7 静かな怒り。
エル達が街へ出かけた後、俺はリグとケリンの相手をしたりしながら過ごしていた。
しかし、数日経っても中々帰って来ない。
何処をほっつき歩いてるんだか。
そして今日もいつも通り午後の鍛錬をしていると、エンが戻って来た。
反応からして走ってるようだが、何かに追われてるのか?
後方には何の反応も無いが。
暫くすると門が開いてエンが入って来た。
「師匠!! 十剣の魔王が現れました!!」
「っ!? ……ほう、あいつもこの世界に来たのか」
これは久しぶりに全力で戦えるチャンスだな。
「場所は?」
「戦場っす!」
「戦場?」
詳しく聞くと、帝国とカーランが現在戦争状態らしい。
とりあえず、リグとケリンはゴーレムに任せて、門を閉めれば外には出られないので大丈夫だろう、すぐ戻ると言って拠点を出た。
リグとケリンはゴーレムともよく遊んでいるので問題ないだろう。
走りながら、エンに話を聞いた。
その三王の奴が何か企んでいるのは分かるが……サイファスは何してんだ?
しかも突如現れたレイドボスか。
十剣の魔王はネオワールドの最難関ダンジョンの最下層に居たレイドボスだ。
それが何故この世界に居るのか。
アライブワールドに元々十剣の魔王が居たって事か?
それだと、かなり不味い事になるんだが。
アライブワールドに他のレイドボスが実装されていたなら、まだまだ現れる可能性がある。
……旅に出る事を真面目に考えないといけないな。
当然、俺が狩る為に!!
こんな時に、開発の東雲さんが居れば分かるんだが。
あの人もこの世界に来てるのかな?
やっぱ世界を周る旅に出るのは決定だ。
その前に、先ずは十剣の魔王を狩る。
全力で走り1時間程で戦場の近くまで来ていた。
「久しぶりに見るな、あの野郎」
遠くの平原には、見慣れた魔王が暴れていた。
するとエンが微妙な顔をしている。
「どうした?」
「さっき姉ちゃんからごめんとだけ念話が送られて来てからは、全然念話の返事が無いんすよ」
「急ぐぞ」
その場から消えた様に移動し、近づくと、アルが倒れている人の横で膝を突いているのが見えた。
「アル、大丈夫か?」
「姉ちゃん!?」
後ろからアルに声を掛けると、エンが倒れているエルを視界に入れ、急いで近づく。
「アル、何があった?」
顔を上げたアルは顔をぐしゃぐしゃにし涙を流していた。
それが、幼かった頃のアルと重なって見えた。
何とかアルが説明をしてくれたが……。
「未熟者が……」
「……ずびばぜん、師匠」
「お前も未熟者だ」
どいつもこいつも……。
あぁ……俺は苛ついているのか。
こいつらが未熟だから?
いや……エルが殺されたから?
どれも違う……。
1番苛ついているのは、自分に対してだ。
守ってやれなかった。
今までのエルの顔が頭に浮かんでくる。
俺の隣に立ちたいと言ったエル。
なら強くなれと言って、鍛えてやったなぁ。
俺は自然とそんな事を思い出しながら、十剣の魔王に向かって歩き始めていた。
インベントリから刀を取り出し魔力を纏わせる。
これももう、自然とできる程になっている。
「ちょっと待ってろ、すぐ終わらせるからな」
届くか分からないが、エルに対して言った言葉。
こいつだけは俺が殺す。




