異世界の戦い3
爆風で前方がはっきり見えないが手ごたえは充分だ。
「やったか?」
「あたしの全力だ。欠片だってのこりゃしないさ」
マリーは肩で息しながら答えた。
「もう魔力の限界!」
そう言うとへたり込んでしまった。
「魔術の使えない我々にはわからないが体力の限界と同じ感覚らしいよ」
フレデリックが言う。
「さあマリー殿、手を貸しますよ」
フレデリックがマリーを起こそうと手を伸ばす。
マリーがフレデリックの手をつかもうとした瞬間、フレデリックの腕が血を吹き宙にちぎれ飛んだ。
フレデリックが悲鳴を上げる。
上から何かの攻撃を受けたように見えたので俺は上を見上げた。
そこには先ほどのローブ姿の何者かが宙に浮かんでいた。
「ガーッデム!!」
そう叫ぶとそいつはに降りてきた。
するとそいつは英語でなにかを話ながらこちらに近づいてきた。
おれは思わず
「I can not speak English.」
と無意識に言ってしまった。
そいつは
北京語、韓国語、日本語の順で話してきた。北京語と韓国語はわからないが「おまえはどこから来た?」の問いはわかったので「東京から来た」と答えた。するとそれ以降は日本語を話しだした。
「ふん、日本人か。お前は何年から来た?」
「2020年からだ」
「2020年だと?2200年じゃないのか。ふざけるなよてめー。全然すすんでないじゃないか!」
奴がなにに怒りなんのことを言っているのかまったくわからなかった。得体のしれない奴だが会話とつないでフレデリックとマリーから意識をそらしてこちらに注意を向けさせなければいけない。幸いにもフレデリックは失血で意識を失ったようでおとなしくなった。マリーが死力を振り絞り腕をおさえてくれているのが見える。
俺は会話を続けることにした。
「なあ、何のことを言っているんだ。俺は2020年から突然この世界に召喚されて戦奴をやらされれいる。地球人の大量召喚となにか関係があるのか?」
「うるせーよ。地球人の大量召喚?そんなの必要な人材を召喚したいからに決まっているだろう。そのためには100万でも200万でも1000万でも召喚するさ。奴隷はすべて「ハズレ」の再利用にすぎない」
やはりな。魔族との戦いで兵力不足という割には戦奴の比率が圧倒的に少なすぎることに違和感は感じていた。なにか別の目的があったのではないかと思っていた。
「その必要な人材とは?地球の科学技術が欲しいのか?」
「うるせーっていってんだろ!ハズレに教える必要はない。
それよりも俺はその魔導士のクソのような攻撃で貴重なエネルギーを使う羽目になった。お前らろ殺さねーと気がおさまらねー」
そう言うと剣を抜いた。
剣で戦うのであればむしろありがたい。だが、フレデリックの腕を斬り飛ばした仕掛けがわからない。単純に剣で戦う相手ではない。
俺はショートソードを右半身で構えた。
ローブの男は剣を構えたまま動かない。俺も正直こちらから仕掛けることに慣れていない。ましてや得意ではない小刀だ。しかし、相手が動かない以上こちらから仕掛けるしかない。俺は構えたまま距離を詰めていった。
一足一刀の間(お互いが1歩踏む込むことでで刀が届く距離)まで近づくとローブの男はたまらず攻撃を仕掛けてきた。俺は相手が振り下ろす剣のタイミングに合わせ踏み込み、相手の右前腕に自分の右前腕を当て横に押し込み剣の軌道をずらしながら相手の首筋に剣を当てた。日本刀なら片刃なので左手を棟(峰)に当て相手の頸動脈を押し引き斬れるのだがショートソードは両刃なので相手の左側頭部に手を当て刃を密着させ押し引き斬った。まさに型通り、手本のような流れだった。しかし刃から伝わる違和感に思わず飛び退いた。
「なかなかやるじゃないか。お前はサムライか?」
切れたローブから金属が見える。甲冑を着こんでいたのか?
「邪魔くせーな」
男はローブをローブを脱ぎ捨てた。そこには人でも魔物でもない、映画に出てきそうな顔だけ人間で体は機械のサイボーグのような姿があった。表面はかなり傷つきかなりの年数が経っていそうな様子だった。
「さあ、続けようぜサムライ」
そいうとまた剣を構えた。
俺の頭の中はパニック状態だった。
異世界にサイボーグ?
2200年?
必要な人材?
奴は地球の言葉をしゃべっているから我々よりも未来の「人間」なのか?なぜ?
考える間もなくしばらくこのサイボーグとの攻防が続いた。奴の攻撃を受け流し斬りこむが刃が入らない。装甲の隙間や関節を狙うも微妙にずらされうまく入らない。かなり戦闘慣れしてるようだ。
このままではやられる。俺はいったん距離を取ることにした。
「どうしたサムライ。もう終わりか?」
ショートソードでは致命傷を与えられない。なら奴の剣を奪い装甲の隙間に刺し込むしかない。
「これが最後だ。決着を着けよう。俺が勝ったら質問に答えてもう」
息絶え絶えで奥の手を匂わした。
「殺しはしない。俺が勝ったら腹切りショーをやってもらおう」
サイボーグはディステックな笑みを浮かべた。
「影山流の伝書で腹切りの作法を学んでいるから立派に死んでやるさ」
もちろん本心ではない。
俺はショートソードを相手目掛けて投げつけた。奴はそれを払い落とすと勝利の笑みを浮かべ上段から斬りかかってきた。
俺は振り下ろされた剣の横を叩き軌道をずらし横で剣を両手で挟み込んだ。白刃取りのように手を合わせる挟み込みではなく、剣の上下で抑える挟み方だ。この状態で剣を引き抜くと簡単に相手から奪うことができる。剣の握りは引く力に弱いのだ。
その勢いで剣を持ち替え、関節の隙間を狙い、右肩から右腕を斬り落とした。
いける!このまま首を・・・
だが、それは甘い考えだった。近距離で放たれた電撃で全身がしびれ俺は力なく地面に崩れ落ちた。
「やれやれ。省エネで戦うとろくなことにならねーな。勝てると思った?残ねーん!無理でした♪。
生身で善戦したお前らは今回は生かしておいてやるよ。その代わりジョージ軍務大臣に伝言を頼む。
時間がない、計画通りにしろ。とな」
苦痛にゆがむ俺の顔を覗き込み
「俺はクルーガーだ。手土産にこれをやる。ジョージに渡せ」
そう言いうと古びた軍の部隊章のようなものを渡し、俺が切断した腕を拾い空間に姿を消した。
「光学迷彩かよ・・・」
俺は意識を失った。




