35 スチームパンク。
鉱山都市ヘラキド、大きな山に囲まれた場所にあり、高い外壁で山と山を繋ぎ魔物が入れないようになっている。
サキドより少し小さいぐらいで中々大きな街だ。
あっちこっちの煙突から煙が立ち上がり良い雰囲気の街だな。
現在、門の順番を待っている所だ。
「この雰囲気好きだな」
俺の呟きにカイが。
「分かる、スチームパンクの雰囲気だろ?」
「そうそう、立ち上がる煙や蒸気が良い感じだ」
「私も好きですこの雰囲気」
俺達はそんな話をしてるが、横で聞いているミオーラとアリスナは首を傾げている。
順番が来て中に入ると、門の近くにある乗合馬車の停留所で止まり、お礼を言って降りた俺達は、街の雰囲気を楽しみながら宿を探す。
御者のおっちゃんが教えてくれたので行って見る。
「確か1つ目を右に行って……あれか?」
「そうですね、『蒸気の宿』って書いてます」
外見はこれまた配管等もあり良い感じのスチームパンクだな。
4階建てで結構大きい。
チリンと鈴を鳴らしながら扉を開けると、中には色んな物が置かれていた。
受付へ行くと茶髪の長い髪に繋ぎを着てゴーグルを首から下げた女性が立っている。
「いらっしゃいませー、泊まりですか? お風呂ですか?」
笑顔で聞いて来る。
ほう、風呂だけもあるのか。
「……あなたはプレイヤーですね?」
俺がそう言うと驚いた顔をする。
「よく分かりましたね!?」
「その格好してたら分かる、スチームパンクは良いよな」
すると彼女は満面の笑みになり。
「ですよね!? この街を最初見た瞬間に、この街に住むって即決しましたよ」
「外観も中も正にスチームパンクだな、所でちょっとの間泊まりたいんだが、大丈夫かな?」
大丈夫と言うので部屋をとる。
名簿に全員の名前を書いてると説明を始めた。
「うちは人数で料金決めてるんですよ」
「ほう現実と一緒か」
「はい、この世界の宿では珍しいと思います」
料金を聞くと1人1泊5千Gと少し他より高い。
「これぐらいにしないと同業者に恨まれるんですよ~、その代わり、他の宿よりは良い部屋になってますよ! 現実基準でやりましたので!」
なるほどね、それで安いと客を取られて恨まれると。
なら寛げるかな。
「じゃあ、カイはベルと2人部屋で、ミオーラとアリスナも2人部屋でいいよな? 俺とエルは1人部屋でそうだな……とりあえず1月でお願いします」
するとエルが口を開いた。
「ミクトさん、1月泊まるなら2人部屋で一緒の方が良いと思いますよ」
「ん? なして?」
「1月も泊まるなら、他のお客さんもいるんですから、私達それぞれ纏めた方がいいですよ」
エルが力説してくるのを聞いて確かにそうだなと思ったのでそうする事にした。
1月も泊まるならと割引してくれた料金を払い鍵を貰う時。
「それぞれ部屋にトイレとお風呂も付いてますから、地下には大浴場がありますよ……ちなみに部屋は防音設備バッチリなんで」
最後をこそっと言って来たので俺はカイを見て言う。
「だってよ」
カイは何も言わず親指を立ててニヤッと笑っていた。
俺達の部屋は2階の205~207で、205に俺とエル、206にカイとベル、207にミオーラとアリスナに決まった。
部屋は結構広くてゆったり寛げそうだ。
「昼食ったら鉱山の方、見に行くか」
「あっ、つるはしとかはどうするんですか?」
「つるはし? ……何に使うんだ?」
「えっ……鉱石掘るんですよね? 採掘にはつるはしが必要ですよ?」
「いやいや、採掘は素手でやるぞ?」
「はっ? 素手で掘るって砂場じゃないんですから……」
俺はニヤッと笑って。
「鍛錬だよ」
そう言うとエルが固まってしまった。
少し経って戻って来たエルは自分の手を見て。
「なるほど……素手で掘る」
「素手で掘れるなら、大抵の魔物を倒せるだろ」
その言葉にハッとして顔を上げるエル。
「頑張ります!」
拳を握りしめ答えた。
部屋を出て他の3人に声を掛けて1階の食堂へ行くと、受付に居た先ほどのプレイヤーがカウンター席に座って女性店員と話をしていたが俺達に気づき。
「あっ、お昼ですか? そう言えば言って無かったですね、私はここの店長をやってるリリムといいます。 すみません、お昼はうちやってないんですよ」
そう言うと頭を下げるが、店員が口を開いた。
「いいんじゃない? プレイヤーだし他の客も居ないから、出してあげるよ?」
薄い金に近い緑色の長い髪を頭の上で巻いて上げてる。
瞳も似た色をして、シュッとした綺麗な女性だ。
「そう? じゃあ……良いみたいなんで食べて行きますか?」
俺達は誘いを受け入れ昼飯を頂く事にした。
リリムも一緒にテーブル席へ移り、皆で食べる。
鉱山に入るのに手続きとかは要るのか聞いてみた。
「いえ、鉱山の出入り口に受付があるので、そこで申し込めばすぐ入れますよ」
なるほど、じゃあ食料を買い込んで暫く籠るか。
その後、いろいろ聞いたり雑談をしていた。
店員の女性はキフィと自己紹介をしてくれて、どうやら俺の事を動画で見て知っているようだ。
リリムとキフィ以外に後2人いて、みんな現実の仕事仲間らしい。
4人供絵を描く仕事をしていて、この街の風景をよく描いてると言っていた。
絵を描く仕事と聞いてある事を思い出してつい話してしまった。
「それは実際にあった事なんですか?」
リリムが聞いて来るので頷いて肯定した。
何があったのか、それは昔友達から聞いた話だ。
その友達も絵を描いていたが、絵を勉強するために教えてる人が居ると言うのでそこへ行った。
おっさんと言うか白髪の爺さんに近い男性。
いつも授業をするのは街中のカフェとかで、個人で色んな子に教えてるようだと言っていた。
数日経ったある日、一緒に教えて貰っている子から相談を受けた。
そのおっさんにしょっちゅう足などを触られると言い、嫌悪感を出していたらしい。
何やかんや話して訴える事にしたらおっさんが話し合いをしようと場を設け、その場へ行くと他の教えている女の子を連れて来ていた。
話し合いの中で友達はおっさんが呟いた事を聞き逃さなかった。
『撮ったのがまずかったかな』と……。
他の子も、おっさんに突然キスされたと言っていたと友達は言う。
おっさんは教え子をホテルに連れ込み裸の写真を撮ったり動画を撮ったりして、色んな子を食っていたと友達は言った。
女の子の中には嫌がる子も居れば、抱かれたくて抱かれてる子、目的があって抱かれてる子等いろいろ居るらしい。
友達は『あんなおっさんに抱かれるのが好きなんだな』と呟いていた。
この話をするとリリム達は嫌な顔をして言う。
「気持ち悪いですね~」
「まあ人それぞれだけど、おっさんに抱かれて撮られるって……私は無理だね」
「脅されてまた抱かれるみたいな?」
「ミクトさんはどう思いました?」
最後にエルから聞かれたので。
「オレ? 正直に言っていいのか?」
みんな頷く。
「どうでもいいかな?」
みんな固まった。




