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魔神の下で勇者を目指してみた結果。  作者: 風遊ひばり
第一章 魔神のお膝元
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9 余興

とんでもなく巨大で、深い(・・)魔力を滲ませる魔神が一人。おそらく、この男が『ゼクセクス』なのであろう。


半端に実力があるからなのか、自分とゼクセクスとの間にあるあまりにも大きい差に、ディエスは戦慄した。



もし戦うことになったとして、こいつに勝てるのか……?



「お待たせ~、待った?」



そんなディエスの内心はお構いなしに、まるで待ち合わせのカップルのような軽いノリで、躊躇いもなくゼクセクスの隣に座るフォリア。


フォリアの後について段を上がって気付いたが、フォリアがディエスを連れているように、ゼクセクスやその隣、ゼクセクスを挟んでフォリアの反対側に座る純白の翼を四枚も携えた水色髪の女性も、ディエスと近い年齢だと思われる少年を連れていた。



見た限り、ここにいるのは俺を含めて現在八人。ゼクセクス、フォリア、反対側に座る天使っぽい女性、フォリアから二つ空けて座る貴族風な衣装に身を包んで佇む二十代後半ぐらいの茶髪の男性。


そして彼らが連れている少年または少女だ。



チラリと隣に立つ――ゼクセクスが連れている――少女に目を向ける。……綺麗な人だ。以外にもその少女に対しての率直な感想は『可憐』ではなく『美麗』だった。


艶やかな黒髪を降ろし、腕や脚に最低限の防護をつけている。意外にも薄いピンクの可愛らしい服なのだが、不釣り合いの太いベルトと剣を携えている。


身に纏う『ツン多め』な雰囲気が俺にとっては逆に惹かれるのだが、そんな空気ではないので黙っていよう。俺は空気の読める男なのだ。



魔神同士、そして連れられた少年達同士、特に何も話すことなく沈黙の時が流れていた。


実際のところ、魔神は力を持つ者同士もっと殺伐として雰囲気を想像していたのだが、フォリアは緩んだ表情で欠伸を噛み殺していた。


フォリアのような美人が人前でそんなだらしない行為など、と思わなくもないが、普段通りすぎるフォリアの様子に、ディエスも緊張しなくていいのだと言外の安心を感じていた。



暫くその空気のまま待っていると、ふいに扉が開かれ金髪セミロングの小柄な女性とそのあとについて背の高い黒髪の少年が部屋に入ってきた。


頬杖をついていたフォリアはその女性を見るなり表情を綻ばせ身を乗り出して手を振った。



「セレス!待ってたわ、ゼクセクスもアイリーンも何も喋らないんだもん。空気が重くて辛かったわ」


「あはは、まあ仕方ないよねえ……。フォリアの子もあんまり喋らないのかしら?」



セレスと呼ばれた女性の、金色のクリッとした瞳がディエスを捉えた。小柄な体と澄んだ大きな瞳は後ろについている少年と同じぐらい、つまり十五歳ぐらいに見える。


しかしセレスと言う名前には聞き覚えがある。そう、『宴』とやらに参加する際、フォリアが手紙を送った相手にセレスという名があったのだ。


つまり、彼女も魔神の一人なのだ。フォリアを見て可愛らしい笑顔を見せる彼女はとても魔神には見えないが。



セレスは他の魔神に挨拶することもなく、少年を伴ってフォリアの隣に座った。そして始まるガールズトーク。


服が可愛いとか最近オシャレなお菓子の店が出来たとかそんなのだ。魔神と言えども人間とあんまり変わらないんだな。


そんなことを考えているとセレスの連れていた少年と目があった。セレスとフォリアに完全に置いていかれ、子犬のような瞳をしていて何とも言えない気持ちになる。



いや、多分俺も似たような表情をしてると思うのだが。



その後、大きなとんがり帽子と黒いローブで身を包んだ明らかに魔導士な女性と、ラフな格好をしたチャラ男が一緒に入ってきたり、どこかの皇帝のような豪華絢爛な衣装を纏った、一目見て異常と分かるほどの魔力を秘めた老人が現れたりと、一時間ほどで席は埋まり、九柱の魔神達が一同に会することとなった。



それぞれの魔神がディエスのように一人ずつ子供を連れている。



フォリアで多少は慣れているとは言え、集まった九人の魔神は例外なく異常な質と膨大の魔力を持っており、ディエスでも戦慄を禁じ得ない。



それは、ディエス以外に魔神に連れてこられた子供達も同じなようで、一部肝の据わった子は平然と魔神の後ろに立っていたが、それ以外の子は緊張した面持ちで冷や汗を垂らしていた。


全員が揃い、話し声もそこそこになったところで、リーダーっぽいゼクセクスが最初に口を開いた。



「さて、そろそろ今期の会議を始めたいのだが……その前に余興といこう。特に希望が無いのなら組み合わせはこちらで決めるが……早速だがエスフォリーナ、お前の勇者とやらの実力を見せてもらおう」



ふいにゼクセクスと、彼が連れている少女の視線がディエスを射抜く。その視線は別に悪意が籠っているとかそういうことは無い。


片やディエスを品定めするような視線、片や期待と不安、そして何かは分からないが特別な感情を含んだ視線。


そのどちらも戦いを拒否するものではなく、フォリアも『ディエスさん、やっておしまい!』と言わんばかりの表情でディエスの肩をポンッと叩いた。



どうやらいきなり戦うことになりそうだ。

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