ブランシュの婚約者
ブランシュは歳を重ねるごとに美しくなる。俺はただその後ろをついていく。優しいブランシュは俺を隣に立たせようとするけれど、俺は一歩後ろを選んだ。
ブランシュには婚約者がいる。モーリス・カサンドル伯爵令息。俺はこいつが気に食わない。ブランシュの何が気に入らないのか知らないが、ブランシュに対して冷たい態度を取る。モーリスが帰ってから落ち込むブランシュを慰めるのが俺の役目だった。
溝は日に日に深まる。その度に俺は慰める。俺にはなんとなく、ブランシュが優しく接する俺に傾倒しているのに気付いていた。そして思う。そんな男はやめて俺を選べばいいと。連れ去って、何処へでも逃げるのにと。
でも、ブランシュは逃げない。俺に頼らない。ただ落ち込んで愚痴を吐くだけ。…まあ、俺なんか所詮使用人だからな。夢は見るものではない。
ブランシュは、モーリスとなんとか関係を改善しようとした。だが、モーリスは無視。もうどうにもならない。俺は、これは結婚後が大変だなと辟易した。
それでも、ブランシュのわがままと優しさは変わらない。わがままは言うが満面の笑みでありがとうを言うし、使用人たちに何かあれば必ずなんとかしようと手を尽くす。自慢のお嬢様である。
貴族なんてクソだと思っていたけれど、こんな素敵なお嬢さんがいるならまあ悪くはないのかもしれない。そう思っていたのに。幸せだったのに。
ブランシュは、大きくなって貴族の通う学園に行き始めてからおかしくなった。