第2話【セニス】
第2話【セニス】
「セニスのところに行ってくる」
「かしこまりました」
ただ単に「出かけてくる」と言えば、
さも当然のように衛兵がついてくる。
しかし何故か、セニスのところに行く、と言うと、
さも当然のように了承してくれる。
何故だろう、ちょっと納得できない。
城から出て脇道にそれてほぼほぼすぐ、
セニスのいる領主館につく。
館の入り口にいる衛兵に、
「セニスに会いに来た。ホルスだ」
「かしこまりました」
なんか、さっきの衛兵と全く同じイントネーションなのだが……。
すぐに通され、いつも通り、2階のセニスの部屋に行く。
「まあ、ホルス。今日は来てくださったのね」
「結局、よそに行っても見つけられるからな」
今日はセニスと話すことにした。
あわよくば、スケッチをするところに行きたいとは思う。
「ほんとにお前はなんで僕を見つけられるんだ?」
「だから仰っているでしょう……愛、です」
ニコニコと話す目の前の令嬢は、どこからどこまで本気かよくわからない。
そういえば、かあさまもそんな表情をする時があったなあ。
「で、ホルスは、今日はどこの絵を描きたいんです?」
見抜かれていた。
「……なぜわかる」
「愛、です」
腑に落ちない。
「普通にお出かけなさると、衛兵もついてきてうっとしい……そうだ、
セニスのところに一度行こう。そうすれば、衛兵は払える、というところでしょうか」
図星だ。
「……お前は嫌ではないのか?」
こんな打算的に会いに来た僕に対して。
「なぜ?お会いできることこそ、至上の、愛、です」
もはや目の前の令嬢を理解することをやめた。
「……市場にいく」
「はい、かしこまりました」
何故か、衛兵とは違うイントネーションに感じた。