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吸血鬼がいく。  作者: あれです。
1章 VRMMO
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44 摸擬戦。

Side:伊川流武術道場師範代・木村。




武術を始めて30年。

色んな流派を学び今に至る。


そんな俺があの動画を見た時思った……なんて綺麗なんだと。

あんなに洗練された武術を見たのは生まれて初めてだった。

それと同時に嫉妬したのは間違いない、俺が今まで磨いて来た武術の遥か先を行ってるのを認めたく無かった。

そこで思ったんだ、これはゲームの中だからできる事なんだと。

現実で戦えば30年磨いて来た武術には届かないだろうと。



しかし、彼の弟子である二十歳ハタチにも満たない女の子2人の動きは、熟練の武術家そのものだった。

滝沢との摸擬戦を見て思ったのは経験の差……それも圧倒的な実戦経験。

その彼女達の師匠である彼と今から戦えると思うと心の奥底から喜び、闘志が溢れて来るのが分かる。



準備が終わり道場の真ん中で獅子崎さんと対峙する。

「よろしくお願いします。 手加減は無用です」

俺がそう言うと獅子崎さんは少し考えて答えた。

「大きな怪我はさせないようにします」

大した自身だな。

師範が手を上げ開始を告げた。

「始め!!」

お互いに礼をして構えるが彼は構えない。



少しの間沈黙が続き額から汗が流れてくる。

おかしい……構えていないのに隙が無い上に、表情からは何を考えているのか、どう攻めてくるのかも全く読めない。

此方から動くか。

そう思い俺は間合いを詰めていく。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

Side:伊川流武術師範・伊川。




試合が始まると木村は構えるが彼は全く動かない。

おっ、木村が先に動いたか。

もうすぐで間合いに入るぞ……。


「なっ!?」

彼の間合いに入った瞬間木村はステップで後ろに飛び距離を開けた。

あの木村が何もせずに離れるとは……動いた!

木村がステップで入って突きを放つが彼は少し動いて躱しただけで、反撃はしなかった。



今の動きだけでも分かる。

彼は、獅子崎君は俺よりも強い。



その後も木村が仕掛けるが全て躱される。

すると木村が距離を空けて口を開いた。

「攻撃はしないんですか?」

「中々丁度いいタイミングが無くて」

「いやいや、何回も攻撃の隙はあったでしょ」

「あぁ、今までの隙で攻撃すると一撃で終わってしまうし、大怪我をする事になるので手は出しませんよ」

その言葉に木村は苦虫を噛み潰したような表情をする。



そりゃそうだ、その時点で手加減されているうえに子供扱いだ。

「獅子崎さん」

「はい?」

ここは木村の為に言わないとな。

「手加減は無用と木村は言いましたよ」

「しかし……」

「お願いします」

彼は木村に視線を向け少し考えると諦めたように答えた。


「あんまり死なないようにします。 多少怪我はすると思いますがいいんですね?」

俺と木村は無言で頷く。

すると彼は今まで構えなかったのに、今初めて構えをとった。



左の掌を上に向け前に出し、身体は半身、腰を少し落とし右手は開いたまま掌を下に向けて軽く肘を曲げて後ろに伸ばしている。

見た事無い構えだ。

『あれは伍之型ごのかたね』

彼の連れの女性がそう言ったのが聞こえた。

伍之型……いくつまであるんだろうか。



彼は左手を前に出したり右手を前に出したりとスイッチして間合いを詰めていく。

木村はどう攻めるか悩んでいるようだ。


彼のステップが早くなってきた。


マジか!

あんな距離から蹴りを出して届くとか……すごい。



木村との距離が3メートル程の時に彼は左手を床に着いて身体を屈め右後ろ回し蹴りを放つが木村が後ろに下がり避けると、そのまま身体を捻り右手を床に着け左足が木村を追いかけて横っ腹に入り鈍い音がした。

「ぐっ!」

木村は膝を着き蹲ると動きが止まった。

「勝負あり! ……木村、大丈夫か?」

木村は声を出さずに手を上げて首を縦に振るだけだった。

綺麗に入ったからな、喋るのも苦しいんだろう。


「後で病院行って検査を受けろよ」

落ち着いたのかゆっくり木村が立ち上がり道場の真ん中へと立つと、獅子崎君も向かい合いお互いに礼をした。

礼に始まり礼に終わる。




摸擬戦終了後のトークを少し撮ろうとなり俺は質問した。

「あれは何て技ですか?」

「ん? 技?」

「あの蹴りです」

「あれは特に技って訳じゃないですね」

「しかし、あの構えは伍之型とお連れさんが言っていたが?」

「あぁなるほど、伍之型は変則型であれは技って言うよりただの動きです。 伍之型の技を使うと、って言うかどの技を使っても大怪我する可能性があったのでやめました、さっきのも横っ腹を蹴りましたが、本来は頭を蹴る所ですが死んでしまうので腹にしましたから」

「なるほど……恐ろしいですね」

「伊川流武術も同じですよね?」

「いやいや、うちは試合とかもあるので、結構安全な方ですよ」

「伊川さんも『アライブワールド』に来れば、実戦形式の戦いができるんですが、やる予定は無いんですか?」


あのゲームかぁ……。

「実はちょっとやろうかと思ってます」

「では是非始めたら、家の道場へ来て下さい、歓迎しますよ」

「では近いうちに、門下生を連れて行きます」

これでもっと実戦経験を積めるようになるな。




年甲斐もなく興奮してる自分に少し驚いた。

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