの男を追い払ったから?
頭が混乱してきた所で、部屋の扉が開かれ人が入って来た。
「話は聞かせて貰ったよ」
「これはアルのせいじゃないから気にするな」
そこには、エルさんとエンさんが立っていた。
「そうよ、アルには何の責任も無いからね」
エルさん、エンさん、母さんの言葉が有難い。
そうだ、頭が混乱してしまったが、僕は殺していないんだから責任は無い。
けど……滅ぼされた村の人達は……。
「下で他の冒険者にも聞いたけど、国境付近の村を潰して回ってるみたい、人里離れて暮らしてるから、情報が一切入って来ないのは今後どうにかしないといけないわね」
これは放って置けない。
僕は席を立ち、部屋を出ようとした所で声を掛けられる。
「アル、何処に行くつもりだ?」
振り返るとエンさんが真剣な表情で聞いていた。
「……村人を助けに行かないと」
「お前1人で救えるのか? 帝国の兵は何千何万と居るんだろ?」
それでも……。
「私が一緒に行ってあげる、エンは王都に行って、裏切り者を見つけ出しなさい」
「えっ、俺が村の方に行くから、姉ちゃんが王都に行けば?」
「私だと怪しい奴は全員殺すけどいいの?」
「俺が行きます!」
ん? 裏切り者?
どういう事か聞くと、今回の王子が殺されたのはたぶんだけど帝国の自作自演だろうとエルさんは言う。
そこで、その事を事実にする為には、カーラン王国側に情報を流している者がいるとの事。
「そうか、僕が殺した事実が無いと戦争を仕掛ける事はできない、その為には僕が殺したと報告しないといけないんだ」
その報告をした者が裏切り者?
でも、そんな直ぐバレる事をするかな?
「まあ、王都に行ってから調べるよ」
「お願いします! では行ってきます!」
エルさんと母さんも一緒に出ようとした所で、またまた声を掛けられる。
「お前達は、何をしようとしてるんだ!」
振り返るとギルマスが威圧を放っていた。
「僕は村の人達を助ける為に行きます」
「私もそうね」
「俺は王都で裏切り者の捜索?」
「私は弟弟子の面倒を、先輩としてみないとね」
ギルマスは大きな溜息を吐いた。
「アルストの2人は分かるが、エルフの2人は新人だろ?」
その言葉に4人供キョトンとしてしまった。
「ギルマス、このお二人は僕の先輩です、兄弟子と姉弟子です」
「ん? それが何だと言うんだ?」
そう言えば、僕がミクトさんの弟子だとは、此処では知られて無いんだった。
「僕は神滅流のミクトさんの弟子です、このお二人もです……武神と言えば分かりますか?」
その言葉にギルマスは目を見開いて、口をパクパクさせている。
「お、お前、武神が何処に居るのか知ってるのか!?」
僕達は互いに顔を見合わせた。
何故師匠の居場所を知らないのか。
「ギルマス、師匠はずっと、南の遺跡に居ますよ? 何故知らないんですか?」
「なっ!? ……本当だったのか」
ただの噂だと思われてたのかぁ。
「どおりで、殆ど人が来ないと思った」
とは、エルさんの言葉。
だよね、師匠が居るなら人が訪ねて来るはずだし。
「では、武神に依頼を出した方が……」
「それは無理ですね」
「そうそう、師匠が戦争に関わる事は基本しないので」
確かに、師匠がよく言ってたな。
よっぽどの理由が無ければ、戦争に関わる事はするなと。
今回は、自分の母国が侵略されているんだしいいよね、師匠?
肩を落とすギルマスを横目に、僕達はギルドを出た。




