ブランシュの事情を知る
その後、ブランシュはとある聖女候補とかいう女の虐めの現行犯で逮捕された。
ブリジット・アレクサンドル。公爵令嬢らしい。聖女というかなり貴重な人材の候補であり、この国の希望の一人。他にも何人か同年代の聖女候補はいるが、爵位的に今代の聖女はブリジットで決まりらしい。聖魔力自体は上回る候補者もいるが、平民なので優先はされないだろうとのこと。
ブランシュ、なんでよりにもよってそんな相手を虐めたんだ。それになにより、わがままだけど優しいブランシュならそんなこと本来ならするはずないのに!
聖女候補は貴重な人材、それも相手は公爵令嬢。ブランシュと当主様、奥様、若様は牢獄に送られて、一家諸共厳罰に処され殺される寸前だった。
しかし、件の聖女候補の慈悲によりブランシュ本人がある薬剤の治験に付き合えば許してもらえる、ということになった。ただし、薬の効果は伏せられて。当主様も奥様も若様も俺も、どうすることもできなかった。ブランシュは、自分のせいだからと治験に参加することを選んだ。
治験が始まってすぐに、ブランシュは苦しみ始めた。俺は付き添いが許可されてずっと側にいることになっている。苦しい苦しいと胸を掻き毟るブランシュを抱きしめることしか出来ない俺は、あの悪魔たちの会話を聞いた。
「ブランシュだったっけ?あの子も可哀想よねー。元々はあの子の婚約者、モーリスが私に目移りしなければこんなことにならなかったのに」
「ブリジット、君も罪な女だ。多数の男を誑かして婚約者の女性に見せつけるのだから」
「あら、数少ない私の趣味よ?それに、騙される男と奪われる女が悪いんじゃない」
「ちなみに、あの少女に虐めを促したのも君自身だろう?」
「ええ、そうよ!だってとっても面白そうだったんですもの!モーリスの正義漢気取りはとっても見応えがあったわ!婚約破棄を突きつけてあの子を振ったその場で、今度は私に振られたのよ!嗚呼おかしい!私にはナゼール、貴方がいるのにね!」
「君、いつかは誰かに刺されるんじゃないか?」
「私は聖女候補よ?公爵家の長女でもある!誰にも手は出せないわ!」
「わからないよ、あの少女の手飼いの少年…彼、恐ろしく耳がいいみたいだ。二階の〝観客席〟の僕らの話に耳を傾けている」
「え?…あら、獣人?珍しい。でも、毛色が好みじゃないわね。いらないわ」
身勝手な話に怒りで尻尾がぶわっと大きくなる。ブランシュは俺の胸の中でただ苦しい苦しいと苦しんでいたが、やがて動かなくなった。
「ブランシュお嬢様…ブランシュお嬢様!」




