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戦争の動機

ダーウィン伯爵領攻防戦から1週間が経った。俺たちは今帝都の軍事小法廷でハインツ軍務大臣を待っている。ダーウィン伯爵領は今も戦闘が続いているがこの一週間で俺たちの立場が激変した。俺が遭遇したサイボーグの伝言と渡された部隊章をビッグス大尉に託したところ、数日後俺たちは憲兵に逮捕され帝都に連行された。のちに合流した佳子、茜ににサイボーグのことを話したばかりに彼女たちもここにいる。一緒に戦ったマリーは逮捕ではなく出頭要請を受けたとのことだ。フレデリックの行方はわからない。治癒魔法でも欠損した部位の再生は出来ないらしいので負傷兵として後方送りか除隊になっていることを願うばかりだ。


しかし。俺たちが今後どのような目にあうのか全く想像ができない。

あのサイボーグの存在を国は知っていたのか?

奴の話した「計画」とはなにか?


予測のつかない状況に俺を含め皆沈黙していた。佳子は不安な表情をうかべ、茜は険しい表情をしている。

マリーだけが何事もないように髪をいじっていた。不意に俺とマリーの目があうと


「心配しなさんな。あの機械人間とよく戦ったことを証言してやるからさ」

と励ましてくれた。


しばらくすると前方の扉が開き数名の男たちが入ってきた。周りの兵士が敬礼するので俺たちも敬礼した。


壇上の裁判官席に座った口ひげを蓄えた男が話始めた。


「ダーウィン伯爵領攻防戦からの帰還ご苦労であった。ハインツである」


俺たちは再び敬礼をした。

ハインツが着席を促したので俺たちは着席した。


秘書官がハインツに資料を渡すと資料をペラペラとめくり

「やれやれ、お互いにとんだ災難だな。浅田特任戦奴隷に質問する」


「は!」


「君がこのクルーガーと名乗る機械人間、君はサイボーグと呼んでいるがこの者と遭遇したことに間違いないか」


「はい」


俺はそのときの状況を詳しく説明した。


「その男が指名したジョージ軍務大臣は約80年前の軍務大臣だ。すでに亡くなっている」


「では計画とは?なぜ俺たちが逮捕されたのですか?」


「うむ、それについて可能な範囲で説明しよう」


ハインツ軍務大臣から語られた内容は信じがたいものだった。


・100年ほど前に機械の体を持った異世界人5人が現れた。

・この世界は彼らの世界と比べて1200年ほど科学技術が遅れている。

・彼らの機械の体の維持と元の世界に戻るためにはこの世界の科学技術を急激に発展させる必要がある。

・戦争は科学技術の急速な発展を促すため彼らは人間側と魔族側に別れ人間対魔族の戦争をけしかけた。

・帝国が異世界人を召喚しているのは異世界人が持つ科学技術の習得と彼らが身に着けている電子機器の取得が目的。

・帝国が望む知識や技術を持たない利用価値のない異世界一般人は奴隷か戦奴として活用する。


俺たちは絶句した。人間側も魔族側もあのサイボーグたちの自己都合で戦争に巻き込まれているだけということだ。そんなことのためにこの世界の人間や魔族はやる必要のない戦争で死に、俺たち異世界人は召喚され続けていると。


だがここでいくつかの疑問が生じる。


「帝国も奴らサイボーグの手先ということか?奴らの目的を知ったうえで協力しているのか?」

俺は声を荒げて軍務大臣に詰め寄った。


「半分正解で半分間違いだ。機械人間たちの企みに気づいたのは60年ほど前だと聞いている。

人間側にいる2体の機械人間を拘束し、ある場所に幽閉している。1体はすでに死んでいるがその部品を使いもう1体はまだ生きている」


「ではなぜ・・・」


「奴らの企みが露見したとなれば魔族側の機械人間がどのような行動にでてくるのか予測ができない。しかし、計画通りだと思わせている間はこちらが全滅するような全面戦争にはならないだろう。奴らの裏をかき、魔族ごと殲滅する兵器を開発することが当面の目的だ」


「それはまさか・・・」


「君たちの世界では核兵器と呼ばれているものだ」


正直核兵器と言われてもピンと来ないが人類最強最悪の兵器をこっちの世界でも作ろうとしていうやばさはわかる。

だが、俺に、俺たちにはどうすることもできない。サラリーマンと女子高生、ヤンキー少女で何ができる?


もうひとつ疑問がある。元の世界に戻れるかどうかだ。招待所では元の世界も戻れる可能性を示されていたが奴らが現在も戻れていないということはその仕組みが出来ていないということだろうか?それとも俺たちの時代にしか戻せないということだろうか?

「もう一つ質問が・・・」


「さて、君たちの処遇だが、このことを知った以上原隊に戻すわけにはいかない。ビッグス大尉から「有望な部下だから消すのはやめてほしい」と嘆願もあったからな。追って正式な通達を出すが君ら3人は戦奴身分を解き、軍務大臣付とし軍務省関連施設で待機してもらう」

と俺の言葉を遮った。


「戦奴っていうか奴隷身分じゃなくなるの?」

「自由になるか?おっさんサンキュー!」

佳子と茜が色めきだった。


「軍務大臣付は奴隷身分ではなれなから一時的だがな。さて、マリーよ。お前はどうする?原隊にもどるかね?」


「そうね。少し休みたいからこの人らと同じところに回してもらえるかしら?」


「わかった。手配しよう。弟によろしくな」


「ありがとう、おじさん」

マリーの父親はハインツ国務大臣の姪だったようだ。


俺たちは一時的とは言え自由市民となったがそれは名ばかりで事実上の軟禁だった。


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