1/1
プロローグ
プロローグ
不意に思い出すのは、学校でのいじめを受けていたあの記憶。どうして彼らを助けてしまったのだろう。自分一人なら逃げられたはず、だが不思議と後悔はしていなかった。
(追手が来る。捕まったら確実に殺される。)
彼は死に物狂いで街の中を走った。ここを抜ければ森だ。なんとか隠れてやり過ごせるかもしれない。後ろから足音がする。振り向くと同じクラスメイトの林さんがいた。彼女は、僕よりも彼らの企みにいち早く気づいていた人物だ。僕は、声を振るわせながら彼女に尋ねた。
「他のみんなは。」
「さぁ、たぶんほとんどは死んでるんじゃない」
そっけなく彼女はそう答えた。なんとか森には逃げ込むことに成功した。兵士達は、僕たちの居場所にはまだ気づいていない。
「頼む。早く向こうに行ってくれ」
近づく兵士達の足音を聞きながら、僕はそう願った。