3 サイファスと再戦。
1時間程して女が目を覚ました。
此処は一応作った客室だ。
「どうだ気分は? 痛い所があれば言えよ」
そう言ってコップに水を入れて渡す。
彼女は身体を起こしコップを受け取ると一気に飲み干した所でハッとする。
「アル!?」
そう言って辺りを見渡すと隣のベッドに寝ている子供を視界に入れ、ホッとした表情をした。
「やっぱ親子?」
彼女は頷きだけで返事をした。
「あんたらは直ぐ近くの川岸で倒れていた、子供の方は見つけた時には意識があったが直ぐ気絶したので2人供ここに運んだって訳だ」
「ありがとうございました……あれ?」
痛みが無い事に気が付いたようだ。
「悪いな、気絶してる間に傷を見させてもらった、結構酷かったんで魔法で治しておいたが良かったかな?」
「すみません、ありがとうございます、あの……今はお金を持っていないのですが、いくらほどになりますか?」
心配そうにこちらを見ながら聞いて来る。
「お代は結構勝手に治したからな、それより何があった? 話せる範囲で良いから聞かせてくれ」
すると彼女はホッとした表情をし、ゆっくり何があったのか教えてくれた。
盗賊か……時間は経ってるからもう村には何も残ってなさそうだな。
「そうか……そう言えば自己紹介がまだだったな、俺はミクトだ」
「あっ、私はシェリアです。 息子はアルストです」
シェリアは金髪の長い髪をポニーテールにした、白人風の美人さんだ。
アルストは茶髪でボサボサの良く言えば無造作ヘアで、顔は母親似で可愛らしい感じだ。
おそらく髪の色は父親に似たんだろ。
将来イケメンになりそうだ。
「これからどうする? 村に戻りたいなら送って行くが?」
「少し考えさせて頂いてもいいですか?」
「ああ、ゆっくり考えてくれ、息子も目を覚ましてないしな」
「ありがとうございます」
そう言って頭を下げる。
「食事を用意してくる、と……どうやらお客さんのようだ、少し待っていてくれ」
そう言って家の外に出て、外壁の大きな門まで行き押して開ける。
するとそこには、右腕が元に戻っている剣聖サイファスが立っていた。
ちなみにこの門の重さは現在約10トン程だ。
鍛錬の為に魔法で段々と重くしている。
「よっ、久しぶりだな……再戦か?」
サイファスの風貌は騎士ではなく、旅人って感じをしていた。
「お主は変わらず……いや、魔力が桁違いじゃな、流石武神と言う訳か」
ほう、魔力感知の精度が上がってるのか。
「あんたも武神と呼ぶか……」
街のギルドに行った時は大変だったなぁ。
こいつを倒した俺がそう呼ばれてるとは、数年は知らなかったよ。
「剣聖と呼ばれるワシを倒したのじゃ、そう呼ばれるのは自然じゃて」
「どこが自然だ……ったく、で? 腕を治してまで此処には何しに? 遺跡でも奪いに来たのか?」
「フフッ、遺跡等どうでもいいわい……大金を払い腕を治して貰いこの数年、お主に勝つために鍛錬を重ね、ようやっとお主に勝てると思える程になったのでな、今ここで勝負して貰おうかの」
その言葉に俺はニヤッと笑い答える。
「いつでも良いぞ」
「フッ……では、剣聖サイファス参る!」
その瞬間サイファスは目の前まで来て剣を横に振り抜くが俺は上体を後ろに反らせ躱す。
「良いね、あの時より早い」
続けて何度も剣を振り、斬り掛かるが全て少し身体を動かし躱して行く。
「やはりあの時より強くなっておるか!」
突きを紙一重で躱し懐に入ると腹に浸透勁を打ち込んだ。
衝撃がサイファスの全身を巡り細胞を破壊し血管を破裂させ所々から血が吹き出す。
その一撃でサイファスは膝を突く。
「ぐっ……今回は武器すら持たせる事、叶わぬか」
「俺もそれなりに鍛錬を積んでるんでね」
サイファスは地面に座り込み息を整えると魔力を巡らせ身体の傷を治して行く。
「へ~、回復魔法も覚えたんだ」
「旅の途中仕方なくの……これが出来なければ死んでおったわ」
「あんたも苦労したんだねぇ」
「フンッ、それでもお主には届かなかったがな」
「あんたはまだまだ強くなれるよ……1つ良い事を教えてやる」
「なんじゃ?」
俺は全力の殺気をサイファスに放った。
その瞬間サイファスは冷や汗を流し呼吸が困難になり始める。
顔から血の気が引き青白くなっていく。
全身が震えだし動く事さえもできない。
そこで俺は殺気を止めた。
「はぁはぁ、はぁ……んぐっ……ふぅ~、何じゃ今の殺気は死んだかと思ったわい、こんな緊張今まで無かったぞ」
「今の殺気を経験したあんたはまた1つ強くなれたな」
俺がそう言うとキョトンとした後、ハッとなりニヤっと笑った。
「はぁ~、これからはただ強くなる為に技を磨くとするかの」
「ん? 再戦はもう無か?」
「お主に勝つには、地獄のような環境で数年戦い続けねば届くまいて」
「まあ偶になら訓練に付き合ってやるよ」
「本当じゃな? その言葉忘れるでないぞ」
「ああ……帝国に帰るのか?」
「そうじゃな、皇帝にも帰ると約束しておるからの……その前にお主を倒して
帰りたかったの」
「兵を連れてまた来るか?」
サイファスは無い無いと手を振って答える。
「お主とここには手を出さない様に進言しておく、兵が無駄に死ぬだけじゃ」
「その内俺も帝都に観光へ行くからその時はよろしく」
その言葉にサイファスは目を見開いて答える。
「帝国を潰す気か」
「観光だって言ってるだろ」
そんな話をしているとサイファスが視線を家の方に向け口を開いた。
「あれはお主の子供か?」
「違う違う、近くの川岸に流れ着いた親子だ、怪我してたから治してやっただけだ……息子も目を覚ましたようだな」
サイファスは立ち上がり服に着いた土を叩いて落とすと。
「では、ワシは帰るとするかの……また来る」
そう言ってサイファスは帰って行った。
サイファスの後ろ姿を見ながら思う。
本物が居るのは楽しい。
門を閉め家に向かって歩き出す。
何故か息子の目がキラキラしてる?
さて、これからどうするか決まったのかな?




