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魔神の下で勇者を目指してみた結果。  作者: 風遊ひばり
第四章 エクレシアス聖国編
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82 習得に向けて

しばらく更新止まっていてすみません。

また読んでいただけたらと思います。

「クロム様、私に召喚術を教えてください」

「いえ、クロム様。まずは私に……」

「私も精霊の召喚ができます。ぜひクロム様に御覧なって欲しいのです」



アスターとの一件でクロムの桁外れの実力が明らかとなり、一日経った頃には聖神学院の生徒達にすっかり認められていた。


そんなクロムは聖神学院の女生徒の多くに囲まれて、困った表情で対応している。ディエスはクロムの人気ぶりを眺めつつ、魔導陣に込めていた魔力を止めてフゥッと息を吐いた。



ディエス達は今、マルフィの指導の下『召喚魔導』の実践に取り掛かっており、召喚術の習得を目指すほかの生徒達と共に闘技場に来ている。


生徒の中には既に召喚を行える生徒もいるため、そういった生徒には、マルフィの指名によりクロムが教師代理となって『憑依』や『同化』を教えていた。



「クロムさんは流石一位というべきですね。召喚術をここまで使いこなすとは……召喚術コースの一位の生徒と比べても遜色ありません」


「召喚術コースの一位ですか、一体どんな……」


「先生、少し質問が……」


「噂をすれば、アリシアさん。何でしょうか?」



ディエスが休憩がてらマルフィと会話を交わしていると、一人の女性が近寄ってきた。水色の髪を背中まで下ろし、清楚な感じの綺麗な女性だ。



「水属性の聖霊を召喚する場合なのですが、この部分の文字を……」


「ふむ、それでしたら……」



召喚術に関する知識はそれほど深くないので、アリシアと呼ばれた女性をぼんやりと眺めていた。『魔力探知』によって見られる魔力は非常に純粋で、召喚術に向いているのだろう。


どんな聖霊が居るのだろうか……


そんなことを考えていると、ふとアリシアがディエスへと目を向けた。



「あなた達、エーデリット騎士官学校の生徒でしたのね」


「え?あ、はい、ディエス・エーデルリッターです」


「はじめまして、アリシアと言います。研修ということですので、私にできることであれば何でも言ってくださいね」


「ありがとうございます。……と言っても、まず召喚すらできていませんけど」



苦笑いで答えるディエス。周りではロゼ、アリゼ、リーリエの三人が聖霊召喚に四苦八苦しており、レヴァルにいたっては魔力の精練から開始していた。


ちなみに、アランも結構苦戦しているようだ。悪魔であるザミエルの魔力が聖霊召喚の邪魔をしているのだろう。



ディエスもそうだが、魔導陣が完成できても呼び出しに応じる聖霊がおらず、召喚ができないでいる。それを踏まえると、息をするように召喚をこなすクロムはやはり頭一つ跳び抜けている。



「確かに、呼び出すところが最も苦労しますからね」


「……皆さん、長時間続けても集中力が下がりますし、少し休憩しましょう。その後、魔力を精練するところからやってみましょうか」



聖霊の召喚まで至らない状況を見て、マルフィがそう提案する。集中し続けていた疲れもあって、負けず嫌いな一面もあるアリゼやリーリエも渋々といった様子でそれに従った。



「ところでアリシアさん、『召喚術』っていくつも種類があるものなのですか?」



魔力の回復を促すポーションを飲みながら、ディエスが素朴な疑問を口にした。



「えぇ、もちろん。一般的に召喚と言えば聖霊や悪魔を想像する人が多いですが、他の五属性にも聖霊が存在しており、属性を変換することによって召喚が可能となります」



アリシアの返答にディエスはアスターの召喚獣を思い出す。確かクロムも言っていたので、サラマンダーは火の聖霊なのだろう。



「聖霊にも強さの階級があり、使用する魔力が多いほど強力なものを召喚できます。また、聖霊との信頼関係が強いほど、召喚に使う魔力も少なくて済みます。クロムさんを見ると、よほど聖霊に信頼されているのでしょう」


「確かに、クロム先輩は召喚してもあんまり魔力を消費してなさそうですもんね」


「えぇ。あれほど聖霊に好かれるのも珍しい」



チラッとクロムに視線を向けると、十二体の聖霊騎士を全て召喚し、自分も含めて十三人体制で指南に当たるクロムの姿があった。


それだけの聖霊を同時に召喚する魔力はもちろんのこと、一体一体が持つ強さにも驚愕したのか、マルフィも『マジですか……』と素が出ている。



「あんなの見せられたら、逆にやる気無くなるわね……」

「召喚自体難しいのに、複数同時なんて無理なのです」

「リーリエでもダメか」


「うーん、他に方法がないわけではありませんが……」



そんなことを言うマルフィに三人の視線が集まる。



「『代償召喚』という召喚術があります。魔力以外の何かを代償にすることで、強力な召喚獣を呼び出す方法です」



簡単に言えば、生贄いけにえということだ。グラシエルがアルテマの封印を解いた際に使った魔導も『代償召喚』の一種であり、生物の魂や魔力の籠った物体を消費して召喚を行うのが『代償召喚』である。


例えば、魔物から取れた魔石や素材を消費してより強力な聖霊を呼び出したり、契約済みの聖霊を強化したりと、様々な有用性がある。


しかし魔王の復活がそうであるように、特に人の命代償に召喚する『代償召喚』は、全国的に禁忌とされている。



「このままなかなか召喚できないようなら、適当な素材を使って『代償召喚』も試してみましょう」


「分かりました」



とその時、ディエスの後方でパァッと光が弾け、同時に嬉しそうな声が響いた。声の主はロゼだ。



「ディエス、見て!召喚できたわ!」



子供のようにはしゃぐロゼの両手に包まれ、小さな白い球体が光を放っていた。クロムの聖霊騎士とは大きく異なる見た目だが、これもれっきとした聖霊だ。



「流石ロゼ、こんなに早く召喚できるなんて」


「そうですね、一日目にして聖霊を呼び出すなんて、素晴らしい才能をお持ちです」



ディエスとマルフィに口々に褒められ、照れたようにはにかむロゼ。

そんなロゼを、アリゼは少し頬を膨らませて見つめていた。


ギルドでディエス達と合流してからというもの、ディエスとロゼのやり取りを見て何となく関係を察していたアリゼは、ロゼをライバル視していた。


ディエスと幼馴染のようだし『近づくな』とか『泥棒猫』とか言うつもりはないが、何とかディエスを振り向かせたいアリゼは、ロゼに差を付けられたようなきがしたのだ。



「む~……休憩終わり!今度こそ成功させるわ!」



気合十分に声を上げ、魔力を練り始めるアリゼ。それを見たディエスも、ロゼに触発されたのだろうと納得し魔力を練り始めた。



結局この日、アリゼは一体の聖霊を、ディエスは二体の聖霊を召喚することに成功したのだった。





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