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吸血鬼がいく。  作者: あれです。
2章 異世界。
75/109

20 決着。

Side:サイファス



コーマック公爵に言われた時は驚いたが、遺跡を実効支配せよとはの。

騎士団長の座に着いてからと言うものつまらん毎日じゃったが、遺跡に行けば剣を振るえる機会もあろう。

そう思って遺跡へ来てみれば変な結界が張られておるし、部下が殺されそうになるわで、なんとも思い通りに行かぬのが世の常じゃ。


結界の中に居た若い男はどうやら帝国に戦争を仕掛けたらしいが、どうやらこの土地を自分の物にし各国の戦争を終わらせるつもりのようじゃな。

その技量がこやつにあるのか、今からワシがこの目で確かめてやろう。

まさかこのような面白い相手が現れるとは思わなかったの。



最初は相手に譲ってやると、人を超えた速さで迫ってきよった。

木剣を振り抜いて来たのをギリギリ当たらぬ距離まで後ろに下がり躱すと、突きをおみまいする。

それを奴は簡単に躱すと傾いた身体のまま回し蹴りを打ち込んで来たので、腕で防御しながら後ろに飛び衝撃を逃がす。


距離が離れた状態で奴が口を開いた。

「本気でやってくれよ」

そう言って口角を上げよった。

こやつも戦闘狂か。

「うむ、では少し本気を見せてやるとするかの」


ワシはそう言って剣に魔力を纏わせ地を蹴り奴に迫る。

振り下ろしから切り上げの連撃を奴は躱すが服が少し斬れる。

「魔力か……」

ほう、気付きよったか。

しかし嬉しそうな顔をするの。

「ほれ、どんどん行くぞ」

そう言って攻撃を続けるが奴は全て躱し木剣で弾く。



攻防の最中、素直に思った事を口にする。

「お主のような奴、今まで居なかったぞ」

「そりゃどうもっ!」

「ヌッ!?」

少し腕を斬られか。

「横と縦の連撃が同時に見えたぞ、恐ろしい奴じゃ……ちと本気で行かせて貰うぞ?」

久しぶりに本気で戦える相手が現れたのじゃ、やらねば後悔する。

「いいぞ……剣聖の本気を見せてくれ」

ワシは魔力を剣と身体に纏うとその場から奴の背後へ一瞬で移動すると首目掛けて左から振り抜く。


なっ!?

口には出さなかったが、奴は首への剣を左腕で庇いその間に頭を下げ急所を外し避けた。

奴の左腕は肘から先が切断される。

ワシはそのままの勢いで身体を右に回しながら後ろから剣を振り上げ、頭を下げた奴へと振り下ろした。

「ツェイッ!!」

その剣を奴は身体を捻りギリギリで躱し、腹に蹴りを打ち込んできおった。



ワシは吹っ飛ばされ地面に叩きつけられる。

「ぐふっ……あれを、躱すとはの」

立ち上がりながらそう言うと奴は笑いながら言った。


「流石剣聖だ、相手の腕を斬っても油断しなかったのが良い……大体の奴はあの時点で隙ができるからな」

立ち上がり奴を見ていると違和感があった。


「…………お主、アンデッドか?」

「ん? あぁこれか」

そう言って切断された腕をこちらに見せる。

やはり血が出ておらぬ。

「血が出ぬのはアンデッドしかおらぬ」

「違う違う、これは……ちょっとした技術だ、アンデッドじゃないから安心しろ」

「理由は言えぬか」

「これは俺が見つけ鍛錬し磨いた技術だ、他人にしかも敵に教える訳ないだろ」

確かにそうじゃな……。


「フフッ……」

ワシがまだ知らぬ事をこやつは見つけ磨き、技術まで発展させよったか。

……面白いのう。

こんな奴がまだ居よるとはな。


「本気を見せて貰ったお礼に、俺もちょっとだけ本気を見せてやるよ」

「フンッ、剣聖と呼ばれるワシ相手に手を抜くとはな……良いぞ、存分に見せてみろ」

ワシの言葉に奴は笑った後、顔から笑みを消し感情を消し……そして気配をも消した。


ゴキュッと生唾を飲み込み冷や汗が頬を伝う。

何じゃこれは……目の前に奴は居るのに気配を感じない。

目ではそこに居るのが見えてるが、そこには幻が立っているような。



……そうか! 魔力さえも奴から感じないのがおかしいのじゃ。

生物や物、全てに少なからず魔力は存在しておる。

それを全く感じさせぬとは……化け物か。


気配を感じさせぬ事は多少訓練すればそれなりに誰でも出来る事じゃ。

しかし、持って生まれた魔力を完全に隠すのは……ほぼ不可能に近い。


ギリッと奥歯が鳴るのが聞こえた。

今のワシは酷い顔をしておるじゃろうな。

こんな若い者に嫉妬しておる自分が滑稽でたまらん。

どれほどの鍛錬を積めばそんな事ができるのじゃ……ワシでもまだまだ足りぬか。

すると奴の呟きが聞こえて来た。


「行くぞ」


警戒してるが奴は動かない?

その瞬間足を斬られるがそんなに深くない。

「ぐあっ!?」

み、見えんじゃと!?

このワシが見えぬとは……やつは元の場所から動いておらん。

どういう事じゃ?



伍之型ごのかた幻死げんし



その瞬間、周りに幾人もの奴がワシを囲っていた。

これは……魔法か!

本物はこの中の1人。

すると数人がワシに向かって攻撃を仕掛けて来たので躱し剣で受け止めると、実態があった。

「お主じゃな!」

すると剣はすり抜けるだけだった。

すり抜けたばかりの奴が木剣を横払いしてくるがこいつは幻と思っていると、横っ腹に衝撃があった。

「ぐっ……」

幻じゃったはずの者が攻撃ができるのはどういう事じゃ!?


ずっと動かず同じ場所に立っている奴と、周りに立っている者達の気配が一緒で本物を見つけるのは困難じゃな。



ワシは目の前に居る奴を切り崩しこの囲いから出ようと動いた瞬間、剣を持っていた右腕を斬り飛ばされた。

「なっ!?」

斬った奴に回し蹴りを放つがすり抜けてしまった。

くそっ!

…………此処までか。

そう思っていると奴の幻が一瞬で消える。

「なっ……何故消した? あのまま殺せたはずじゃ」

すると奴は、キョトンとした後笑いながら答える。

「あんたはまだまだ強くなれる……いつでも再戦待ってるからな」

そう言って奴は遺跡の方へと歩きながら、切断された腕を再生させていた。


部下達が奴を囲もうと動き出した。

「やめろお前達!!」

「しかし団長!?」

「お前らでは勝てん、命を無駄にするな、これより帝都に帰還する! 他の者にそう伝えよ!」

「えっ、い、遺跡は……」

口答えをする者に威圧を放ち黙らせる。

「り、了解です!!」

そう言って戻って行った。

フゥ……部下を無駄に死なせずに済んだわい。



すると奴は振り返り口を開いた。

「そう言えばあんた、サイファスって何歳? 見た目おっさんだが爺さんみたいな喋り方してるけどずっと気になってて」

奴の言葉に一瞬固まってしまったわい。



「ワシは今年で86歳じゃ」

素直に歳を教えてやったが奴は……。

「マジで!? ……サイファスって普通の人族だよな?」

こやつ、そんな事も知らぬのか。

「お主そんな事も知らぬのか……魔力が多い者は老化が遅くなり、寿命が長いのは当たり前じゃ」

「そうだったんだ……ありがとう、またな!」

去っていく奴を見ながら思う。



変な奴じゃな。





伍之型・幻死は、極限まで気配と魔力を抑えながら、魔力で作った自分で攻撃や相手を翻弄する技である。 忍者の分身の術を元に作った対人戦用の技だ。魔力で作った分身は実態にも幻にもなれる。

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