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降下作戦

「ご苦労!」

大尉が俺の肩を叩きながらねぎらいの言葉をかけてきた。


「いきなりの無茶ぶりはありませんよ。袋竹刀まで用意して。よくこんなものがありましたね。


「彼女はな、鼻っ柱が強くてどこの部隊でもなじめなくてな。だが腕は立つからけしかけてみたのだよ。君は期待通りの結果を出してくれた。3人目も期待してくれたまえ!」


「まったく、普通の奴をあてがってくださいよ」


そんなたわいもない会話をしばらく続けた後、急に大尉は真剣な顔になり、

「まもなくダーウィン領に到着する。ここからが本当の戦場だ。手柄よりもまずは生き残れ。そして部下を一人も死なせるな」


「はい」


「では作戦説明にはいる」


俺は部下2人と合流しブリーフィングに臨んだ。


「帝国軍兵士、戦奴の諸君!これよりダーウィン駐屯軍救援のため作戦を説明する!」

「飛龍705 706は敵後方にゴンドラごと降下、一斉に飛び出し敵を背後から攻撃する。我々の飛龍707は上空100mまで降下したのち、各個防戦中の味方部隊に直接降下、救援にあたってもらう。以上だ」


えっこれだけ?作戦らしい作戦がないじゃないか。しかし、周りの兵士、戦奴は疑問ももたず装備を受領し支度をしている。俺は近場にいた兵士に話しかけた。


「なあ、この部隊はいつもこんな感じの作戦なのか?」


「ああ、ビッグス大尉はいつもあんな感じだ。全体の作戦よりも個々の能力を重視しているから細かな指示は出さないのさ」


「おまえは噂の新人特任だろ?そのうち大尉のお考えもわかるようになるさ。時間だ。初陣がんばれよ」


ゴンドラ後方扉が開き船内に風が吹き込んできた。俺たちは自分の順番を待っている。俺は高所恐怖症ではないがスカイダイビングなどやったことはないのでとても不安だ。そもそもどうやって降下するのか説明がない。


「白井、木村、大丈夫か?」

白井も木村も青ざめている。


「無理無理できません!」

半泣きで柱にしがみついている。


「人間は空を飛ぶようにできてないんだからこんなことやらせるなよ」

震える声で悪態をついていた。


「佳子!茜!少しでいいから勇気を出してくれ!俺は決して君たちを見捨てない。だから俺と一緒に来てくれ!」


「先生がそこまで言うなら・・」


「負けた男にこれ以上無様な姿は見せられないな」


あえて名前を呼んで真剣に諭したのがよかったのか2人は震えながらも降下デッキまで進んでくれた。


まずは俺が手本を見せるべきだろう。


「パラシュートを頼む」


「はっ?何言っている。そんなものはない」


「えっ?降下するだろ。生身で飛べと?」


「ああ、お前新人か。ほら。こいつで飛ぶんだよ」

そういうと降下補助の兵士からかわいらしい飛龍の子供が渡された。


「飛龍の子供は人間一人を持ち上げる力はないが降下速度を緩やかにするくらいの羽ばたきはできる。足を絶対離すなよ!」


「えっちょっと待って」


「降下!降下!」


ゴンドラから落ちる間際に佳子と茜が卒倒する姿が見えた。

気絶したものを無理やり落とされることはないだろう、多分。


飛龍の子供は必至に羽ばたいている。だが落下速度はあまり落ちない。


「助けてくれー」


「うわー」


飛龍から手を放して落ちている者たちの断末魔が聞こえる。


「降りられるのかよ!」

俺は思わずあの名セリフを叫んでいた。


徐々に飛龍の羽ばたきで速度が落ちていくのを感じた。


「よかった。本当によかった」

俺は涙目になっていた。だが、両手がふさがっているので涙を拭けない。それどころか眼下にはジャイアトトロールと戦う戦奴と魔導士の小隊が見えていた。最悪の初降下だ。

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