3 ランク。
Side:ギルドマスター
俺は10年以上冒険者をやってきたが今日ほど驚いた事は無い。
ギルドに所属しているダグが訓練場に連れて来た、今日登録した新人。
こいつの歩き方、重心、目線、何もかもが只者じゃない事を語っていた。
案の定、ダグに全力でやらせたが余裕で負けた。
この街で活動してる冒険者はそれなりに腕に覚えがある者達だ。
なんせ近くには凶悪な魔物がウヨウヨ居るからな。
そんなダグに次いでアゼまで簡単にやられやがった。
やはりこいつは只者じゃない。
気になる事があるので執務室へ連れて行き話をする事にした。
「そっちに座ってくれ」
お互いソファに座ると挨拶をする。
「改めて、俺はここのギルドマスターをしてる特級剣士のシュラインだ」
「特級でギルドマスターになれるのか」
「ギルドマスターはそれなりに実力が無いと務まらんからな」
「おっと、俺は駆け出しオールラウンダーのミクトだ」
ん?
「オールラウンダー?」
ミクトは頷く。
「何だオールラウンダーって?」
「さあ? 俺の知ってるままなら、何でもできるって意味かな?」
「そんな職業聞いた事ないぞ」
「受付嬢には何も言われなかったが?」
おかしい、何かあれば報告が上がるはずだぞ……。
「すまんちょっと待ってろ……おーい!! ロアナ!!!」
受付嬢を呼ぶとタッタッタッタッと小走りの音がし扉が開いた。
「何ですか?」
「お前こいつを登録した時、職業をちゃんと見たのか?」
ロアナは首を傾げ答える。
「見ましたよ? オールライダーっていう珍しい職業でしたよ」
こいつは……。
ミクトの奴は顔をそらして笑いを堪えてる。
「アホ、こいつの職業はオールラウンダーって言うんだ、ちゃんと見ろ!」
「オールラウンダー? って何ですか?」
「ミクトが言うには、何でもできるって意味らしいが……」
「初めて聞きますね」
「まあ、まだ発見されて無い職業があっても不思議でもねぇから良いが、こういう事は直ぐに報告を上げて貰わないとな」
「すみませんでした!」
「もういいぞ、仕事に戻れ」
手を払って下がらせる。
ったく、受付嬢が冒険者の職業を見間違えるとは、気がたるんでるな。
「すまんな」
「いいよ、で話って職業の事か?」
「いや、ギルドカードを出して見せてくれ」
「ほい」
「渡す前にそれにもう一回魔力を流してみてくれ」
ミクトは首を傾げながら魔力を流した。
それを渡してらう。
……やっぱりな。
「お前の職業が伝説級になってるぞ」
「はっ?」
職業:伝説級オールラウンダー
「まだ何も依頼受けてないが?」
「冒険者ギルドのランク機能はちょっと複雑でな……ギルドで使っている魔道具は全てと言うか、今世界に存在する魔道具は古代の物しか残って無いんだが……で、血から得られる情報を元にしてるが、研究者の論文によると、魂の情報を読み込んでいると言われてる」
「魂……」
俺は頷いてから続きを話す。
「でだ、最初に血を垂らして貰った時は基本の情報が書き込まれるんだが、そこからもう一度血を垂らして貰うか、魔力を流して貰うと最新情報に書き換えられる」
ミクトは頷く。
「此処からは殆どの冒険者には知られて無いが……カードの職業をランクにしてるのは、ただそれが書き込まれていたからだ……分かるか?」
「つまり、ギルドはこれをランクとしてるが、本来は職業の熟練度を現しているって事か?」
おお、こいつは頭がいいな。
「そうだ、ギルドが出来た時にこの魔道具を使う事が決まったが、長い年月の中、ランク付けが今の形になったんだ」
「じゃあ、AとかBとか、色分けするとかして、ちゃんとしたランクを作ればいいんじゃね?」
「それは今までにも何度か話し合いがあったがな……カードの情報を弄る事ができない以上、今のままやってるってのが現状だ」
「なるほどね……で? それを何故俺に言う?」
そうだよな……。
「すまん!」
「何を謝ってるのか説明しろ」
「本来登録した時、カードを渡して魔力を流して貰う決まりなんだ」
その言葉にミクトは首を傾げる。
「何も言われなかったが?」
「だから謝ってんだよ……こっちの不手際だ、後でロアナには罰を与えるから許してくれ」
「そんな事はどうでもいいよ、それを謝る為に俺を呼んだのか?」
「お前なぁ……伝説級の職業に至った奴なんて世界に数人しかいないんだぞ? これがどういう事か分かるか?」
ミクトは暫く考えてから答える。
「ランクが上がったのは嬉しいが、俺にとってはどうでもいい事だな、ランクで戦う訳じゃないんでね」
「ハッハッハッハッ! 言うじゃねぇか! しかしな……伝説級の職業の者は各国が囲う為に動く程のもんだ、実力で来ない分搦め手で来るから気を付けろ」
「ご忠告どうも……そうか、俺に搦め手で来る奴が居るとは久しぶりに遊べそうだな」
「俺はお前が怖いよ」
「俺は以前、死神と呼ばれてたからな」
そう言ってニヤッと笑った。
「やっぱお前、怖いわ」
「話は以上か? なら俺は行くが?」
「あぁ話は以上だ、伝説級の本気を見てみたかったがな」
ミクトはその言葉に振り返り答える。
「街が吹っ飛ぶぞ」
マジかよ。
「あっそうだ、魔道具を見せてくれないか?」
「何すんだ?」
「カードにちゃんとしたランクを入れられないか見てみるよ」
「マジか!? お前魔道具も見れんのかよって、オールラウンダーってそういう職業だったか?」
「戦闘、生産は得意だな」
本当に何者んだよ。
「そう言えば、お前は国には帰らないのか?」
「国?」
「吸血鬼の国がどっかにあるって聞いた事があるが、そこから来たんじゃねぇの?」
ミクトは少し考え答える。
「いや、そことは関係ないが吸血鬼の国は面白そうだから、今度探して見る」
そう言って部屋を出て行った。
面白そうか……ぶっ飛んでんなぁ。




