挫折
「さて、大会まであまり日にちがないので浅田君は日替わりで異なる種族と戦闘訓練を受けてもらう。彼らには「本気」で戦ってもらうが頭と心臓は外すように言ってある。即死しなければヒーラーが治してくれるから心配せずに戦い方を学んでくれたまえ」
教授は笑顔でそう言ったがつまりは備えがなければ即死するということだろう。
「ゴブリンやオークは倒したことがあるがワーウルフはそんなに強いのか?」
俺は思わず聞いてしまった。
「おっと失礼。他意はないんだ。選択の島で戦えたから、つまりはそんなに違うのかと・・・」
同族のブブとボブがいるので気分を害さないように弁明したが
「いえ、お気遣い無用ですよ、浅田さん」
と意にかいしていなようだった。
「君の戦歴は聞いているが地形を利用した戦い方では本当の実力は測れない。この子達はそこらの野良オークや野良ゴブリンよりもはるかに賢いから今の君では勝てんよ」
教授は俺を見くびっているようでその物言いに少し腹が立った。
「ごちゃごちゃ言っていないでさっさとやろうぜ人間」
しびれを切らしたワーウルフが割って入ってきた。
「俺はこいつらよりもはるかに強いから俺に勝てればこいつらよりも強い照明になるだろう?大体オーク・ゴブリンは闘技大会では前座でしかないからな」
「ま、野良ならそうでしょう。でも僕らならアイン、君に簡単に負けはしないよ」
ボブが反論をした。
アインが骨付き肉を床に投げ捨て
「いいぜ、人間の前にお前らとやるか?」
「やめんか、バカ者ども!浅田君、早く支度してくれ」
俺は教授にせかされて装備を身に着けた。ワーウルフはファンタジーものだとパワーとスピードに長けたイメージなので速度重視で軽装の防具を選んだ。
俺とアインが小闘技場の中央で向き合い、戦闘開始の銅鑼を待っている。
「ドワーン」
銅鑼の音が鳴り響くとアインがいきなり突進してきた。その速度は人間では出せない踏み込みだった。
「速い!」
俺はアインの突進をかわし切れなかった。正眼の構えのままもろに突進を受け数メートル突き飛ばされて地面に倒れてしまった。
「はやく立てよ人間」
アインは追撃をしないでこちらが立ち上がるのを待っていた。
気を取り直して立ち上がり、低い正眼の構えをとり、初動を見逃さないように視界を広くとった。
今度はアインの初動を見逃さず突進を横にかわした。そのまま振り返りアインを追うが既にそこにはおらず縦横無尽に足音が聞こえるが姿をとらえることができなかった。
「こんなにも速いのか!」
俺はアインの姿をとらえることができず死角から攻撃を受け続けた。遂には地面に大の字に倒れてしまった。
なるほど。確かに魔族の身体能力を考慮していなかった。人型でも人間よりも動きが速いとこれほどまでに戦いにならないとはな。構えは防御も兼ねているがそれをお構いなしに突進してきて、その突進力に腕の伸びを維持できず腕はたわみはじかれてしまう。これでは斬ることができない。
「あはははは・・・」
もう笑うしかなかった。あいつらの言いぐさはもっともだった。
「ちくしょう。だが思い通りにはならねえぜ。思い出せ。今まで学んだ技でなにかヒントがあるはずだ」
俺は対抗策を必死で思い出そうとしていた。




