13 対策。
Side:ケリス・ラーバント公爵
時間は少し遡る。
これは本当の事なのか。
「間違いないのか?」
俺は報告を上げて来た影に聞く。
「はっ! 誓って間違いありません」
「はぁ……だとしたら問題だな」
こんな人間が居るのか?
1000人と1人で戦って勝つなんてあり得るのか?
ケルミナ帝国の剣聖でもこれは無理だろ。
「王と相談する」
俺は屋敷を出て城へ向かい執務室へと向かった。
執務室へ行くと宰相も居たので3人で話し合う事になった。
「これは本当なのか?」
王が俺と同じ事を聞いて来る。
そりゃそうだこんな話、普通なら信じられない。
俺は頷く。
「最も信頼してる影からの報告です」
「ケリスの影は優秀だからのう……リドマス、どうする?」
王が宰相に話を振った。
俺もずっと考えてるがどうすれば1番良いのか……。
「この者、危険では?」
「それはそうだが、その思考は止めた方がいい」
これを敵に回して勝てるか、とかの次元ではない。
「ほれケリス、あれ……確かもうすぐで開かれるはずじゃったか?」
「何がです?」
「闘技? 大会?」
「武闘大会ですか?」
「そうじゃ! ……それに我が国からの推薦で出て貰って、優勝すれば褒美に爵位を上げるのはどうだろうか?」
「褒美に爵位を上げるのは……本人が断る可能性があります」
「ではどうする?」
「その者が望むように計らえば、カーラン王国の敵になる事は無いのでは?」
「この者が望む物は何だと思う?」
武力を持っている者が望む物……強敵?
いやいや、そんなのは用意できないしな。
「早くしなければ、他の国が先に手を出してしまうぞ?」
「とりあえず大会に出て貰い、話の中で何を望んでいるか聞き出して見るのはどうでしょう? 他の国が手を出す前に我が国からの推薦で出て貰えば後は、彼の望む物を与えれば問題無いでしょう」
「しかし、国を望まれたら出せんぞ?」
「その時は……何とか話し合ってみましょう」
そうなったら国を差し出すしかなさそうだが。
そうならないように祈るしか今はできないな。
その後、彼が街を出たと聞いて追いかける為に馬車を出した。
どんな人物なのか話して確かめないとな。
そして何とか彼と話せる事が出来た。
「武闘大会?」
うわぁ~、戦闘狂か?
「コホンッ……3年に一度隣の帝国で開かれる武闘大会があってな、各国から強者が集まり技を競うのだ」
本当はそれだけでは無いのだが。
「なるほど……あいつらも来るかもしれんな」
「誰か知り合いが来るのかい?」
「いや、近くに居ればそいつらも来るかもしれないなと思って」
彼の知り合いなら、強いのかもしれないな。
「その大会にそれぞれの国が推薦する者を1人出場させるんだが、君に出て貰いたいのだ、報酬はちゃんと出す……それと優勝すれば別に褒美も用意しよう」
彼が顎に手を当て暫く考え込むと顔を上げて答えた。
「報酬は貰う……優勝して貰える褒美は別にあんた達に貰わなくても良いが、認めて貰いたい事がある」
王になりたいとか?
「何を?」
彼は口角を上げニヤッと笑うと答えた。
「南の土地を俺が貰う事を認めてもらう」
…………この男は今何て言った?
南の土地を貰う?
「君は知っているのかね?」
「何を?」
「南の土地の利権を各国が争ってる事を」
その問いに彼はまたニヤッと笑った。
「当然だ、街中で噂されまくりだからな」
「それでもあの土地を欲すると?」
「ああ、各国がバカみたいに取り合っている土地を俺が貰う、そうすれば戦争は終わり民は苦しまなくて済むだろ」
「貴様! 我らの国を愚弄するか!」
「そうだ、民の事を何も考えない国のトップは馬鹿だろうが」
「違う! 民の事を思えばあの遺跡を我らの国が手にしなければならんのだ」
「過去の技術を欲し、魔道具を欲し、その力で他国を攻めるか?」
「我らはそんな事はせん……他の国、特に帝国に古代の技術が渡れば周りの国は飲まれる、そうならないよう我らが遺跡を手にするのだ」
「なら大丈夫だ」
「何が大丈夫なのだ?」
彼は少し間を空け答えた。
「遺跡は俺が貰うからな」
この男はさっきから何を言っている?
「1人であの遺跡を手に出来ると思ってるのか?」
「当たり前だ」
「なっ……」
この男は何故そんな事を何でもない事の様に言える?
しかし褒美がそれを望むなら……。
「分かった、褒美は南の土地の権利を認めろって事は、持って帰って王と相談するがおそらく大丈夫だ」
「本当か? ならその依頼受けてやる」
今後なんとか国の利益になるように話し合わなければな。
その後、彼を連れて王城へと戻り王へと会ってもらう。
彼が悪なら国は滅んでいたな……。
帰り道、そう思って震えたのを私は一生忘れないだろう。




