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魔神の下で勇者を目指してみた結果。  作者: 風遊ひばり
第四章 エクレシアス聖国編
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85 女神の疑問

話のプロットが全然進んでいないため、なかなか更新できずにいます。すみません。

「貴方達二人は、この世界がどこか歪だと感じたことはありませんか?」



突然、そんな質問を投げかけられたディエスとロゼは、どう答えていいか分からずに呆然となる。そんな二人の様子を、話を聞く気がある、と判断したのだろう。アイリーンは更に言葉を繋げた。



「ロゼさんはゼクセクスから、ディエスさんはエスフォリーナから、『勇者になるように』と聞かせれているはずです」

「確かにそうですね」

「では『勇者』となって誰を倒すのです?」

「それは……『ゲーム』と称してこの世界を支配しているゼクセクスを倒すものだと思っていますが……」


「確かに、悪魔である彼を倒すという目的は間違っていないでしょう。しかし……それでは彼自身も勇者を育てる理由が分かりません。それに、彼が国を治めてから、人類が随分発展したことも事実なのです」



アイリーンによると、およそ二千年前。

この世界に最初の魔神であるゼクセクスが誕生し、無人の土地に国を造り出したのだと言う。


強大な悪魔ということでアイリーンとゼクセクスは幾度となく戦闘を繰り広げたのだが、結局決着は付かず、いつの日か戦闘ではなく『監視』という形でゼクセクスを牽制し続け今に至るという訳だ。



「二千年も彼を見てきました。はっきり言ってしまえば、未だに彼の考えが分かりません。なぜ、国同士の支持と敵対を決めるでしょうか。なぜ、戦う相手もいないのに『勇者』を育てるのでしょうか。例え正体不明の敵がいたとしても、『勇者』より私やゼクセクスが戦った方がよっぽど合理的です」



「確かに……」

「私も疑問に思って聞いてみたのですが……何も答えてくれませんでしたわ」



ロゼの言葉にアイリーンが僅かに眉をよせる。

ゼクセクスに最も近いロゼでさえ何も情報がなく、期待が外れたのだろう。



「ゼクセクスは動機不明なことばかりを行っていますが、その反面人類の文明が発展していることも事実。……私には、ゼクセクスが人類を脅かす敵に見えないのです」

「随分優しいことを言ってくれるな?アイリーン」



アイリーンの背後からそう声が聞こえてくると同時に、どこまでも黒く深い魔力が部屋を駆け抜けた。

忘れもしない、『宴』の日。

物理的圧力さえ持っているかのような暴力的な大魔力。


ゼクセクスがこの場に現れたのだ。



相変わらずローブを頭からかぶっていて顔は一切見えないが、その魔力を間違えるはずもない。

ディエスだけでなくロゼまで気圧されて動けないでいると、アイリーンが怒り半分、驚愕半分といった顔でゼクセクスを睨みつけた。



「貴方……何をしに来たのです!?ここには結界も貼ってあったはず……!」

「なんだ、自分の娘の顔を見に来るのもダメなのか?」



アイリーンを全く意に介していない様子のゼクセクスはおもむろにロゼに近寄ると、優し気な手つきで頭に手を置いて声をかけた。



「すまなかったな。タナトスの洗脳に関しては、俺の想定外だった」

「お父……様……?」

「お前はしばらく休息するといい。この男についていけ」



そんなことを言うゼクセクスは、おそらくローブに隠れた目をこちらに向けた……のだと思う。それだけで、背中にゾクリと冷たいものが這ったような感覚に陥った。



「それはいいのですが……」

「ちょうど良かったです、ゼクセクス。この際私の国に不法な侵入をしたことは大目に見ましょう。それで、さっきまでの会話を聞いていたのですね?貴方の心積もり、教えてくださいますか?」

「まだその時ではないから教えるつもりはないが……そうだな、お前が俺に協力するというのなら教えてやってもいいぞ?アイリーン

「誰が悪魔に協力など……!」

「ふん……お前の協力があると色々と助かるのだがな……まぁいい」



嫌悪するような視線を向けるアイリーンを軽くあしらい、ゼクセクスは自分の背後に椅子を出現させてそこに座った。



「ロゼ、身体の調子はどうだ?」

「え?ううん、洗脳も解けたしアルテマの呪いも無くなったし、身体の調子はいいけど……」

「ふむ……アルテマを倒した時、お前は魔法に目覚めたようだが……」

「そうなの!お父様に教えてもらって、初めて使えたんだけど……なぜか今は使えないのよね」



ロゼが腰に提げた剣を抜き放ち、その刀身に目をやる。

そこには、アルテマを倒した時のような眩い光は無く、鏡のような美しい刀身を見せるだけである。



「実際は、あれはお前の魔法ではなく、その剣に刻まれた魔法だ」

「え、そうだったのですか?」



ゼクセクスの言葉に、ロゼがキョトンとした表情をした。

ディエスも『剣に刻まれた魔法』と聞いて首を傾げる。



「ゼクセクス、彼女に教えていないのですか?この剣は、ビュトスの……」

「そうだ。かつて『真なる勇者』と呼ばれていたビュトス・ソフィアーの魂が宿った、まさに神剣だ」



ゼクセクスによると、この世界には伝説に残っている剣は幾つかある。

例えば、世界のどこかで使い手を待っているとされている『聖剣エクスカリバー』や、かつてビュトスが魔神を討つのに使用したと言われる『神剣アルマデウス』など。


しかし、伝説にも残っていない、さらに強力な剣も存在している。

それが、ディエスの持つ名もなき宝剣と、ロゼの持つ『神剣ビュトス』である。



武器の強さというのは、使用されている材料の強さに大きく左右される。

この世界で最も魔力の密度が高い鉱物は『ヒヒイロカネ』であり、それについで『アダマンタイト』、『ダマスカス鋼』、『オリハルコン』と続いていく。


そのため、純ヒヒイロカネの剣を作れば最強の剣が出来上がる……という訳ではない。



それは『魔力共鳴』という現象があるからだ。

『魔力共鳴』とは、波長の合った魔力や魔導が威力を高め合う現象である。

ディエスも二重魔導陣で頻繁に使用している技術である。


つまり、ヒヒイロカネのみで作った武器より、ヒヒイロカネとアダマンタイトの合金の方が『魔力共鳴』によって強力になったりするのだ。


これらの鉱物は産地によって微妙に魔力の波長が異なるため、ちょうどいい組成は決まっていない。

何種類の鉱物をどんな混合割合で合金にすれば、最も力を発揮するかを見極めるのは鍛冶師の腕による。


また、強く複雑な魔力の波長を持つ武器ほど、波長の合う使い手も限られる。

魔力の合わない者が使用すれば逆に弱くなってしまうが、魔力が合う者であればさらに力を引き出すことが可能となる。


『武器が使用者を選ぶ』というのは、こういうところからきているようだ。



であれば、ヒヒイロカネとアダマンタイトの合金を基本とし、魔神グリムガルの鱗、(・・・・・・・・・)、|魔神エスフォリーナの・・・・・・・・・・・魔神ゼクセクスの爪(・・・・・・・・・)を使用したディエスの宝剣は、一体どれほどの魔力を秘めているのだろうか。


また、異なるアプローチではあるが、ロゼも剣も似たような物である。

ロゼの剣には、『真なる勇者ビュトス』の魂がそのまま宿っており、使用者にビュトスの魔法、『勝利ザ・ビクトリー』を与える最強の剣である。



「まぁ、ロゼはまだ使いこなしていないようだが」

「そうですか……では私の魔法は……」

「さぁな……。まぁある程度の見当は付いているが……」



ゼクセクスはそう言うと、ロゼに剣を収めさせて頭に手を置く。



「もしその剣を使いこなしたいと思うのなら、まずはゴッドセレスに剣を習え」

「またゴッドセレスさんの名前が出てくるのね……」

「あいつは俺がビュトスに次いで唯一認めている剣士だからな。それだけアドバイスをしておく。あとは好きにするといい」



ゼクセクスはそれだけ言い残すと、『転移魔導』によって完全に姿を消してしまった。

空気がフッと軽くなり、ドッと疲れを感じるディエス。

それはアイリーンも同じだったようで、はぁっと息を漏らして項垂れた。



「……彼の企みに関しては、後日彼に直接聞きに行くとしましょう。では、今日の所は、お二人も帰って休みなさい」

「そうですね……はい、ありがとうございました」



ディエスとロゼは、優し気な微笑みを湛えるアイリーンに見送られつつ、その部屋を後にした。




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