一抹の不安
翌日、訓練場に入るとヒーラーが昨日よりも多くいることに違和感を感じた。
「今日の相手はやばいやつなのかなあ」
俺がそうつぶやくと
「今日の相手はラミア族だよ」
教授が近づきながら答えた。
「昨日のワーウルフはどうだったかね?」
「そうですね、魔族との戦い方の認識を改めました」
「それはよかった。ぶっつけ本番だと1分ももたなかっただろう。人の身で魔族と渡り合うのは大変だということが分かれば瞬殺はされないだろう」
雑談もそそこに俺は本題に入った。
「今日はラミア族とおっしゃりましたがラミアというと上半身が人間の女性で下半身が蛇のラミアですか?」
「そのとおり。詳しいね」
「はい。元の世界のファンタジー系の物語に出てくる魔族と同じかなと」
「ふむ。それは非常に興味深いねえ。はるか昔にこちらの世界を覗いた人物がそっちの世界で広めたのか、それともそちらの世界の空想がこちらの世界に影響しているのか。専門外だがおもしろそうなテーマではあるな」
教授はひげを触りながらそう答えた。
そういえば女性3人が今日はいないな。
「マリーと部下2人がまだ来ていないようですが」
「ああ、あの2人にはマリー嬢が別の稽古をつけるそうだ」
「そうですか。わかりました。話をもとに戻しますがラミア族はヒーラーを増やさないといけないほどにやばい奴なのですか?」
教授はにんまりして
「今日からが本番だよ。非人型魔族向けの有効な戦術はこちらとしても研究が尽きない課題だ。即死しなければなんとかなるから思う存分楽しんでくれたまえ」
と応じた。
そんなやり取りをしていると訓練場にラミアが入ってきた。漫画などで目にする愛らしいラミアを期待していたがそんな期待はもろくも打ち砕かれた。上半身の人間部分も蛇の要素が腕や目に出ていてちょっと「なし」な感じのほか、剣と盾を持ち、軽装ではあるが甲冑を身に着けていた。
しっぽで巻き付けられ首をはねられる、そんな結末が容易に想像できた。
「これはやっかいだな」
俺は戦う前から相当の痛手を覚悟せざるを得なかった。




