22 記念すべき1人目。
少し街を見て回り、時間が来たので闘技場へと戻った。
「あっ、ミクトさん!」
闘技場に入ったら声を掛けられ、そちらへ視線をやるとエル達が集まっていた。
「何だ、皆来たのか」
「はい、ベルさん達は留守にしないように残るって言って来ませんでしたね」
「あいつらはそういう奴だから気にすんな」
俺の試合は嫌と言う程見てたからな。
俺は戦士門から入り1番ゲートへ向かう、エル達は観客席の方へ向かった。
「おっ、あんたがそうか頑張れよ!」
と言って、ゲートの開閉を担当してるスタッフに背中を叩かれた。
「楽しんでくる」
ビーっとブザーが鳴ると、ゲートがゆっくり上がって行くと光が溢れてきた。
眩しい。
スゲー……、マジスゲー……。
ヤバい、それしか言えん。
真ん中に柵も何も付いていないテニスコート2面分より少し大きな、白いブロックで作られた円形リングがある。
周りは全面客席が2段に別れてある……満員じゃね?
通路を進んで行くと段々横に客が見えるようになるが、1番前の客でも3メートル程の高さがある。
あっ、客席の下が黒いのはあれが黒金か?
皆に見える位置まで出ると……。
『うぉおおおおおおお!!!!』
「何だ? ひょろっちい奴だな」
「あっ、カッコいいじゃん」
「あれで100人抜きできんのか? まあ俺は負ける方に賭けたけどな」
「俺は全財産勝つ方に賭けたぞ!」
「やっちまぇええええ!!!」
「あいつ動画で見た事あるような……」
「ゲッ、勝つ方に賭ければよかった……マジかよ~」
「あれって死神だよね?」
大歓声の後は色んな言葉が聞こえて来た。
『さあぁああやってまいりました!! アナウンスはわたくし、リドスがお送りします! 皆さん準備は良いですか!? 突如決まった今宵の宴!!! ……100人抜きだぁああああ!!!』
『ォオオオオオオオオ!!!!!』
『100人の戦士達を何処まで倒せるのか……挑戦者は!! えーっと、神滅流道場? 創始者でもあり!! 師範のミクトだ!!! あの死神のように黒い髪と、相手を焼き尽くす程の赤い瞳!! 勝利の女神は誰に微笑むのか!? 神に捧げる聖戦の始まりだぁああ!!!!!』
リングアナウンスがプロだ。
そんな感想を持ちながら、アナウンスの間にリングへ上がる。
神滅流とは1時間前に決めた名前だ。
アナウンスで戦士紹介の時に使う為に所属を聞かれ、そう言えば道場の名前決めて無かった事に気が付いた。
神滅とは正にそのままで、ネオワールドの裏ボスである邪神をソロで何度も挑み完成させた技が多く、最後は討伐したのでそこから神滅流にした。
ちなみにしんめつではなく、じんめつと読む。
『さあ100人抜きの記念すべき1人目は……えーっと、これか……何と! 1人目はあのライナス帝国からやって来た、剣豪ガインバルだぁあ!!!』
へー、剣豪なんて居るんだな。
反対のゲートから出て来たのは、革の胸当てを着け赤を基調にしたコートのような上着を着て、茶髪の長い髪を後ろで縛っている、体型は俺とそんなに変わらない。
『彼は2日前闘技場へとやって来てまだ1度も戦っていません! なのでデータはありませんが、いい戦いを期待しましょう! それでは両者、準備は良いですか? ……では始めぇえええ!!』
『ゴォ―――――ン!!』
始まりの鐘が鳴った。
いきなり襲い掛かって来るかと思いきや冷静だな。
するとガインバルが剣を抜く、西洋の剣だ。
剣を俺に向け口を開いた。
「神滅とは大きく出たな」
「そうか? そのままの意味で付けたぞ」
「名前で戦う訳じゃ無いだろ? 虚勢を張ってまでこんな事をやって」
「こんな事?」
「今まさにやっている事だ」
「それが何か?」
「態々帝国からやって来て見てみればどいつもこいつもレベルが低い」
全部見たのかこいつ? 凄いな。
「挑戦者が異界者だと聞いて見れば虚勢を張った子供だ、しかも無手……笑えてくるよ、スタッフに言って俺が1番に出て来たのは、さっさと終わらせる為だ」
子供? あぁ、20歳設定だが日本人特有のあれか、若く見えるとか言うやつ。
それより……。
「喋って無いでかかって来いよ鈍間、何時まで伸ばすつもりだ? 時間を稼いでも誰も助けてくれないぞ?」
その言葉でガインバルは突進してきた。
まだまだだなぁ、あんなんで殺気駄々洩れって未熟過ぎるだろ。
暫くの間、ガインバルの猛攻をギリギリで避けながら観察していた。
ガインバルが後ろに引いたので聞いて見る。
「何か技があるなら出しとけよ、じゃないと終わらせるぞ?」
するとガインバルが剣に魔力を纏わせる。
「俺が編み出した技を見て死ぬがいい」
だから異界者だって知ってるだろ。
今までで1番早い動きで突進してきて剣を振り下ろして来た。
その瞬間、後ろからの気配がすると後ろからも斬撃が迫り、咄嗟に魔力を両腕に纏い横に回転し、剣に沿うように足を運び、前後の斬撃を腕で受け流しながらガインバルの横へと立つ。
参之型・繭斬
丁度剣を振り下ろした体勢で隙だらけだ。
「面白い技だ」
魔力を纏わせた拳を頭に叩き込む。
ガインバルの頭が消し飛び光になって消えた。
エルでも余裕の相手だな。
会場に少しの間沈黙が続き……。
『ウォオオオオオオオ!!!』
「何だ今の、何があった!?」
「これは番狂わせか!?」
「キャアアアアカッコいい―!!」
「マジかよ……まあまだ99人居る、大丈夫だ!」
「よっしゃあああ!! そのまま勝てよ!!」
「やっぱ死神じゃん」
「死神ならそうなるよな……誰でもいいから勝ってくれ!!」
「流石死神だねぇ」
色んな言葉が聞こえる中俺は、次の戦士を待っていた。
ガインバルは復活して何も言わず退場した。
またやりたいな。
参之型・繭斬は本来、刃物を持ってやる技だ。
回転しながら刃で防ぎ受け流しながら斬る様が、繭に籠っているように見えて付けた名前だ。
さて、どんどん行こうか。




