17 約束。
ダルとのビデオチャットが終わると、槍男のソウエンが声を掛けて来た。
「あんた……死神が先生の師匠?」
「ああ、ネオであいつがPKやってた時に俺が狩ってたら弟子にしてくれって、さっきみたいにジャンピング土下座をかましてな、丁度他の人にも教えるタイミングだったからダルにも教えたんだよ」
そう言うとソウエンは下を向き少ししてから俺を見て口を開いた。
「先生に教えた戦い方、槍を俺にも教えて下さい!」
そう言って頭を下げた。
俺は暫く考えてから告げる。
「……今のままじゃ無理だな」
すると驚いた顔を上げて聞いて来た。
「どうしてですか!? 何でもします!」
「先ず、お前はダルの弟子だろ、それと……お前は耐える事が出来ない」
「えっと……何にですか?」
俺はソウエンを真剣に見て答える。
「俺の鍛錬だよ」
するとハッとしてから答える。
「やってみないと分からないじゃないですか!? どんな鍛錬でも耐えます! お願いします!」
その言葉を横で聞いていたエルが「うわ~、それは止めた方が」とか言っている。
「ほう……どんな事にも耐えると? ……まあそれより先ずは、お前がダルに説明して許しが出てからだな」
俺がそう言うとソウエンは、メニューを開きダルに連絡しようとするので俺が止めた。
「どうして止めるんですか?」
「そういう事は直接会って話す事だろ、此処で連絡してダルが許しても俺が許さん」
「……分かりました、明日先生が来たら話します」
そしてソウエンとは此処で別れて、俺とエルは道場へと戻った。
道場へ戻った俺達は買って来た家具や日用品を皆で設置して、それぞれ自分の部屋を決めた。
ちなみに内装工事は帰ってきたら終わって、周りの工事に入ってる。
ここで道場都市の説明をしとこうか。
外壁は黒金で出来た高さ10メートル幅2メートルの黒い壁に魔力を流し硬くしてから固定している。外壁の上で見張りができるようにもなってるよ。
出入り口は西に1つ立派な神社にある門を模して作った、日本風で高さ10メートル幅6メートルの大きな門があり門を正面にして長い面の右側、つまり南側が湖に面してるようになっている。
そして本堂は門から見て1番奥にあり、漆喰の白壁で真ん中には武家のような立派な門から入るようになっている。
和風建築の3階建てになていて、1階は玄関を入るとフローリングで目の前には目隠し用の白い壁があり、左右から回って入ると、100畳程の広いリビングになっていて2階部分まで吹き抜けになっている。
勿論靴を脱いで入るように。
右側の東には20畳程で縦長の厨房、キッチンがあり、西には50畳程で縦長の食堂になっている。
左側の東には60畳程で縦長の倉庫があり、西には20畳程で縦長の応接室がある、客が来た時通す部屋だな。
左右の真ん中、北と南に2階へ上がる階段があって、グルっと周りに20の部屋がある。
2階の東と西に3階へ上がる階段があり、3階は階段を上がると幅4メートルの廊下が反対の階段まで伸びていて、北と南で6つの部屋に分かれている。
そして1階リビングの2階へ上がる階段には、地下へ続く階段があり、地下は大浴場になっている。
北階段が男湯、南階段が女湯とちゃんと分けられているぞ。
そしてリビングの奥には、男女別のトイレがある。
そう、このゲームでは排便があるのだ。
やる事ができてしまうんだから、排便があっても不思議じゃない。
ネオワールドではどっちも無かったが。
勿論2階の部屋にはトイレが付いて、3階の部屋にはそれぞれ普通サイズのトイレと風呂が付いてある。
ちなみに畳は無いので全部フローリングだ。
本堂の左右、北と南に道場はあるが、南には鍛冶場といろいろと生産するための作業場もある。
どちらも体育館の3倍の広さがあり、南は体育館1つ分を生産用の作業場にした。
ちゃんと壁と瓦屋根が建っているが、床は石でできている。
実戦の時と同じように靴を履いてやるからだ。
ちなみにこの世界のPVPは何処でもできるが、憲兵に見つかるか他の人に通報されて犯罪者となり、初めてペナルティが生まれる。
つまり鍛錬で殺してもPKのペナルティはない。
何やら神と言う名のAIが世界を監視してるらしいが、それはチートや不具合の監視と犯罪の有無を決めているらしい。
ただ、世界を監視して悪い事をしたから犯罪者という訳じゃない、住人は国の機関が裁き、プレイヤーは住人や他のプレイヤーから伝えられてAIが裁くという事だ。
達磨が他のプレイヤーにPKの頭だと言われていたが、AIは違う事を分かってるので犯罪者にならなかった。 1度でもPKをしていればあの時、犯罪者になってペナルティが発生していた。
都市出入り口の門を正門と呼び、本堂の門を内門と呼ぶ事にした。
全体的にはファンタジーと和風を足して割ったような感じになったが、街の部分は今の所何も建っていない。
人が集まればその都度、建てていくつもりだ。
そろそろ日が沈むのでオーリが晩御飯を作ると言い、厨房に行くとエルも手伝うとついて行った。
それ以外はリビングのソファに座り雑談を始める。
「しかしこの世界は凄いな、本当に現実に近い」
2週間程でこんなのを建てるのは、魔法が無い現実じゃ無理だが。
「まあそうですよね……トイレとか」
俺の呟きにエンが答えた。
「それは男女の営みがあるので別にいいんだが以前のネオワールドだと、キッチンとかにもストレージがあって、いろんな食材や料理を入れられてたけど、この世界は無いだろ?」
「あぁ、確かに! そこは不便? っすね~」
インベントリはあるのにそういうのは無いのか? ……ストレージは無いが、収納魔法系で何かあるかもな、鍛錬のついでにその辺りも研究してみよう。
ダインの弟子達を飯に招待しようと思い呼びに行くと、丁度作業が終了したタイミングだったみたいで、みんな喜んで食堂へついて来た。
完成祝いでオーリがいろんな料理を用意してくれ、みんなで楽しみながら宴会をした。
22時頃になってお開きになりダインの弟子達は帰っていく。
それぞれ風呂に入り寝る準備をして部屋に帰る。
俺の部屋は3階の北側東の部屋で、エルは隣の部屋にし、エンは南側の東でオーリは店を建てたら住居と一緒にするつもりなので、2階の1室にした。
リミナとサラキも2階の1室を選んだ。
部屋でのんびりしているとダルからボイスチャットがかかってきた。
「なんだ?」
『いま門の前に到着しました!』
門?
「何処の?」
『師匠の道場がある大きな門です!』
「よく分かったな」
『何か結構な数の男達が街の外を歩きながら師匠の話をしてたので、聞いたらこちらに居ると聞いて走って来ました!』
ダインの弟子達か。
「ちょっと待ってろ」
ボイスチャットを切って正門へ行き門を開けると、既に土下座をしたダルが居た。
「ようダル久しぶり」
「お久しぶり、です」
ダルは土下座をしながら震えた声で返事をする。
門を開けた時からずっとガタガタと震えてる。
俺は近づいて頭を蹴り上げ、伸びた身体に拳を打ち込んで最後は回し蹴りで吹き飛ばす。
地面に何度か跳ねて止まったダルは呻きながらも土下座をする。
俺は頭を踏みつけダルに聞いた。
「お前、俺との約束破っただろ……百回程殺すか?」
ダルは頭の痛みに耐えながら口を開いた。
「……途中で逃げ出して、本当にすみませんでした!!」
そうなのだ、こいつは何か良いように言っていたみたいだが逃げ出した。
教える前に俺は、皆に約束をして貰ったことがある。
『教えてもいいが最後までやる覚悟はあるか? 無いなら今すぐ消えろ』
『俺がいいと言うまで人に教えるな、馬鹿はいつでも増長する』
『自分を制御できるようになれ』
『何かやったら俺が殺しに行くぞ』
「今のリスポーン地点は?」
「……帝国です」
「今からサキドへ行って登録してこいそれと、ソウエンがお前に話があるらしいから会って聞いてやれ、それからまた来い……いいな?」
「はい! 分かりました!」
「行っていいぞ」
ダルは立ち上がり頭を下げてからサキドへ走って行った。
部屋に戻って寝よ~。




