そして一年
一年が経った。獣人特有の魔眼…千里眼で街の様子を見てみると面白い光景が、うつった。
「違うの!違うのよ!これは私じゃないのー!」
ブリジットとかいう性悪聖女候補とナゼールという男…なんと王太子だったらしい。彼らがブランシュの治験の時に供述していたことが、俺の目線からの映像付きで国中に流れている。
これを受けて、モーリスという男はただの勘違い浮気野郎、性悪聖女候補は性悪聖女候補、王太子はあんな横暴を許すクソ野郎として瞬く間に話題になった。
その後、さすがにこれには神殿と公爵家が動き、性悪聖女候補は聖女候補から外され、公爵家も勘当。伯爵家には、以前公爵家に払った賠償金の五倍もの賠償金が支払われたらしい。もちろん伯爵家とブランシュ本人の名誉の回復も行われた。そんなのなくてもブランシュが被害者なのは誰もが知るところだし、それでブランシュが帰ってくるわけじゃないけどな。
王家も動いた。王太子は王太子位剥奪の上、生殖機能を奪い離宮へ幽閉。厳し過ぎる処罰だが、王太子の弟は優秀なことで有名で、三男のスペアもいる。ようは王家のトカゲの尻尾切りアンド人気取りだろう。
ちなみにモーリスの実家カサンドル伯爵家はすでにモーリスを廃嫡し縁を切っているので知らんとのこと。上手く逃げたな。だいぶ前から放逐されたらしいモーリス本人は、スラム街から例の性悪聖女候補と王太子のやりとりを見たらしく必死に何か泣き叫んでいたがいいぞもっと泣き叫べ。俺の腹の虫が収まるまでな!
さらにその後。驚いたことに性悪元聖女候補は高級娼館で元聖女候補としてワンランク上の商品的な立ち位置に君臨していた。本人も意外にも気性が職柄に合うようで楽しんでいた。ところが客の方は生意気な性悪元聖女候補がもっと大人しければ可愛いのにと愚痴っていた。そこで高級娼館のオーナーは、なんとブランシュに治験で使ったあの薬をどこからか入手して性悪元聖女候補に使ったらしい。相当苦しんだのちに廃人になった性悪元聖女候補は今や一番人気の最高ランク商品だ。
王太子の方も、離宮で何者かにあの薬を使われたらしい。多分王様の命令な気がするけどね。相当苦しんだ末に廃人になった彼は、無理矢理食べさせてくれるような人もおらずそのまま衰弱死したらしい。まあ、人望がなきゃそんなもんだよな。