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白井流

「準備はいいかしら?もう少し長く楽しませてよね?」

ララはそう言うとにじり寄ってきた。


俺は左手に小刀、右手に大刀を持ち左構えになった。

小刀をララに投げつけてひるんだ隙に一太刀入れる。

だが、そのタイミングを計らなければ不発に終わってしまう。

俺はしっぽの射程距離ギリギリのところで待ちの姿勢を取った。


ララのしっぽ攻撃をかわしつつ大小で斬りつけ続けた。刃引きした刀ではあるが

手首を極めて腰を落とす引き斬る斬り方ではないがちくちくきざんでいくので

ダメージは期待していない。だが、相手を焦らすには効果的だったようだ。


「じれったいねえ」

そう言うとこちらに猛スピードで向かって来た。


この姿勢を待っていた。これなら急にしっぽで攻撃を受けることはないはずだ。

俺も相手の懐に飛び込みつつ牽制で小刀を投げつけた。


「残念。そんなことはお見通しだよ(笑)」

そう言うと蛇が鎌首を持ち上げるがごとく胴体を持ち上げた。


俺はあっけにとられ完全にララを見失った。


「上ががら空きだよ!」

頭上からララの攻撃が迫ってくる。


咄嗟に刀を頭上に垂直に立てて腰を落とした。


ブスッ


当たりは鈍く突き抜けると抵抗なくするりと突き刺さる感覚とララの悲鳴が

聞こえた。滴り落ちる血が剣先から頭上に降りてきた。


もだえ苦しむララに教授とヒーラーが駆け付け治療を施した。

刃引きしていても突きは簡単に刺さってしまう。刃の入っていない居合刀でも突きはやばい。


「すまない」

ララに声をかけながら俺は全く対処できなかった状況を反芻していた。


完全に読まれていた・・・。

咄嗟に出た白井流の上段の構えがたまたま状況にかみ合ったに過ぎない。

これでは勝ったとは言えない。


「やはり対人剣術では魔族とは戦えないのか」

闘技大会まで日にちがないので今から弓や槍を学ぶ時間もない。


「いたた・・・。ふう、傷はふさがったようね」

ララが起き上がりこちらに視線を向けた。


「やるじゃないか。見直したよ。」


「刺してしまい申し訳ない」


「いいよ、アタシも絞めたり毒漬けにしたし。

これで戦える自信はついたかい?」


「いや。これじゃだめだ。偶然に頼っては生き残れない」


「そうかい。アタシはもうやらないからね。こんな痛い思いはごめんだね。

他の奴をあてがってもらな」

そう言うと教授の制止も聞かずその場を立ち去って行った。


「ララを突き刺したあの異様な構えはあれも異世界の技なのかね?」


「あれは白井流という流派の構えです。幕末最強の評価もありますが、創始者の白井亨自身が出世欲がなかったのでためあまり残っていない剣術です。幕末といってもらわからないと思いますが」


「よくわからないがそうなのか。

しかし、ああいう風に私の大切な魔族たちを傷つけられてはたまらないな」

教授は不快そうな表情でこう答えた。


「すみません。そんなつもりはなかったのですが」


「マリーの紹介だから便宜を図ったがもう実戦形式は辞めにしてもらう。ここには魔族に関する文献が数多くあるので座学なら協力しよう」


俺もララに殺されかけたのに、と言ってしまいそうだがそこを堪えて座学を承諾した。

ところでマリーもあの二人もここにいないようだがどこにいったのだろう?


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