47 開発の人そして……。
今日最後の投稿です。
東雲峻、俺に『アライブワールド』の招待を送って来た人だ。
その人が一体何の用なのか。
「いやぁ、ミクトさんは我々開発の間では有名でしてね、人気もありますよ? ネオワールドの時からずっと見てましたから」
「ストーカーか?」
「酷いですね……まあ開発の者達は皆見てましたよ? 特に訓練と称して海を泳いで渡った時とか、ボスに1人で挑んだ時とか……」
「本当に全部見てたのかよ」
「僕達が1番燃えたのは、レイドボスを1人で倒した時ですね、部長なんかコーヒー片手に立ったまま固まってましたから、まさかあのレイドボスを1人で倒すプレイヤーが居るとは思わないですよ」
「あれは良い訓練になったな」
するとシューは少し落ち着いて質問をして来た。
「ミクトさんはこのアライブワールドをどう思いますか?」
「どうとは?」
「ネオワールドと比べてよくなってますか?」
直ぐに頷いて答える。
「勿論、MMOでレベルが無いとか最初ビックリしたけど、俺に合ったゲームだな」
シューは嬉しそうな顔をして頷いてから口を開いた。
「このゲームは我々開発が、ミクトさんを見て作ろうと思ったゲームなんですよ」
その言葉に俺は固まった。
1プレイヤーを見てこんな素晴らしいゲームを作るとか、しかもそれが俺ときたもんだ。
「それは素直に嬉しいな」
「ミクトさんがネオワールドで技術を磨いているのを見て、我々は一個人が一生でどれだけの年月を技術の研鑽に当てられるのか……どれだけ頑張っても精々が80年、最高でも90年程で100年にも満たないんですよ」
確かに人間が技術を鍛えられる時間は決まってるよな。
「そこで我々は思ったんです、ミクトさんのように例え時間加速の中でも500年以上技術を鍛えるのを見て人間は何処まで技術を伸ばせるのかと……そのためにこの『アライブワールド』作りました」
なるほどなぁ~……この『アライブワールド』は全ての事に熟練度がある。
それは現実でも同じ事だ。
技術をひたすら磨けばどこまで行けるのか……それは俺も知りたいな。
「それで、そんな『アライブワールド』ですが、先日ミクトさんを見てる時に発見したんですが……世界が二重に見えると言う事ですが、どんな感じだったのか知りたくて今日はこちらまで来ました」
メールでも良かったんじゃ?
「あっ、ちなみにこのアカウントは自分のプライベートの奴で、今日は会社休みだったんですよ、それであの時の事を教えてくれませんか?」
特に問題は無いので感じたままを説明した。
世界が一瞬二重に見えるが直ぐに収まる事。
世界が脈打つような感覚を覚えた事。
これらは弟子達も同じだったので、俺達だけじゃなく他のプレイヤーも同じ様に感じた事だろうと思う。
説明が終わるとシューは驚く事を言った。
「なるほど、そんな事が……しかし、管理AIはバグを検知してないんですよね、ログを確認してもそんなバグは見つからなかったし」
「えっ……じゃあ、バグじゃないって事?」
シューは首を横に振って答える。
「分かりません、実際に問い合わせもありましたから」
ん?
「って事は、管理AIにとってはバグじゃないって事では?」
「えっ? それはつまり、管理AIがバグとして見てない……起こって当たり前の事……」
その瞬間、世界はまた一瞬ドクンと二重になった。
「……今のですか?」
俺は頷きだけで答える。
するとシューはメニューを出してメールを打ち始めた。
「ちょっと部下にメールを……今の時間とこのエリアのログを見れば確実に分かるはずです」
シューって結構上の役職なのか。
メニューを閉じると俺に視線を移し今日はこの辺で帰ると言う、休みの日にはまた来ますと言って帰って行った。
行動力がある人だな。
その後、俺達はいつもの日々を過ごしていた。
そんなある日、それは起こった。
何時ものように過ごしていた。
俺は森で鍛錬をしながら魔物を狩り、その後木を背にして休憩をしているといつの間にか眠ってしまったようで、目を覚ますと辺りは暗くなっていた。
寝すぎたか。
今何時だ?
……メニューが出ない。
何度やってもメニューが出ない。
バグか?
ん? …………おかしいな。
何時もより感覚が鋭くなってる。
良く寝たから元気になったのか?
気配を凄く感じる。
「それよりログアウトもできないのだが」
管理AIが見つけてくれるか。
その瞬間、茂みの中から何かが飛び出して来た。
俺は身体を横に躱し後ろ回し蹴りを喰らわせた。
「グゥッ!」
思いっきり蹴ったが硬いし重い。
そいつの姿を見ると、この森で見た事無い魔物だった。
「狼男?」
いやいや、この森にこんな魔物は居ないはずだが?
俺の蹴りで5メートル程後退した状態で爪を伸ばし構えて様子を伺っていた。
「いいね、今の俺より身体能力は格上の魔物か」
バグで現れたのかどうかはこの際どうでもいい……。
俺は口角を上げて呟くように言った。
「ちょうどいい鍛錬になる」
魔物は地を蹴り人間の速さを超えたスピードで俺に迫って来た。
右手の爪を振り下ろしてくるのをステップで躱すが少し切れている。
「なるほど、魔力を爪に纏わせてるのか」
こんな上位魔物がこの辺りの森で出たら、初心者はすぐに死んでしまうぞ。
俺も全身に魔力を巡らせ纏う。
魔物はそのまま左手の爪を振り下ろして来た。
「上位魔物でも獣は獣だな」
縮地で魔物の後ろに一瞬で移動し背中に掌を当て一撃をお見舞いした。
バギッと鈍い音をさせ魔物はその場で倒れる。
「捌之型・元壊」
捌之型・元壊は、相手の身体に衝撃波と魔力を流す事で、細胞組織を元から壊す事ができる技、再生能力のある魔物でも殺せる技になる。
「ただ爪を振り回すだけの獣に負ける気はしないな」
ん~?
魔物を倒したら体中から力が溢れてくるんだが?
「これもバグか?」
まあ良いや、とりあえず道場に帰るか。
俺は魔物をインベントリに入れて歩き出した。
これで1章は終わりです。
暫くしたらまた2章が始まると思います。
評価・ブクマありがとうございます。
感想等の返事はできませんが、ちゃんと読ませていただいてます。
励みになります。
今後、急展開で完結する可能性がある事をご了承下さい。




