6 アルストの思い。
Side:アルスト
僕が師匠に弟子入りして最初に始めた事は、体力作りだった。
壁に囲まれた敷地内の壁沿いを只管走る。
昼からは剣の素振りといったルーティーンを5歳から10歳までほぼ毎日行った。
10歳になると実戦的な鍛錬に入ると言われたけど、母さんも一緒にやる事になって驚いたのを覚えている。
何でも師匠が遺跡で見つけた大昔の訓練用魔導具を改造して、仮の肉体を動かし戦う事が出来る物で、これがとんでもない鍛錬でした。
母さんも俺も只管師匠に色んな殺され方をして、精神がかなり鍛えられたと思います。
それが終わると今度は実際の身体で摸擬戦をして感覚を確かめたりしながら、身体を調整していくという流れでした。
俺も母さんも死というものがとても濃く魂に刻まれているので、それは必死に鍛錬しましたね。
死が身近に感じると人はあそこまで必死になれるものなんだと、後で思いました。
この10年で一度も師匠に攻撃を当てれなかったけど、自分はあの時より強くなれたのか疑問に思っていたのですが。
ある日、師匠と街へ行った時の事です。
買い物を済ませ街をブラつきながら屋台で肉串を買い食べ始めた時、以前懲らしめたチンピラの仲間が絡んで来ました。
するとそこで師匠が僕に『その串だけでこいつらを無力化してみろ』と言って来たのですよ。
最初何を言ってるのか分からなかったですね。
続けて師匠が言った言葉で僕は行動に移しました。
『肉は食ってからやれ、勿体ない……もし失敗したら鍛錬を増やすからな』
もうその言葉だけで背筋が伸びます。
言われた通り串で急所を刺しながら魔力を流し、全員無力化に成功した時はホッとしました。
只管鍛錬して10年、僕は母さんと以前住んでいた村へ行く事にした。
僕ももう成人したので外を見て色々やってみたいと思ったのです。
ちなみに計算や文字は師匠にこの10年の間教わりました。
母さんと一緒に勉強をしてました。
偶に師匠には『お前は真面目だな』とよく言われていたのを覚えています。
僕はそんなに真面目かな? と疑問に思っていましたが、母さんにまで言われるのでそうなんだと思いました。
10年住んだ場所を離れ、10年前に流された川沿いを上って行くと大きな猪が現れる。
「あの時の猪じゃないだろうけど……少し小さいかな?」
僕の言葉に母さんは少し笑って答える。
「あなたが大きくなったのよ」
そうか、あの時は物凄く大きく感じた猪が、今では小さく感じる程に成長したんだ。
猪は突進してきたのを身体を逸らしギリギリで避けながら、通り過ぎる時に首を斬り落として倒した。
師匠に教わった収納魔法で死体を収納する。
この収納魔法は師匠とは違い、そんなに大きな物は収納できないし大量に入れられないがとても便利だ。
その後、見覚えのある場所に到着し、父さんの墓まで行くと少し荒れていた。
「10年放置してたものね……ごめんねあなた」
僕達は10年分の汚れを落とす為に掃除し周りを整える。
1時間程して墓は見違える程綺麗になった。
母さんと一緒に途中で摘んだ花を供え手を合わせる。
僕は父さんの墓に誓った。
父さんの代わりにこれからも母さんを守ると……。




