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見た目に騙されちゃいけない第六話

 誰か助けて。


『おい! そっちに行ったぞ!』


『逃がすな! 奴の仲間に違いない! 確実にひっとらえろ!』


『ひっとらえて火あぶりにしてやれ!』


 四方八方から聞こえてくる殺意に満ち溢れた怒号に身が震える。助けに来たはずなのに、今では逆に助けを求める立場だ。


「ど、どうしてこんなことに……」


「どうしても何もお前のせいだろうが!」


 隣でうなだれるエリンに文句をぶつける。

 こいつのせいで……こいつのせいで……っ!


「お前のその変態コスプレのせいでなぁ! 俺達は魔王の手先と勘違いされたんだぞ!」


「何度も言いますけど好きでこんな格好してんじゃないんですよこっちも! それなのに『そんな奇妙な恰好、普通の感性を持っていれば恥ずかしくて出来ないはず……さては貴様らも魔王の手先だな!』ってひどいと思いません!?」


「この足手まといが!」


「だぁからトランプが武器の人にんなこと言われたかねぇんですよッ!」


 とまぁ、とにかくこの戦犯足手まとい色物女神が言った通り、セーラー服にブルマという破廉恥な恰好のせいで厄介なことになっているわけである。


 しかも聞こえてくる怒号から情報をまとめてみるに、予想通りこの街に魔王の手先がいたらしいのだが、この街が火事になっているのはその手先によるものではなく、手先をあぶりだすために住人が火を放ったかららしい。蛮族かよ。どっちが悪者か分からなくなってきた。


「待てよ……魔王の仲間と勘違いされたのはエリンなんだから、俺は関係ないんじゃ……」


「ひ、ヒキガネさん? 何を……」


「よし、エリン。提案なんだが、ここからは二手に分かれないか?」


「い、嫌だ! 嫌です! 見捨てないでくだじゃいよヒキガネじゃぁぁああん!!」


「うわ汚ねっ、やめ、はなせっ!」


 涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔をこすりつけてくるんじゃない!


「ひぐぅぅ、あぁう、えっぐ……し、死なば諸共って言ってたじゃないでしゅかぁ……」


「うるさい俺はわが身が可愛いんだ!」


「見捨てないでじゅよね? 見捨てないでしゅよね? うんって言ってくれない限り絶対に放しませんからね? なんならこのまま服で鼻かみますからね?」


「や、やめろ、この服は今となっちゃマジで一張羅なんだぞ! あーもうわかったから! 見捨てないから!」


 しかし困った。エリンを生贄に出来ない以上、どうやって住人たちの誤解をといたものか……。


「こ、こうなったら……私たちが魔王の手先をやっつけるしかないと思います」


「やっつけるって……出来るか? 俺達に。まともな武器もなければ戦闘の心得もないんだぞ?」


「よく考えてください。こんな序盤で出会う敵なんて、そう大した敵じゃないはずです。きっとここまでがチュートリアルなんですよ!」


「うーむ、神の指示に誘導されてここに来たわけだしな……確かに一理ある」


 それに今のところ俺達にとって脅威なのは、魔王の手先よりも街の住人だ。街の住人と戦うより手先と戦った方が難易度も低そうに思える。


「よし、ならその案で行こう。問題はどこに魔王の手先がいるのかだが……」


「それなら分かります! たったいま、観戦している方たちからの指示が来ました!」


 こっちです! と先導するエリンについて行く。どうやら神連中はさっさと魔王の手先とのバトルがご所望らしく、指示された道は住人に見つかることなくあっさりと進むことが出来た。


 そうしてたどり着いたのは、街の中央あたりに位置すると思われる広場――いや、本来は広場ではなかったのだろう。

 地面は大きくへこみ、元は建物に使われていただろう木材が散らかっている。つまり、何かしら強力な力で破壊され、広場になってしまったということだ。



「~~~~っぷはーー! あぶないあぶない、うっかり死んじゃうかと思った~~!」



 大火事の街、大きな破壊痕、散乱する建物の成れの果て――そんな状況に似つかわしくない、気の抜けた声が聞こえて来た。


「おいエリン。間違いなくあいつが魔王の手先でいいんだよな? ――エリン?」


「う……嘘、でしょ……!? あ、あれはまさか…………っ!」


 地面に出来たクレーターの中央でのそりと起き上がったそいつに、エリンは信じられないものでも見たかのように目を見開いていた。


「にゅ~、この街の人間たちはちょっと野蛮すぎるぞ~……ポポはただ寝てただけなのに~。でもなんでポポの正体がばれたんだ~? ポポがやったことなんて、ねぼけてうっかりお宿をぺしゃんこにしたぐらいなのに~」


 褐色の肌に鈍い銀色の髪の幼女。そんな見た目の声の主が、不思議そうに首をかしげる。いや寝ぼけてそんなことやらかしたらそりゃ正体もばれるだろ。


「しかしまぁ、なんというか……あんなあどけない見た目をされるとこっちとしても戦いにくいな」


 弱そうな敵であることを願ってはいたけど、もうちょっと戦うのに気が引けない見た目をしていてほしかったものだ。


 お前もそう思うだろ? と同意を求めようとエリンを見ると、どうしたというのか、顔を真っ青にしたエリンが口をパクパクとさせながら恐る恐る喋り出した。


「ひ、ヒキガネさん……見た目に騙されちゃいけません……! チュートリアルがどうとか、幼女がどうとか、そんなこと言ってる場合じゃないです……!」


「お、おい、まさかとは思うが……強いのか?」



「――ん~? おお! 人間と女神の二人~、言われてた奴だな~。うっしっし~、み~つけた~~!」



「あれは――彼女は、ポポ・グラン・デウスディル……強いなんてどころじゃない、超怪力を持つ魔王軍幹部の一人です!」


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